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「イタリア世界遺産の旅」と「生きたイタリア語のフレーズ」

石黒 秀嗣

ナポリ歴史地区 前編: サンタ・ルチア地区Centro storico di Napoli 1995年登録


スケッチ 青山 博

 紀元前7世紀にギリシャの植民地として誕生したナポリは、ギリシャ語のネオポリス「新しい都市」を意味しています。紀元前4世紀にはローマ帝国の支配下に置かれました。しかし西ローマ帝国が5世紀に滅んだ後のナポリは、支配者が目まぐるしく入れ替わりました。まずはランゴバルド族、そしてビザンチンがナポリを支配します。ビザンチン帝国の直属でありながら、小さなナポリ国家を形成し、その後の数世紀がナポリ史上最も輝かしい時代であったと考えられます。
1139年、シチリア王ルッジェーロが率いるノルマンに屈してからは、ホーエンシュタウフェン家の支配下に、13世紀にはアンジュー家が、15世紀にはアラゴン家が、16世紀前半にアンジュー家が衰退し、ナポリはスペインのハプスブルグ家の支配下に入り、18世紀以降はブルボン家による支配を受け、1861年にイタリア王国へ併合されました。
ナポリは、ありとあらゆる時代を経験してきたイタリアでも屈指の歴史的な街であるといえます。特に15世紀から18世紀のナポリは、アラゴン家とブルボン家の支配のもとで文化や芸術も盛んに栄え、またその時代に宮殿や建造物も多く建てられ現在に至っています。
 前編では、サンタルチア地区を中心に案内します。
卵城(Castel dell'Ovo):
 サンタルチア港のシンボル的な存在。11世紀ノルマン人のオートヴィル家がナポリを支配すると、要塞として機能を拡大しました。要塞としての城の形は卵とは似ても似つかぬもので、誰もがその名の由来が気になるところです。卵城と呼ばれるのは、城を築くにあたって、基礎の中に卵を埋め込み、「卵が割れるとき、城はおろか、ナポリにまで危機が迫るだろう」と呪文をかけたことが城の名前の由来と言われています。現在は卵城の中を見学することはできませんが、雄大なヴェスヴィオ火山を背景にナポリ湾に浮かぶカプリ島やソレント半島を見渡せるところで、タベの散歩や出会いの場としてナポリ市民が憩う場所となっています。

カステル・ヌオーヴォ(Castel Nuovo):
 この城は中世の時代にアンジュー家が建設した最初の城でした。しかし王の居城として「卵城」は海に近すぎ、「カプアーノ城」は海から離れすぎているということから、アラゴン家のアルフォンソ1世が1443-1453年に全面的に改築し、古い城と区別するために「新城」(Castel Nuovo)と名付けました。城塞は台形で、急斜面の土台の上に銃眼をもつ城壁に囲まれており、四隅には太い円筒形の塔が突き出しています。西側正面左から「見張りの塔」(Torre di Guardia)、「中間の塔」(Torre di Mezzo)、「サン・ジョルジョの塔」(Torre di San Giorgio)、そして海側には「ベヴェレッロの塔」(Torre di Beverello)が聳えています。「中間の塔」と「サン・ジョルジョの塔」の間に挟まれて窮屈そうにあるのが「アルフォンソの凱旋門」(Arco di trionfo di Alfonso)です。アラゴン家のアルフォンソ1世のナポリ入城(1443年)を記念して造られた壮麗な凱旋門で、上下2つのアーチに、彫刻とレリーフの重厚な装飾が施されています。

