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茶の湯文化は日本のグローカル文化

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

わび・さびの茶の湯文化 その14

武野紹鷗による「茶の湯」は、私達が「どのように生きるか」、日常茶飯がレトロモダンなアートワールドだと考えさせます。
紹鷗の茶の湯とその心を伝えるとされる「紹鷗遺文」(「又十體之事」、「紹鷗門弟の法度」)が残されています(茶道古典全集 第3巻、淡交社)。
「麁相」(そそう)の心をキーとして、「直心」、「得心」、「作意」を重んじ、今日的に言えば、お互いの「価値観による選択の自由」を認め合った上での「信頼、絆、つながり、肌触りの人間関係」による「和」を求めるのです。 
私は、コミュニケーション法にあってのグローバル基準の必要条件を満足しながらも日本のグローカル基準になると思っています。
日常茶飯の生活文化に根ざした作意・創意はレトロモダンなアートワールドなのです。
「紹鷗遺文」の茶の湯が内包するレトロモダンは、前回記しましたが「麁相」の心として「過去に雁字搦めになることなく学び、自由な創意が求められる」にあります。
また、「正風體」と言う「直心を尊ぶ正しきを求める心」を大切とします。
直心の心は、究極の精神として、人間の性情の奥にまで徹して現われ出る心の根源を求め、「鬼をも拉ぐ」程の強さで圧倒するのです。
そして、人間らしい真実感を大切にして、自立性を重んじ、自己を否定しながらの和の道に至るとの考えには反対しています。
表面的な和の装いによる閉鎖的、従属的な人間関係の「愛」は求めず、個性を生かした「和らかさ」でなければならないのです。
「強いて威を示し、結構にし、富貴を誇ること」はなく、「互いに呼合う心を感じることこそが尊い」と言っています。
愛、権力、金力による人間関係の否定です。
平等の感応力を持っての目線で、しほらしく、「自分と他人との隔意のない心で結ばれる」のです。
その上で、「新しき作分」、つまり、作意、創造性を発揮しなければならないのです。
作意は「我が心に出でながら、他の思いにも合う」、「強いて他に合わせるようにするのでなく、'我が茶の湯'でなければならない」となります。
また、「強いてする態度はもたない」のであり、「自らなる心による時に、万人に共通するを含む」の境地とならねばなりません。
お互いの心は自立した個性を尊重した作意と余裕ある和を求める姿です。
人を縛り、閉鎖的な人間関係による従属を内包して、平等の関係を抑圧する三大暴力となっている「権力」、「金力」、「愛」の価値観の幻想から開放された群れない和です。
紹鷗の「茶の湯」は、淋しい人間関係にあって、「信頼、絆、つながり、肌触りの人間関係」を醸成するコミュニケーション法なのです。

茶の湯文化は日本のグローカル文化
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