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茶の湯文化は日本のグローカル文化

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

健康で文化的な日常茶飯の生活 5

心の絆・・3

カール・ポランニー著『Great Transformation』(大転換、東洋経済新報社、1944年)が注目を集めています。 彼が指摘する世界が平和であるための四つの制度的枠組みの内で、「自己調整的市場」、つまり、「財の生産と分配の秩序を保障するある種のシステムがなければ、如何なる社会も存続することが出来ない」が、現実に揺らいでいるからです。

山下範久著『現代帝国論 人類史の中のグローバリゼーション』(NHKブックス、2008年)による「ポランニー的不安」は現代の不安定な人間社会と人々の不安な人間関係を考える上での名著だと思います。

グローバリゼーションが進展する現代にあって、「本源的生産要素」と呼ぶ三つのファクター『労働、土地、貨幣』の「商品化」、つまり、市場化が広まりました。
しかし、本来、『労働、土地、貨幣』はそれぞれ、『人間、自然、聖性』に対応するのです。
つまり、生身の人間、自然、聖性がグローバリゼーションによって市場化に組み込まれ、商品化して生産性を上げるための販売促進対象となってしまったのです。
現実の貨幣はその価値観を自分と他人が共有する信頼が必要となります。

しかし、最近の金融危機に発する世界経済の混乱は、「貨幣:聖性」に対する不信を呼び、派遣社員の解雇は生身の人間「商品」であることを明確にしました。
また、例えばドバイでの砂漠や海の埋め立てによっての土地化した"土地・不動産バブル"の崩壊は自然の破壊としてのみならず「商品化」「市場化」を示すものです。

山下範夫が指摘するポランニー的不安は、人間、自然、聖性の定義の流動化によるポランニーが指揮する「自己調整的市場」への不信にあります。

加えて、近年は技術革命のスピードが早く、社会資本の補充が追付いていない現実が一層ポランニー的不安を増しているのです。

人的資本は無形の資本であり、生産的活動の前提として、人間関係の質としての「信頼」なくしては成り立たちません。

 以上より、現代の「ポランニー的不安」を越えた人間社会の平和は信天流且坐喫茶がキーとする「真面目」「麁相の心」をベースとした「心の絆」ある人間関係の信頼ある社会にあると思いませんか。

茶の湯文化は日本のグローカル文化
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