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「イタリア世界遺産の旅」と「生きたイタリア語のフレーズ」

石黒 秀嗣

ピエンツァ市街の歴史地区 (Centro storico della città di Pienza) 1996年登録


スケッチ 青山 博

 ピエンツァは、トスカーナ州シエーナ県にあり、シエーナの南東52km、車で約1時間半ぐらい、人口は約2200人の町。旧市街は東西に400m、南北に150m程度しかない小さな町で、オルチャ渓谷を見下ろす丘の上に立っています。城壁に囲まれた東西400メートル程の箱庭のような小さな町で「トスカーナの宝石」と呼ばれています。
この町は古代ローマ時代にはCorsignanoと呼ばれていました。9世紀にはすでにアミータ山の大修道院がこれを所有し、次いでシエーナの自治都市の手に移り、最後にピッコロミニ家の領土となりました。15世紀に教皇ピオ2世は、生まれ故郷のこの町をルネッサンスの「理想都市」に作り替えることを構想し、町の名前もピエンツァ(ピオの町)に改めました。フィレンツェの建築家であり彫刻家であったベルナルド・ロッセリーノ(Bernardo Rossellino)にその設計を依頼しました。かつては中世の町の広場であったピオ2世広場(Piazza Pio II)もレオン・バッティスタ・アルベルティ(Leon Battista Alberto)の「建築論」(De re aedificatoria)に従い、既存の都市を改造しながら徐々に理想に近づけるという現実的発想のなかで、幾何学的手法や透視図法の応用を生かし、建築全体に合理性、均等、対象を刻み込んだルネッサンス的都市空間が創り出されています。ピエンツァの町も穏やかに蛇行する2本の中世の道が合流する地点に広場が造られており、"天空を屋根に見立てた広間"の奥正面に大聖堂(Concattedrale di Santa Maria Assunta)が聳え立ち、奥へ行くほど広場の幅が広がる逆台形状に設計されており、大聖堂を堂々と見せる工夫がなされています。ファサードの中央上部に「神の目」(occhio)と呼ばれている大きな円い窓が見えます。そして広場の地面にも「神の目」が地上に映されたかのようにまるい円が描かれています。
ピエンツァの町は、この広場を中心に造られています。大聖堂の右手には手前に井戸(pozzo)を備えたピッコロミニ館(Palazzo Piccolomini)、反対側には、美しい扉口と2層に並ぶ十字型窓をもつ重厚な司教館(Palazzo Vescovile)と、博物館の入っている司教座聖堂参事会員の家(Palazzo dei Canonici)が並んでいます。また大聖堂の向かいには市庁舎(Palazzo Pubblico)が建っています。
ピッコロミニ館は、ピオ2世の寝室や書斎をはじめ、居室は一般公開されています。また宮殿の裏側にある長い回廊からは中庭とオルチャ渓谷(Valle d'Orcia)の眺望も楽しむことが出来ます。オルチャ渓谷の美しい田園風景が広がっています。手入れの行き届いた田園と糸杉が並ぶ広大な景色は2004年に世界文化遺産として登録されました。広場から続いているカステッロ通り(Via del Castello)は、城壁の上を歩くような形の歩行者用の道で、そこからのオルチャ渓谷の田園風景はとても素晴らしく、時を忘れてその絶景に見入ってしまうことでしょう。
ピエンツァの町は、背後には起伏のある丘陵の美しい田園風景が広がっており、まさにそこには「空間」に新たな美的秩序を求め、人間にとっての理想的な都市実現に憧れたルネッサンスの人たちのロマンを体感することが出来る町と言えるのではないでしょうか!
最後に、ピエンツァの特産は、羊のチーズ(pecorino Pienza)です。イタリアでは最高級のものと認められています。毎年9月にはチーズ祭り(Fiera dei Cacio)が開催されています。ピエンツァの町が6地区(contrada)に分かれ、ピオ2世広場で丸いチーズを転がしながら地面に描かれている「神の目」に入れる競技(Cacio al fuso)が行われます。

Pienzaの写真
http://www.apertoperrestauro.siena.it/foto/territorio_1/pienza/duomo_di_pienza

■ 町の観光情報
http://www.comunedipienza.it/

Pienzaへのアクセス
Sienaから52km、TRAIN社バスの112Montepulciano行きのバスで1時間15
時刻表:http://www.trainspa.it/EXTRAURBANO.htm

■ ピッコロミニ館(Palazzo Piccolomini)
http://www.palazzopiccolominipienza.it/

■ チーズ祭り
http://www.comune.pienza.siena.it/on-line/Home/Turismoemultimedia/
scheda1200537.html

http://www.youtube.com/watch?v=yJNrz4wnvg8&feature=related

生きたイタリア語のフレーズ 第18回

花粉症の季節到来!

