文化講座
第1回:「ナス」について学びます。
前シリーズでは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいりました。
今シリーズでは、料理研究歴50年が経過した筆者が旬の食材を中心に取り上げ、家庭で作れる基礎レシピだけでなく、日本で食べられている世界各地のおいしい料理やデザートなどもご紹介いたします。それぞれの食材が持つ栄養素や美しい盛り付けのコツ・食材にまつわる「おもしろ話」・食事マナーなどについてもご紹介してまいります。
第1回目のテーマは、「ナス」
インド原産で世界各地で栽培されているナスは、クセがない味わいと滑らかな食感が特徴です。調理方法も様々で、焼く・揚げる・蒸す・煮るなどに利用され、各家庭やレストランでも定番野菜として各地で愛されるレシピがたくさんあります。
代表的なナス料理のご紹介
このページ内の料理写真はすべて伊藤華づ枝が作成したものです
焼きナス・しょうが醤油
強火で焼くと香ばしくて、焼きあがりも早いです
ナス田楽<レシピ1>
赤みそと西京みそで二色にして楽しみましょう
ナスのゴマ酢みそ
米ナスの和風ジュレ仕立て
水ナスの漬物
ナスの甘辛煮
カポナータ<レシピ2>
(揚げナスの甘酢煮)
ナスとサーモンのグラタン
<レシピ3>
焼きナスのペンネ
夏野菜入り麻婆ナス
ナスのナムル
代表的なレシピを3点ご紹介します
米ナスの二色田楽
あいがけにしても良いです
材料 | 4人分・9切れ分 | |
---|---|---|
米ナス | 3本 | |
揚げ油 | 適量 | |
A 赤の田楽みそ | ||
A | 赤みそ | 70g |
みりん | 大さじ4 | |
砂糖 | 大さじ2~3 | |
かつお出汁 | 70ml | |
B 白の田楽みそ | ||
B | 西京みそ | 70g |
みりん | 大さじ2 | |
砂糖 | 大さじ1・1/2 | |
かつお出汁 | 70ml | |
青じその葉 | 4枚 | |
白ごま | 適量 |
作り方
- 米ナスはヘタを切り落とし(トゲがあるので注意する)、きれいに洗ってから4か所ほど、縞目に皮を縦に剥き、1本を3切れの輪切りにします。
- 1.の皮の内側にぐるっと切り目を入れ(ベティナイフがあると便利)、中は碁盤目に6~9個の切り込みを入れます。
- 2.を色よく素揚げにします。
- 鍋に(A)の材料を入れて混ぜ合わせてから火にかけ、とろみがつくまで練ります。
- 別の鍋に(B)の材料を入れて混ぜ合わせてから火にかけ、とろみがつくまで練ります。
- 平皿に青じその葉を敷き、1人2切れあてのナスの上にそれぞれの紅白みそを塗って仕上げます。1切れ余るので、余ったみそを塗って食べてください。
※みそを塗ってから、ナイフで碁盤目に切り目を入れると美しいです。あれば、みその中心にごまをふります。
カポナータ(シチリア名物・揚げナスの甘酢煮)
材料 | 4~6人分 | |
---|---|---|
ナス | 3本 | |
セロリ | 2本 | |
赤パプリカ | 1コ | |
玉ねぎ(大) | 1コ | |
ズッキーニ | 1本 | |
揚げ油 | 適量 | |
アンチョビ | 10g | |
バジル(葉) | 5~6枚 | |
A | 塩 | 小さじ1・1/2 |
白こしょう | 少々 | |
B | 赤ワインビネガー | 100ml |
グラニュー糖 | 大さじ3 | |
バジル(飾り用) | 2~3枚 |
作り方
- ナスは大きめの乱切り、セロリはスジを取って乱切り、赤パプリカも乱切りします。
- 玉ねぎは2~3㎝の角切り、ズッキーニは太さを見ながら輪切りか半月切りにします。
- 1.と2.を順に、やや高温の油で色づくほどに揚げます。
- 3.をボウルに入れて(ペーパータオルで油分を吸い取る)、(A)で下味をつけます。