王宮(Palazzo Reale):
 この巨大な王宮は、国王フェリペ2世のナポリ逗留のために造られた王宮で、17世紀初頭、ローマで活躍していた建築家ドメニコ・フォンターナ(Domenico Fontana 1543-1607)によって建設されました。時代とともに改築や増築が繰り返され、また1837年の火災のため大きな被害を蒙り、そのたびに修復を重ね新古典様式に装飾され今日に至っています。正面の地階はもともとは柱廊であったところを、建築家ルイジ・ヴァンヴィテッリ(Luigi Vanvitelli)が改築し、建物全体の安定性を考えて壁龕(nicchia)が付けられました。1888年にウンベルト1世の要望で、その壁龕にノルマン王ルッジェーロ、アンジュー家のシャルル1世やアラゴン家のアルフォンソ1世など歴代の王8人の像が組み入れられました。
王宮内部には、王宮住居博物館(Museo dell'appartamento storico)があり、王族の華麗な生活を垣間見ることができます。絢爛な室内装飾や家具調度品などを見ることが出来ます。見どころは「宮廷劇場」、「王座の間」、「ヘラクレスの大広間」などがあります。その他にビットリオ・エマヌエーレ3世図書館(Biblioteca Nazionale Vittorio Emanuele III)があり、ブルボン家から受け継いだファルネーゼ家の蔵書から始まったもので、蔵書数は200万冊を超える大変重要な図書館です。

プレビシート広場(Piazza del Plebiscito スケッチ画):
 サン・フランチェスコ・ディ・パオロ教会(San Francesco di Paola)と王宮に囲まれた柱廊の半円形の広場は、19世紀のはじめ、ブルボン家のフェルディナンド1世によって造られました。聖堂よりにブルボン家のカルロ3世とフェルディナンド1世のブロンズ製の騎馬像が立っています。この広場は、いろいろな式典や民衆の祭りに使われていました。今でも音楽ライブや集会などに使われており、ナポリでは人気の場所です。

サン・カルロ劇場(Teatro San Carlo):
 王宮に隣接して建っているこの劇場は、ミラノの「スカラ座」、ローマの「オペラ劇場」と並んで、イタリア三大歌劇場の一つに数えられ、劇場としてはヨーロッパで最古の由緒ある劇場です。
1737年、ブルボン家のカルロ3世の命によリジョヴァンニ・メドラーノ(Giovanni Medrano)が設計を担当しました。
ロッシーニの「モーゼ」と「湖上の美女」、 ドニゼッティの「ランメモールのルチア」などがこの劇場で初演されました。

ウンベルト1世ガッレリア(Galleria Umberto I):
 サン・カルロ劇場の向かいには、近代都市ナポリを象徴するウンベルト1世ガレリア(1887-1890)があります。ミラノにあるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世アーケード(1865-1877)を少し小さくしたようなアーケードで、高さ58mのドーム(円蓋)と屋根は鋳鉄とガラスを使った斬新な構造で出来ており、ナポリの近代的都市の象徴でもあります。

Napoliの写真
 http://www.fotoeweb.it/sorrentina/Napoli.htm

Napoliの案内
 http://www.comune.napoli.it

■アクセス:Romaテルミニ駅からNapoli中央駅まで約2時間。

■カンパニア・アルテカード(Campania Artecard)
 指定美術館など2箇所が無料、3箇所目から半額にて入場可能。またナポリ市内の全公共交通機関と指定美術館を巡るシャトルバスなどが無料で利用できます。
 料金: 12ユーロ 有効期限:3日間
 http://www.napoliartecard.com

■ウニコ ナポリ(Unico Napoli)
 ナポリ市内の移動はこのチケットでバス、地下鉄、トラム、
 ケーブルカーなど全て乗り放題。
 また、ナポリ近郊への便利なバスチケット(Unico Campania)もあります。
  料金:90分券(biglietto orario)が1.10ユーロ
  1日券(biglietto giornariero)が3.10ユーロ
  土日祝日券(big lietto Week-end)が2.60ユーロ
 http://www.unicocampania.it/

生きたイタリア語のフレーズ 第31回

物事を比べるときのフレーズII
 今回も比較を表すフレーズをまとめてみました。
会話の中で、比較されるものが「同じぐらい~だ」という場合があります。例えば「これも、あれも美味しい」という場合です。「あれも」は、「~ も」(anche)を使って表現できます。また「~のように」(come)を使って表現できます。

Questo è buono, anche questo(quello) è buono.
クエスト エ ブオーノ アンケ クエスト (クエルロ) ブオーノ
これは美味しい。あれも美味しい。
Questo è buono come questo(quello).
クエスト エ ブオーノ コーメ クエスト (クエルロ)
これはあれと同じぐらい美味しい。

