文化講座
困ったときの会話
ステップ 1 町の散歩
マントヴァ(Mantova):ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)
マントヴァの地名の由来は、ウェルギウスの叙事詩「アエネイス」で言われているように、ギリシャの予言者の娘マントの息子オクヌスによって建設されたという説と、ダンテが「神曲」のなかで、エトルリア人の神マントゥに拠るという二つの伝説があります。その真意は歴史家に任せるとしましょう。現在訪れるマントヴァの町は、14世紀から4世紀の間に、ゴンザーガ家の代々の君主たちによって築かれました。ガルーダ湖を源とするミンチョ川から出来た3つの湖に囲まれ、あたかも突き出た半島のように浮かんでいる形をしています。マントヴァのゴンザーガ家は、フィレンツェのメディチ家、ミラノのスフォルツァ家、フェッラーラのエステ家そしてウルビーノのモンテフェルト家と同様芸術文化を手厚く庇護した名門の一族でした。パドヴァからマンテーニャ(Andrea Mantegna 1431-1506)、ローマからラファエルロの弟子のジュリオ・ロマーノ(Giulio Romano 1499-1546)、ヴェネチアからティツィアーノ(Tiziano Vecellio 1490-1576)、ベルギーからルーベンス(Pietel Paul Rubens 1577-1640)などが宮廷画家として招かれ多くの作品を残しました。また音楽の世界でもクレモナからモンテヴェルディ(Claudio Monteverdi 1567-1643)、ヴェネチアからヴィヴァルディ(Antonio Vivardi 1678-1741)などが宮廷楽長として招かれました。そして1770年、モーツァルト(Mozart 1756-1791)の14歳のとき父レーオポルトとともにマントヴァを訪れ、Teatro Scientificoで演奏しています。またマントヴァはベルディのオペラ『リゴレット(Rigoletto)』の舞台としても有名です。
ゴンザーガ家の宮殿(Palazzo Ducale)は、湖に面しており34,000m2という広大な敷地に500の部屋と15の中庭というヨーロッパ最大級の大きさを持ち、14世紀から17世紀にかけて建設されました。内部は美術館となっており、イザベッラ・デステ(Isabella d'Este 1474-1539)を中心にしたゴンザーガ家の芸術コレクションは必見。なかでも「夫婦の間(Camera degli Sposi)」に描かれたマンテーニャの壁画、そこにはゴンザーガ家の人生のさまざまなシーンがフレスコ画で描かれています。そして「鏡の間(Galleria degli Specchi)」はモンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」の初演のホールで、ヴェネチアンガラスで作られた鏡が張りめぐらされています。マントヴァは、ルネサンス期には名馬の産出地として大変有名なところでした。この宮廷の壁画によく馬が描かれていますので注意して見て下さい。この「鏡の間」の天井の左右に描かれた馬車に注意して下さい。こちらが歩き出すと、馬が方向を少しずつ変え、ついには完全に逆を向いていることに気付くでしょう。透視図法を巧みに利用した視覚のトリックで不思議な体験ができます。
次回に続く
ステップ 2 あなたのイタキチ度は?
イタリアについての常識問題にチャレンジして下さい!
- 「四季」を作曲したバロック時代のイタリアの作曲家の名前は?
- 「地動説」を唱えたイタリアの天文学者の名前は?
- リゾットミラネーゼに使われている香辛料は何でしょうか?
- 白ワインをベースに香草などを加えて作られた飲み物の名前は?
- 薫製にかけない豚のバラ肉を何と言うでしょうか?
ステップ 3 困ったときの会話
■旅行中、トラブルに巻き込まれないことにこしたことはありません。しかし慣れない環境では、通常あり得ないことが起きてしまいます。食事を楽しんだ後や、観光であちこち歩き回って疲れているときなどに緊張感がゆるみ、ついうっかりと忘れ物をしてしまいます。またちょっとしたすきにひったくりにあったりして、楽しいはずのイタリア旅行も台無しになってしまいます。先ずは助けを求めるときの「とっさの一言」を覚えましょう!
- Aiuto! Smettila!
- アイウート ズメッティラ
- 助けて! やめて!
- Vattene! Fuori!
- ヴァッテネ フオーリ
- あっちに行け! 出て行け!
- Ladro! Chiamate la polizia!
- ラードゥロ キアマーテ ラ ポリツィーア
- 泥棒! 警察を呼んでください!
■次にレストランやお店などに「~を忘れてしまいました(Ho dimenticato ~)」という会話を覚えましょう!
- Ho dimenticato una sporta in taxi.
- オ ディメンティカート ウーナ スポルタ イン タクシ
- タクシーに買い物袋を忘れてしまいました。
- Ho dimenticato un cappotto nero, l'avete trovato(visto)?
- オ ディメンティカート ウン カポット ネーロ ラヴェーテ トゥロヴァート(ヴィスト)
- 黒いコートを忘れたのですが、ありますか?(見ましたか?)
- Penso di aver lasciato qua la macchina digitale(la videocamera).
- ペンソ ディ アヴェル ラシャート クア ラ マッキナ ディジターレ(ラ ヴィデオカメラ)
- ここにデジカメ(ヴィデオカメラ)を置いたはずなんですが!
例えば、レストランでカバンを忘れてしまい、直接レストランに探しに行ったときの会話
- Ho dimenticato una borsa, così grande e il colore è di marrone.
