文化講座
ドロミーティLe Dolomiti 2009年登録
スケッチ 青山 博
ドロミーティは、北イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州、ヴェネト州北部、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州まで広がるエリアで、14万ヘクタールに及ぶ広大な山岳地帯を言います。そこには最高峰のマルモラーダ山(Marmolada 標高3,342m)をはじめ、3,000mを超える山が18峰もあります。広大なモミの森や草原の上には、切り立った岸壁、傾いた塔状の山頂、鋸状の尾根、孤立した尖峰が天にも届くかのように聳え立っています。その姿は岩が剥き出しで、荒々しくも見え、しかし光の角度や光の濃淡によってその表情は変わり、また見る角度によっても様々な姿を変え大自然のスペクタクルを見ることが出来ます。大地が生み出した奇岩の群れ、氷河、絶壁、渓谷、そして森や湖などはドラマチックな地形の宝庫であり、どこか童話の挿絵のようであり「北イタリアの宝石」とも呼ばれています。
ドロミーティという地名の由来は、石灰岩が変化して出来たドロマイト(苦灰岩)からです。ドロミーティは、かつて熱帯の海の底でした。6000万年前、地殻変動によリヨーロッパ大陸とアフリカ大陸が衝突し、隆起したドロミーティは、岩盤が硬かったため、大部分の地層が水平の状態のまま持ち上がりました。浅い海の底に堆積した地層が隆起し、その地層を形づくっていたのがドロマイトであったのです。ドロマイトは石灰岩より硬く、氷河や雨や風に激しく削られても強固にそそり立つ岸壁となって残ったのです。ドロマイトが生んだ神々しいまでの造形美。そのパノラマの内側には地球の成り立ちを秘めることから、2009年、ドロミーティが世界自然遺産に登録されました。
ドロミーティで、特に美しいとされているのがボルツァーノ(Bolzano)から東の中心地コルティナ・ダンペッツォ(Cortina d'Ampezzo)までのエリアです。パーレ・ディ・サン・マルティーノ(Pale di San Martino、標高3,192m)、カテナッチョ(Catenaccio、標高3,002m)、サッソ・ルンゴ(Sasso Lungo、標高3,181m)、セッラ(Sella、標高3,152m)などの山々がドロミーティ・アルプスの西部に属し、トファーナ・ディ・メッゾ(Tofana di Mezzo, 3,244m)、チヴェッタ(Civetta、標高3,218m)、ペルモ(Pelmo、標高3,168m)、アンテラオ(Antelao、標高3,263m)、 トレ・チメ・ディ・ラヴァレード(Tre Cime di Lavaredo、標高2,999m)、クリスタッロ(Cristallo、標高3,216m)、ソラピス(Sorapis、標高3,205m)などの山々がドロミーティ・アルプスの東部に属しています。またガルデーナ渓谷(Val Gardena)、ポルドイ峠(Passo di Pordoi)、ミズリーナ湖(Lago di Misurina)、カレッツァ湖(Lago di Carezza)等の名所もあります。
高原の町コルティーナ・ダンペッツォは、高級リゾートとして早くから発展し、1956年には第7回冬季オリンピックが開催されました。アルペンスキーのトニー・ザイラーが活躍し金メダルを独占した大会で有名です。
ドロミーティは、その美しい絶景を楽しみながらトレッキングやサイクリングする人たちが年々増えています。 トレッキングのコースも400以上もあり、初級者から上級者まで幅広く楽しめます。またドロミーティで生まれたスポーツ「フェッラータ(Ferrata)」があります。ワイヤーや鎖そして鉄はしごなどで整備されている岸壁登山コース(Via ferrata)を、安全のためカラビナ(moschettone)の金具を付けたロープを体に固定して登ってゆくスポーツです。 ドロミーティには120以上のコースがあります。実はこのスポーツの起源は、第一次世界大戦(1914-1918)当時、敵の砲撃から身を守るために、硬いドロマイトの岩で造った天然の要塞が、峰々の至るところにあり、ワイヤーや吊り橋などの「鉄の道(Via ferrata)」は軍事目的のため武器や食料などを運ぶために造られたものでした。戦後は、その役割を終え、世界中の登山家から愛されるスポーツとして生まれ変わりました。
