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「イタリア世界遺産の旅」と「生きたイタリア語のフレーズ」

石黒 秀嗣

ヴァチカン市国 前編 La città del Vaticano 1984年登録


スケッチ 青山 博

 ローマ市内の一角に、世界最小の国ヴァチカン市国があります。領土は、東西1.2km、南北1kmほどで、わずか0.44km2にしか過ぎない小さな国です。
1929年、ムッソリーニ政権下で、ラテラーノ協定が締結されました。協定は過去の教皇領の権利を放棄する代わりに、ヴァチカンを独立国家として宗教的にも特別な地位を保証、すなわち治外法権を認めることとなりました。サン・ピエトロ大聖堂以外にもローマにある3つの大聖堂(サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂、サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂、サンタ・マリーア・マッジョーレ大聖堂)やガンドルフォのローマ教皇庁の別荘なども含まれています。
ヴァチカンは、10億人を超える信者を有する世界最大の宗教であるキリスト教カトリックの総本山であります。そして1377年以降ローマ教皇の御座所となっており、カトリック教会最大聖地でもあります。
歴史を振り返ると、4世紀コンスタンティヌス帝がそれまでのキリスト教迫害の歴史を一転、ミラノの勅令を発布し、キリスト教をローマの宗教として正式に公認しました。
現在のヴァチカンのある場所に、かつてはカリグラ帝とネロ帝の巨大な競技場があり、それに沿ってキリスト教徒の墓地が並んでいました。コンスタンティヌス帝は聖ペテロの墓を見つけ、324年、その墓の上の聖ペテロ殉教のこの地に旧サン・ピエトロ大聖堂の建立を命じたのでした。
現在のサン・ピエトロ大聖堂は、16世紀ユリウス2世(在位1503-13)の時代に大改修が行われ約120年の歳月をかけバロック様式の荘厳かつ壮大な大聖堂が完成しました。当時のルネッサンス芸術の粋を集めた建造物で、ミケランジェロ、ラファエロやベルニーニ、そして建築家ブラマンテなどが係わりました。

■サン・ピエトロ広場(Piazza S. Pietro)
この広場には実に30万人を収容できるといいます。広場の設計はジャン・ロレンツォ・ベルニーニによるものです。4列の柱廊は、大聖堂の左右に伸びた二つの大きな半円形をしており、その柱廊には合計284本の円柱が並んでいます。しかし広場中央にある泉とオベリスクの間に円形の石があります。そこに立って見ると、不思議に柱廊は一列の円柱からなっているように見えます。
ナヴォーナ広場、スペイン広場、パンテオンなど、ローマの広場には泉とオベリスクをよく見ます。これは権力の象徴であり、ここバチカン広場にもとてつもない大きな二つの泉とオベリスク(Obelisco Vaticano)が中央に聳え立っています。高さ25.5mもあるエジプトから運び込んだオベリスクはカリグラ帝とネロ帝の競技場にあったものを大聖堂の前に移築したものです。

■サン・ピエトロ大聖堂(Basilica S. Pietro)
大聖堂入り口のポルティコには、右翼廊への入口奥には、ベルニーニの「コスタンティヌス帝」が、左入口にはコルナッキーニの「カール大帝」の騎馬像があります。これは最初のキリスト教徒の皇帝と、神聖ローマ帝国の初代皇帝が象徴的に大聖堂を守っているということです。
堂内に入るとすぐ右手に若きミケランジェロ23歳のときの傑作「ピエタ」(1498)があります。
大聖堂内部の全長が187mの総大理石造り、総面積が15,106m2で身廊の高さが45.8m、またクーポラの直径が42m、高さが132.5mもあり6万人を収容できるという世界最大の大聖堂。11の礼拝堂と45の祭壇があります。内陣のクーポラの下に教皇の祭壇(altare papale)があり、ベルニーニ作の大天蓋で覆われています。右手前方にはアルノルフォ・ディ・カンビオ(Arnolfo di Cambio)の聖ペテロのブロンズ像があります。更に後陣の奥には、クーポラから差し込む光に包まれた「聖ペテロの司教座」(ベルニーニ作)があり、そのブロンズの玉座のなかには、実際に聖ペテロの使った木の椅子が入っているそうです。そしてその地下には聖ペトロと歴代のローマ教皇が眠る地下聖堂につながっています。

 現在、サン・ピエトロ大聖堂に入るためには、2段階のセキュリティチェックを受けなければなりません。パスポートは必要ありません。最初のチェックは、手荷物の検査やモニター・チェックが行われています。ペットボトルや傘などは問題ありませんが、大きな荷物は持って入ることが出来ませんので注意して下さい。二つ目のチェックは、大聖堂の前にある階段の下で行われており、主に服装のチェックが行われています。教会など神聖な場所では常識ですが、肩を露出するような服装"ノー・スリーブ"や"ショートパンツ"などでは必ずチェックに引っかかりますので注意して下さい。
また厳粛で神聖な場所である大聖堂には、世界中から巡礼者が訪れていますので、観光客の人たちはその方たちに敬意を表し常識ある行動をお願いしたいと思います。
次回は、世界最大の美術館・博物館(Palazzi e Musei Vaticani)を紹介する予定です。

La città del Vaticanoの写真
 http://www.sacred-destinations.com/italy/rome-st-peters-basilica-photos/

La città del Vaticanoの公式サイト
 http://www.vaticanstate.va/IT/homepage.htm

La città del Vaticanoへのアクセス
ローマ・テルミニ駅から、サンピエトロ大聖堂へは地下鉄A線オッタヴィアーノ サン・ピエトロ駅下車徒歩7分、ヴァチカン博物館へは地下鉄A線チプロ駅下車徒歩5分。バスはテルミニ駅からNo.40がサンピエトロ広場の近くに停まります。