- オ ディメンティカート ウーナ ボルサ コジ グランデ エ イル コローレ ディ マルローネ
- カバンを忘れてしまいました。こんな大きさで色は茶色です。
- Ero seduto vicino al finestrino.
- エロ セドゥート ヴィチーノ アル フィネストゥリーノ
- 窓側の席に座っていました。
- Nella mia borsa c'erano il portafoglio, la macchina digitale e il
passaporto. - ネッラ ミア ボルサ チェラノ イル ポルタフォーリオ ラ マッキナ ディジターレ エ イル パッサポルト
- カバンの中には、財布とデジカメとパスポートが入っています。
- Potele aiutarmi a cercarla?
- ポテーテ アイウタールミ ア チェルカルラ
- 探していただけますか?
- Mi chiamate all'Hotel se la ritrovate!
- ミ キアマーテ アッロテール セ ラ リトゥロヴァーテ
- もし見つかったらホテルに連絡下さい。
もし見つかって取りに行く場合の会話
- Vado a ritirarla subito, grazie!
- ヴァード ア リティラルラ スービト グラツィエ
- 直ぐに取りに行きます。有り難うございます。
- Vengo a ritirarla domani, potete tenerla?
- ヴェンゴ ア リティラルラ ドマーニ ポテーテ テネルラ
- 明日取りに行きますので、預かっていただけますか?
■イタリアは世界的な観光地のため、観光客を狙った置き引き、すり、ひったくりなどの被害は日常的に起きています。「自分のものは自分で守る」という気持ちで自分の身の回りにはくれぐれも注意して下さい。子連れのジプシーには決して近づかないようにして下さい。また人で込み合った場所などではスリにも注意するようにして下さい。
不幸にして被害にあった場合、現地の警察へ行って被害届を出し、盗難(紛失)証明書を作成してもらいましょう。この書類は旅行保険などで損害を補填してもらう為に必要となります。クレジットカードの紛失の場合は、カード会社に連絡してカードの失効手続きをしてもらいましょう。問題はパスポートの紛失の場合です。パスポートがないとイタリアから出国が出来なくなります。ローマにある日本大使館またはミラノの日本領事館へ行って「帰国のための渡航書」を発行してもらいます。そのためには「盗難(紛失)証明書」と写真2枚、そして身分証明書(免許証、保険証またはパスポートのコピー)が必要となります。発行までの数日かかります。パスポートの再発行となると1から2週間かかります。
警察署で盗難(紛失)届けをするときに必要な会話
- Dov'è la questura(la stazione di polizia)?
- ドーヴェ ラ クエトゥーラ(ラ スタツィオーネ ディ ポリツィーア)
- 警察署(交番)は何処ですか?
- Dov'è l'ufficio degli oggetti smarriti?
- ドーヴェ ルフィッチョ デリ オッジェッティ ズマッリーティ
- 遺失物係は何処ですか?
- Ho perso la mia borsa.
- ホ ペルソ ラ ミア ボルサ
- カバンをなくしました。
- Mi hanno rubato il portafoglio.
- ミ アンノ ルバート イル ポルタフォーリオ
- 財布を盗まれました。
- Mi può preparare una denuncia di furto(una dichiarazione di
smarrimento・una denuncia per l'assicurazione)? - ミ プオ プレパラーレ ウーナ デヌンチア ディ フルト(ウーナ ディキアラツィオーネ ディ ズマッリメント・ウーナ デヌンチア ペル ラッシクラツィオーネ)
- 盗難証明書(紛失証明書・保険用の証明書)を作っていただけますか?
- Mi hanno Tagliato(scippato) la borsa!
- ミ アンノ タリアート(シッパート) ラ ボルサ
- バッグを切られました(ひったくられました)。
- Mi hanno sporcato apposta con un gelato!
- ミ アンノ スポルカート アッポスタ コン ウン ジェラート
- アイスクリームを付けられました。
- Erano in due ragazzi con la vespa.
- エラノ イン ドゥエ ラガッツィ コン ラ ヴェスパ
- スクーターで乗ったふたり組の男の子でした。
- Mi hanno portato via la valigia mentre compravo il biglietto.
- ミ アンノ ポルタート ヴィア ラ ヴァリージア メントゥレ コンプラヴォ イル ビリエッティ
- 切符を買っているすきに旅行カバンを持って行かれました。
- Erano in tre zingari, una zingara con la bimba e un bambino zingaro.
- エラノ イン トゥレ ジンガリ ウーナ ジンガラ コン ラ ビンバ エ ウン バンビーノ ジンガロ
- 3人のジプシーで、赤ちゃんを抱いた女性と小さな男の子でした。
ステップ2の答え
- アントニオ・ヴィヴァルディ(Antonio Vivardi 1678-1741)
- ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei 1564-1642)
- サフラン:イタリア語ではザッフェラノ(zafferano)第13回「列車旅行での会話 その1」サンジミニャーノを参照
- ヴェルモットワイン:甘い口当たりで独特の風味を持っており、食前酒としては勿論、就寝前によく飲まれています。「マルティーニ」「ガンチャ」などが有名でドライ(辛口)、ロッソ(赤)、ビアンコ(白)などの種類があります。
- パンチェッタ(pancetta):もともと豚バラ肉(pancia)を塩漬けした保存食でした。ベーコンは薫製したパンチェッタ(pancetta affumicata)というように、パンチェッタは薫製処理されていないものを言います。パスタ料理で有名なスパゲッティ・アマトリチャーナは、パンチェッタ発祥の地の北西アマトリーチェ(Amatrice)から名付けられました。