■比較されるものの違いを聞くときは、「違い」を表すイタリア語differenzaを使って尋ねます。

Quali sono le differenze tra la cucina italiana e la cucina francese?
クアーリ ソーノ レ ディッフェレンツェ トゥラ ラ クチーナ イタリアーナ エ ラ クチーナ フランチェーゼ
イタリア料理とフランス料理の違いは何ですか?
Che differenza c'è tra questi due cellulari?
ケ ディッフェレンツァ チェ トゥラ クエスティ ドゥーエ チェッルラーリ
この2つの携帯電話はどう違いますか?

comeを使う比較の表現は、「~と同じぐらい~です」という構文で、「così... come...」あるいは「tanto... quanto」という構文を使います。実際の会話ではcosì・tantoは省略することが多いようです。

Milano è cara come Tokyo.
ミラーノ エ カーラ コーメ トウキョウ
ミラノは(物価が)東京のように高い。
Questa pittura è tanto bella quantoquella.
クエスタ ピットゥーラ エ タント ベルラ クアント クエルラ
この絵はあれと同じぐらい素晴らしい。
Questa canzone è così bella come quella.
クエスタ カンツォーネ エ コジ ベルラ コーメ クエルラ
この歌はあれと同じぐらい素晴らしい。
Questi esercizi sono difficili come quelli.
クエスティ エゼルチーツィ ソーノ ディッフィーチリ コーメ クエルリ
この練習問題はあれと同じぐらい難しい。

■「~と似ている」(simile a ~)または「~と同じである」(~ uguale a ~)を使って表現することも出来ます。

Quel vestito è simile al mio.
クエル ヴェスティート エ シーミレ アル ミーオ
あの服は私のと似ています。
Quella borsa è uguale a quella di mia madre.
クエルラ ボルサ エ ウグアーレ ア クエルラ ディ ミア マードゥレ
あのバッグは私の母のと同じです。
Io somiglio a mio papà.
イーオ ソミリオ ア ミオ パパ
僕はパパ似です。

■また会話の中で、「大変(最も)~だ」と強調したいときがあります。副詞(molto, assai)などで強調したり、接頭辞(arci-, stra-, ultra‐, sopra-, extra-, super-)などを付けたりして表します。また形容詞を繰り返して表すこともあります。

例: ricco (お金持ち) - molto ricco, straricco, ricco ricco
forte (強い) ‐ molto forte, extraforte, forte forte
arcicontento (ご満悦の) stracarico (積みすぎの・過重の・荷重の)
ultramoderno (超モダンな) sopraffino (極上の)
extravergine (エクストラバージンの) supermercato スーパーマーケット

■形容詞や副詞の語尾を操作して表すことも出来ます。語尾に issimo を付けます。

例: buono buonissimo (=molto buono), bravobravissimo, benebenissimo,
  magro magrissimo
ただし語尾が -co -go で終るものは -chi, -ghi に直し ssimo を付けます。
例: poco pochissimo, stanco → stanchissimo,
largo → larghissimo, lungo → lunghissimo
Luca è un bravissimo giocatore di tennis.
ルーカ エ ウン ブラビッシモ ジョカトーレ ディ テニス
ルカはテニスの名プレイヤーです。
Luisa è una bellissima ragazza.
ルイーザ エ ウーナ ベッリッシマ ラガッツァ
ルイーザは大変美しい女性です。
Queste cioccolate sono dolcissime.
クエステ チョッコラーテ ソーノ ドルチッシメ
このチョコレートは大変甘い。
Questa strada è larghissima.
クエスタ ストゥラーダ エ ラルギッシマ
この道路は道幅が大変広い。
Questo ponte è lunghissimo.
クエスト ポンテ エ ルンギッシモ
この橋は大変長い。
Siamo stanchissimi e andiamo a dormire.
シアーモ スタンキッシミ エ アンディアーモ ア ドルミーレ
疲れているので、寝ましょう。