■Dolomitiの写真
http://www.globopix.net/fotografie/dolomiti_1.html
■Dolomitiの観光情報
http://www.eu-alps.com/italy/dolomiti/index.htm
■Dolomitiへのアクセス
イタリア各都市からのドロミーティ地域へのアクセスは国鉄やバスとなり、 ドロミーティ地域の入口は東の「コルティナ・ダンペッツォ」と西の「ボルツァーノ」となり、そこからの移動は主にバスになります。
ボルツァーノ周辺を中心にドロミーティ地域を走る中・長距離バスは「SAD社」、ドロミーティ地域、ヴェネト州北部を走る中・長距離バスは「Dolomiti Bus社」のバスを利用します。
http://www.sii.bz.it/
http://www.dolomitibus.it
生きたイタリア語のフレーズ 第27回
感情を表現するフレーズ その9
自分の感情をうまく表現することは会話の中では大切だと思います。生きた会話にするためにもただ質問したり、答えたりという繰り返しの会話でなく、自分の感情をできるだけ率直に表現することが大切だと思います。日本人は自分の気持ちを言葉で表現することが少し苦手なように見えます。それに対してイタリア人は自分の気持ちをジェスチャーで表現したり、言葉で表現したりすることが大変うまいです。喜怒哀楽がイタリア語で表現できれば、相手にもわかりやすく、楽しい会話になり、本当の意味で人と人の触れ合いが会話によって生まれてくると思います。
今回は、会話を繋げるための表現を取り上げてみました。
■会話を繋げるためのフレーズ(1)
会話のなかで、相手の話している内容を理解しようと集中しているため余裕がないのか、返事はいつも「はい・ええ(Sì)」とか「はい、はい(Sì sì)」と返事を繰り返しているのをよく見掛けます。内容によっては、あまりはっきりと「はい(Sì)」「いいえ(No)」で自分の意見を言わないほうがいい場合もあります。例えば「そうであって欲しいが、実際にはそうではない」ような場合は、「そうね!(Magari!)」と現実を惜しむ気持ちをこめて表現するとよいと思います。
- Ti piacerebbe andare al cinema stasera?
- ティ ピアチェレッベ アンダーレ アル チネマ スタセーラ
- 今夜、映画を観に行かない?
- Magari! Purtroppo devo andare dal dentista.
- マガーリ トゥロッポ デーヴォ アンダーレ ダル デンティスタ
- そうね!あいにく歯医者に行かなければいけないの。
その他にも、どう答えてよいか分からないようなときに使う「そうだね!(Mah !)」や、答えにくい質問に対して断定的な答えをしたくないときに使う「そうですね!(Beh !)」などがあります。また思い描きながら「そうね!(lmmagino !)」があります。「想像する(immaginare)」という動詞から変化したものです。
- Che tipo di musica ti piace?
- ケ ティーポ ディ ムージカ ティ ピアーチェ
- どんな音楽が好きですか?
- Mah, ascolto un po' di tutto.
- マー アスコルト ウン ポ ディ トゥット
- そうね!なんでも聴きますよ。
- Quale musica ascolti di solito?
- クアーレ ムージカ アスコルティ ディ ソーリト
- 普段、どのような音楽を聴きますか?
- Beh! preferisco la musica pops italiana, ma qualche volta ascolto anche la musica classica.
- ベー プレフェリースコ ラ ムージカ ポップス イタリアーナ マ クアルケ ヴォルタ アンケ ラ ムージカ クラッシカ
- そうだね!イタリアンポップスが好きだけど、ときどきクラシック音楽も聴きます。
- lmmagino!
- イッマジノ
- そうね!
- Ti distrubo?