生きたイタリア語のフレーズ 第24回

感情を表現するフレーズ その6

 自分の感情をうまく表現することは会話の中では大切だと思います。生きた会話にするためにもただ質問したり、答えたりという繰り返しの会話でなく、自分の感情をできるだけ率直に表現することが大切だと思います。日本人は自分の気持ちを言葉で表現することが少し苦手なように見えます。それに対してイタリア人は自分の気持ちをジェスチャーで表現したり、言葉で表現したりすることが大変うまいです。喜怒哀楽がイタリア語で表現できれば、相手にもわかりやすく、楽しい会話になり、本当の意味で人と人の触れ合いが会話によって生まれてくると思います。
 今回は、驚いた時の感情表現を取り上げてみました。


驚きの気持ちを表現するフレーズ

 会話のなかで、驚いたとき、驚きを表す表情も大切ですが、驚きを表すフレーズがなかなかうまく出てこないことがよくあります。イタリア語では、会話の状況で決まったフレーズがあるのでしっかり覚えましょう。
「びっくりさせる」スパヴェンターレ(spaventare)という動詞は、驚かされることにより精神的に不安や心配をさせるようなときに使います。一方、「おどろかす」ソルプレンデレ(sorprendere)という動詞は、突然の出来事に驚かされびっくりするような場合によく使います。ソルプレーザ(sorpresa)は名詞で「驚き・驚嘆」を意味します。

Non mi spaventare.
ノン ミ スパヴェンターレ
びっくりさせないでよ。
Mi hai sorpreso.
ミ アイ ソルプレーゾ
驚いた。(君は私をびっくりさせた)
Che sorpresa!
ケ ソルプレーザ
びっくりしたよ!
È una grande sorpresa.
エ ウーナ グランデ ソルプレーザ
すごくおどろいたよ。(いい意味で)
Bella sorpresa!
ベルラ ソルプレーザ
ほんとうに驚きだね!
Mi hai spaventato: non ti avevo sentito entrare.
ミ アイ スパヴェント ノン ティ アヴェーヴォ センティート エントラーレ
君が入ってくるのに気付かなかったので、びっくりしたよ。
Una triste notizia ha sorpreso tutti.
ウーナ トゥリステ ノティツィア ア ソルプレーザ トゥッティ
悲鳴が皆を驚かせた。

信じられないことが起きて驚く場合は、「信じる」クレーデレ(credere)という動詞を使うとよいでしょう。

Non ci posso credere!
ノン チ ポッソ クレーデレ
信じることが出来ない!
È incredibile!
エ インクレディービレ
信じられない!
Davvero?
ダッヴェーロ
本当ですか?(本当に?)
È difficile crederci.
エ ディフィチレ クレーデルチ
それは信じがたいことだ。
Non credo alle mie orecchie.(ai miei occhi)
ノン クレード アルレ ミーエ オレッキエ (アイ ミエイ オッキ)
耳(目)を疑うよ。
Non posso credere a quello che tu dici.
ノン ポッソ クレーデレ ア クエルロ ケ トゥ ディーチ
君の言っていることが信じられない。

その他、驚きを表すいろいろなフレーズがありますので紹介しましょう。いいとき、悪いとき両方の驚きに使うことが出来る「おやまあ!」にあたるカースピタ(Caspita)という言葉があります。「これはまた」とか「もちろん」など強調の意味でもよく使います。
ショックな出来事には、「ショックを与える」ショカーレ(scioccare)という動詞を使います。「ショックな」ショカンテ(scioccante)、「ショツクを受けた」ショッカート(scioccato)などがあります。また英語のショック(shock)も同じように使います。

Caspita!
カースピタ
おやまあ!
È scioccante!
エ ショッカンテ
ショックだ!
Mi hai sciccato.
ミ アイ ショッカート
ショックだった。(君は私を驚かせた)
È stato uno shock.
エ スタート ウーノ ショック
ショックでした。

驚き、不快感や困惑などを表す間投詞に、「神」を表すディーオ(Dio)という言葉をよく使います。また「聖母マリア」を表すマドンナ(Madonna)もよく使います。英語で言う「Oh my god!」に近い表現は、「お母さん、助けて!」マンマ・ミーア(Mamma mia!)で、本当に困ったときには、神だのみならぬ母だのみなんですね!よくイタリアではマザコン(mammone,mammismo)の男性が多いとよく聞きます。
最後に、「しまった」「困ったなあ」を表すアッチデンティ(accidenti!)も同じようによく使います。

Oh, Dio!
オー ディーオ
何てこった!
Oh, Dio, ho dimenticato a casa il portafoglio!
オー ディーオ オ ディメンティカート ア カーザ イル ポルタフォーリオ
困ったなあ、家に財布を忘れてきてしまった!
Oh, Dio, ho perso il mio passaporto.
オー ディーオ オ ペルソ イル ミオ パッサポルト
大変だ、パスポートをなくしちゃったよ!
Madonna! La TV è rotta, il film comincia!
マドンナ ラ ティーヴー エ ロッタ イル フィルム コミンチア
何てこった!テレビが壊れちゃったよ、映画始まるよ!
Mamma mia! Ho dimenticato la mia borsa al ristorante.
マンマ ミーア オ ディメンティカート ラ ミア ボルサ アル リストランテ
あら、いやだ!レストランにバッグを忘れちゃった。
Accidenti!
アッチデンティ
しまった!
Accidenti! Sono ormai in ritardo.
アッチデンティ ソーノ オルマイ イン リタルド
困ったなあ、もう遅刻だよ。
「イタリア世界遺産の旅」と「生きたイタリア語のフレーズ」
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