■以下の形容詞には固有な比較級と最上級があります。それぞれ固有の形容詞としてよく使われます。

原級 比較級 最上級
buono(善い) migliore ottimo
cattivo(悪い) peggiore pessimo
grande(大きい) magggiore masssimo
piccolo(小さい) minore minimo
alto(高い) superiore supremo/sommo
basso(低い) inferiore infimo
例: il piano superiore (上の階) l'uomo migliore (最良な人)
la velocità massima (最高速度) il tempo pessimo (最悪の天気)
la corte suprema (最高裁判所) la merce di infima qualità (粗悪品)
l'ottima qualita (最高品質) la maggiore età (成年)

■「最も(いちばん)~だ」という最上級の表現は、比較の表現とよく似ています。作り方は、「定冠詞+più(meno)+形容詞」で、più の前に定冠詞を付けることを忘れないでください。
「~のなかで」には di を使うのが普通ですが、trafra を用いることもあります。

Marco è il più piccolo dei nostri figli.
マルコ エ イル ピュ ピッコロ デイ ノストゥリ フィーリ
マルコは子供の中で最も小さい。
Lucia è la più simpatica dei miei amici.
ルチーア エ ラ ピュ シンパーティカ デイ ミエイ アミーチ
ルチアは私の友達の中でいちばん感じがいい。
Questo stadio è il più grande della città.
クエスト スタディオ エ イル ピュ グランデ デルラ チッタ
このスタジアムは町でいちばん大きい。
Il Po è il più lungo di tutti i fiumi d'Italia.
イル ポ エ イル ピュ ルンゴ ディ トゥッティ イ フィウーミ ディタリア
ポー河はイタリアの川の中でいちばん長い。
Questo libro è il più prezioso tra quelli del professore.
クエスト リーブロ エ イル ピュ プレツィオーゾ トゥラ クエルリ デル プロフェッソーレ
この本は先生の本の中で最も貴重なものです。

■「これは(それは)~です」を最初に説明し、さらに最上級で表現する構文もよく使われます。作り方は、「定冠詞+名詞+più(meno)+形容詞」の順で表します。

Questo è il palazzo più antico della città.
クエスト エ イル パラッツォ ピュ アンティーコ デルラ チッタ
これは町の最も古い建物です。
Il calcio è lo sport più popolare dell'Italoa.
イル カルチョ エ ロ スポルト ピュ ポポラーレ デッリタリア
サッカーはイタリアで最も人気のあるスポーツです。
Quella cravatta è la meno costosa fra tutte.
クエルラ クラヴァッタ エ ラ メーノ コストーザ フラ トゥッテ
あのネクタイは全てのなかで最も安いです。
Per me è la cosa migliore che abbia potuto fare.
ペル メ エ ラ コーザ ミリオーレ ケ アッビア ポトゥート ファーレ
自分に出来る最善を尽くした。
Questo è il libro più interessante che io abbia letto fino ad adesso.
クエスト エ イル リーブロ ピュ インテレサンテ ケ イーオ アッビア レット フィーノ アドゥ アデッソ
これは今までに読んだ本の中で最高におもしろい。

■「いちばん~なものの一つ」という言い方もあります。
uno dei (男性名詞複数) più+形容詞
una delle (女性名詞複数) più+形容詞という構文となります。

Questo è uno dei musei più importanti della città.
クエスト エ ウーノ デイ ムゼイ ピュ インポルタンティ デルラ チッタ
これは町で最も重要な美術館の一つです。
Questa è una delle chiese più antiche della regione.
クエスタ エ ウーナ デルレ キエーゼ ピュ アンティーカ デルラ レジオーネ
これはこの地域で最も古い教会の一つです。
Questa è una delle pitture più famose del Rinascimento.
クエスタ エ ウーナ デルレ ピットゥーレ ピュ ファモーゼ デル リナッシメント
これはルネッサンス時代の最も有名な絵画の一つです。
La Venezia è una delle città più belle del mondo.
ラ ヴェネツィア エ ウーナ デルレ チッタ ピュ ベルレ デル モンド
ヴェネツィアは世界で最も美しい町の一つです。
「イタリア世界遺産の旅」と「生きたイタリア語のフレーズ」
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