- ティ ディストゥルボ
- お邪魔でしょうか?
- S'immagini!
- シッマジニ
- とんでもありません。
反対に、相手の話している内容に断定的・積極的に参加するために「はい・ええ(Sì)」では少し物足りないときもあります。そういう場合は、「勿論!(Certo!)」、「勿論・疑いなく(Senza dubbio!)」や「了解!(D'accordo!)」などがあります。
- Penso di sì(no).
- ペンソ ディ シ・ノ
- そうだ(そうでない)と思います。
- Credo di sì(no).
- クレード ディ シ・ノ
- そうだ(そうでない)と思います(信じます)。
- Anche io penso così.
- アンケ イーオ ペンソ コジ
- 僕もそう思うよ。
- Sono d'accordo con te.
- ソーノ ダッコルド コン テ
- 了解だ!(君と考えが一致している。)
- Certo!
- チェルト
- 勿論!(そのとおりだよ!)
- Senza dubbio!
- センツァ ドゥッビオ
- 勿論!
イタリア人の会話を聞いていると、「ぼっ(Boh!)」という返答の言葉をよく聞きます。これは返事に困ったときやとぼけて「さあね」「うーん、さあねえ..」という意味で使います。
- Tu cosa vorresti fare?
- トゥ コーザ ヴォッレスティ ファーレ
- 君は一体何をしたいの?
- Boh! Non lo so.
- ボッ ノン ロ ソ
- うーん、わからない。
- Che regalo pensi alla tua ragazza per il Natale?
- ケ レガーロ ペンシ アルラ トゥア ラガッツァ ペル イル ナターレ
- 彼女にどんなクリスマスプレゼントを考えているの?
- Boh!
- ボッ
- さあね!(ひとの彼女のことはほっといてくれ、の気持ち)
最後に、会話の中で「ダーイ(Dai !)」という言葉もよく耳に入ってきます。動詞ダーレ(dare)の2人称現在形・命令形の形で、「与える・あげる・やる」の意味です。
この言葉は、相手に行動を促すときに使う言葉で、言い方によって大分意味が変わります。例えば甘えたように言えば「ねー、お願い」、はっきりとした口調で言えば「ホラ! サア!」の意味になります。
更に、「マ(Ma!)」を前に付けて(Ma dai !)「本当!ヤダ!マジで!」、後ろに「ス(su!)」を付けて(Dai su !)「頑張れ!元気を出して!」という意味になります。この言葉を会話の合間に入れると、いろいろなバリエーションに富んだ会話になると思います。
- Questa domenica noi andiamo in montagna. Vieni anche tu, dai!
- クエスタ ドメニカ ノイ アンディアーモ イン モンターニャ ヴィエーニ アンケ トゥ ダーイ
- この日曜、僕たち山に行くんだけど、君も一緒に行こうよ、さあ!
- Mi dispiace. È meglio non ci vediamo più.
- ミ ディスピアーチェ エ メリオ ノン チ ヴェディアーモ ピュ
- ご免なさい。もう会わないほうがいいね。
- Dai! Ti prego. Non dire così.
- ダーイ ティ プレーゴ ノン ディーレ コジ
- ネー、お願いだから、そんなこと言わないで。
- Lo sai? Maria mi ha lasciato ieri.
- ロ ソ マリーア ミ ア ラシャート イエリ
- ねえ知ってる? 昨日、マリアにふられちゃったんだ。
- Ma dai!
- マ ダーイ
- ウソ、マジで!
- Ci siamo litigati ieri. Mi sento giù ancora.
- チ シアーモ リティガーティ イエーリ ミ セント ジュ アンコーラ
- 昨日、僕たち喧嘩したんだ。まだ落ち込んでいるの。
- Dai su! Cerca di stare bene. Dai! Andiamo a bere!
- ダーイ ス チェルカ ディ スターレ ベーネ ダイ アンディアーモ ア ベーレ
- 元気出して!頑張れ!サア!飲みに行こう!