文化講座
「新考える葦・New‐Thinking Reed」となろう-32 デジタル民主主義&公益社会―6
前回、取り上げた「デジタル改革関連法案」は参議院で5月12日に可決成立しました。
デジタル庁新設を中心とするデジタル改革関連法案では首相がトップとなるのです。
この法案は、首相が裁量者となっているデジタル庁が一元的に個人情報の保護や開示も含めて管理することになります。
つまり、個人情報はデジタル庁がすべての省庁も含めて管理することになるのです。
それ故に、首相の裁量で私たちの個人情報の公開も含めて決定権をデジタル庁が一括して管理することを意味します。
すべての個人情報は政府の省庁を横断するのみならず、地方自治体との連携によってマイナンバーと紐付けて一本化されることを原則としているのです。
私たちの個人情報などの誤りを正すための内閣府の個人情報保護委員会による行政機関への改善命令の権限がないことが問題なのです。
監視機関が弱くて、プライバシー・個人情報の保護が後退するとの不安があるのです。
内閣府に属する個人情報保護委員会は独立機関であることが必要条件だと思います。
また、自分について集められている情報の開示、修正や抹消が可能となる「自己情報コントロール権」は保障されていません。
個人情報のみならず、権力による監視システムが強化されるために、透明性の確保と情報公開をするかが首相の権限・裁量権として集中することになるからです。
日本も首相の運用次第で中国のような専制国家となる危険があるのです。
前回取り上げた台湾のデジタル担当閣僚であるオードリー・タンは「徹底的透明性と情報公開」と「権力を集中させないこと」が専制的にならないためのキーとしています。
国家は権力によるブラックボックスを持たない「すべての人たちが情報にアクセス出来るようになっている」ことがキーです。
しかし、我が国の今回の法案は情報公開へのアクセスが首相の裁量権となるブラックボックスがあるのです。
前回の予想通り米国のバイデン大統領と首脳会談を行った菅首相はその宣言で台湾海峡について52年ぶりに言及した共同文書で「平和と安定」を明記しました。
今や、台湾は世界的に不足している半導体シェアが六割以上ですから、米中間のハイテク戦争では死活問題です。
この宣言では、「平和と安定」について中国と話し合うとありますが、台湾は中国だとする中国が国内問題として武力介入をする可能性は少なくありません。
中国にとっては台湾も香港やウイグル自治区と同様な国内問題なのです。
問題となるのは今回の共同文書では日本は日米が共同して尖閣諸島と同様に武力介入に参加するかは「ブラックボックス」となっていることです。
日中間の争いとなっている尖閣諸島は日米が共同して武力戦争をすると同様の危険があるからです。
つまり、今回の共同声明で日本は自らの防衛力を強化すると決意したと同時に沖縄から110キロぐらいしか離れていない台湾海峡有事は尖閣有事と同様になったと言えます。
私は経済的に豊かになった中国が専制主義社会から民衆の人権が認められる民主主義社会に変わることを願っています。
「デジタル改革関連法案」「日米共同文書」も私たちが安心して平和な生活が出来る「デジタル民主主義&公益社会」を築くためには重要な関係があるのです。