 寒い冬から解放され、新緑の春の季節を迎え、日も少しずつ長くなって、陽気もだんだんと暖かくなってきます。しかし花粉症の人たちには受難の季節で、目がかゆくなったり、くしゃみ(starnuto)や鼻水(goccia al naso)が出たり、ひどい場合には喘息(asma da fieno)にかかったり、大変憂鬱な季節でもあります。イタリア語で花粉症をallergia al polline、またはpollinosiといいます。花粉を意味するpollineから派生した言葉です。
日本では花粉症というと、直ぐにスギの花粉を思い浮かべるでしょう。イタリアでは春の花が咲き始め、その花々の発する綿毛のような花粉が飛散して起きる花粉症が多いということです。ポプラ(pioppo)、イネ科のグラミナチェ(graminacce)、ブナ科のファッジョ(faggio)、キク科のマルゲリータ(margherita)などの花粉が原因とされています。最近ではブタグサ(ambrosia)の繁殖も急速に拡大しており、イタリアでも2割近くの人が花粉症患者とされています。

■季節の変わり目と花粉症とで、この時期、周りにくしゃみをする人をよく見掛けます。イタリアではくしゃみをした人にサルーテ(Salute!)と声を掛けます。「健康」という意味で、「お大事に」という意味合いになります。勿論、Grazie!(有り難う)と返事を忘れないように!

Ecci!
エッチ
ハクション
Salute!
サルーテ
お大事に
Prendi cura di te, eh!
プレンディ クーラ ディ テ エ
ちゃんと治してね!
Ho l'allergia al polline.
ホ ラッレリジーア アル ポッリネ
花粉症アレルギーがあります。
Ogni anno soffro di pollinosi.
オンニ アンノ ソフロ ディ ポッリノージ
毎年花粉症に悩まされています。
Ho il naso chiuso(tappato).
ホ イル ナーゾ キウーゾ(タッパート)
鼻がつまっています。
Mi cola il naso.
ミ コーラ イル ナーゾ
鼻水が出ます。

■「鼻とか目がかゆい」はprùdereという動詞を使います。イタリア語では普通3人称単数・複数で使います。

Mi prude il naso.
ミ プルーデ イル ナーゾ
鼻がむずむずします。
Mi prudono gli occhi.
ミ プルードノ リ オッキ
目がかゆいです。
Starnutisco e tossico tanto.
スタルヌティスコ エ トッシコ タント
くしゃみや咳がたくさん出ます。
Sto male per allergia.
スト マーレ ペル アッレルジーア
花粉症でつらいです。
I miei occhi sono rossi e mi pizzicano.
イ ミエイ オッキ ソーノ ロッシ エ ミ ピッツィカノ
目がかゆくて充血しています。
Soffro d'asma da fieno.
ソッフロ ダジマ ダ フィエーノ
花粉による喘息で苦しんでいます。

■日本では、花粉症の季節にはマスクは欠かせませんが、イタリアではそのような光景はまったく見られません。マスク(maschera)をして外出することは奇異の目で見られるようです。それとイタリアの法律では、正当な理由がなく顔を隠して公共の場所に現れることは刑罰の対象となります。最近、イスラム教の女性が宗教的な理由でブルカで顔を隠すのが社会問題化しました。外出する際はマスクをしないほうがよいかもしれません。

In Italia è meglio non mettersi la maschera.
イン イタリア エ メーリオ ノン メッテルシ ラ マスケラ
イタリアではマスクをつけない方がよい。
In Giappone ha l'abitudine di portare la maschera.
イン ジャッポーネ ア ラビトゥーディネ ディ ポルターレ ラ マスケラ
日本ではマスクをつける習慣があります。
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