- 4.に細かく刻んだアンチョビとせん切りバジルを加えます。
- (B)を小鍋に入れて煮立て、冷まします。
- 5.に6.を加えて味をなじませます。
- 器に盛って、飾り用のバジルを添えます。
サーモンとナスのチーズクリームグラタン~ハーブ風味~
材料 | 4~6人分 | |
---|---|---|
ナス | 400g | |
ミニトマト | 8コ | |
塩 | 少々 | |
白こしょう | 少々 | |
生鮭(切り身) | 400g | |
塩 | 少々 | |
こしょう | 少々 | |
小麦粉 | 適宜 | |
サラダ油 | 多め | |
生クリーム | 140ml | |
クリームチーズ | 140g | |
A | しょうゆ | 小さじ2/3 |
塩 | 小さじ1/3~ | |
こしょう | 少々 | |
ディル又はバジル、イタリアンパセリなどお好みのハーブ | 適宜 | |
パルメザンチーズ | 適宜 |
作り方
- ナスは7mm厚さの斜め切り、トマトは2~3等分の輪切りにし、それぞれに軽く塩、こしょうします。
- 鮭は1.5cm幅の刺身より大きめのそぎ切りにし、塩とこしょうをし、小麦粉を薄くまぶします。
- フライパンに油を敷き、1.のなすに焼き目がついてしんなりするまで焼きます。
- 3.をフライパンから取り出し、そのフライパンに油を足し、鮭を焼きます。完全に火が通ったら取り出します。
- 生クリームを軽く泡立て、クリームチーズを加えて更に混ぜ合わせ、(A)を入れて細かく刻んだディルを加え、混ぜます。
- グラタン皿に油を薄く塗り、3.の一部を敷き、その上に5.を塗り、その上に4.、1.のトマト、残りの3.をのせ、具が隠れるように5.をのせます。細かく切ったディル、パルメザンチーズをふりかけ、230℃のオーブンで7~10分間焼きます。
ナスの種類
千両ナス・米ナス・賀茂ナス(京の伝統野菜)・小ナス・水ナスなど、たくさんの種類があり、形や大きさも様々です
賀茂ナス(左)
水ナス(右)
ナスにまつわるおもしろ雑学
- 写真を撮る際に中国では「はい!チーズ」の代わりに、「はい!茄子(チエズ)」という風習がある
- 親の小言とナスの花は千にひとつの無駄もない
~ナスの花は結実する割合がとても高いことから、親の小言に喩えたことわざ
親の言うことを素直に受け止めましょう(笑) - 秋ナスは嫁に食わすな
諸説ありますが、ナスは陰性の食べ物なので嫁が体を冷やして子どもを産めなくならないようにという願いを込めたという説・こんなにおいしい秋ナスを、憎き嫁には食べさせられないという姑の意地悪さを意味するという説などがあります。
ナスの栄養素
- 93%が水分であり、低カロリーでダイエット向きです
- 脂肪燃焼ビタミンと言われるビタミンB2などをバランスよく含んでいます
- ビタミンC、カリウム、カルシウムなどのミネラルを、少ないながらもまんべんなく含んでいます
- ナスに含まれるコリンエステル(通常野菜の1000倍ともいわれています)という機能性成分は、血圧やコレステロールを下げて動脈硬化を防止したり、胃液の分泌を促す・肝機能の向上・気分改善の作用もあるとされています
- 「茄子紺」と呼ばれるナスの果皮に見られる色素成分・ポリフェノールは、アントシアニン系の色素であり、この色素成分は動脈硬化予防・老化防止に効力を発揮するとされています
- 2023年11月には、名古屋大学の研究チームによって、ナスのヘタに含まれる天然化合物に子宮頸がん細胞への抗腫瘍効果があると明らかにされました
※ナスを食べる際の注意点
ナスには体を冷やす作用があるとされることから、食べ過ぎないようにする・しょうがなどの体を温める作用を持つ食材と取り合わせることが大切とされています
次回は、あっさりとした味・ふっくらとした身で人気が高い「アナゴ」を予定しております。