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インターネット公開文化講座

文化講座

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お弁当作りを楽しむ

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第8回:高齢者のお弁当について学びます

前シリーズでは「旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!~」と題し、その季節に最もおいしい食材や調理法を取り上げ、その効能はもちろん、それらにまつわる様々な事柄の説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、「お弁当作りを楽しむ」というテーマで、幼児や学童期から、中高年者が楽しめる弁当や、おもてなしも含めたマダムのためのおしゃれ弁当など、その作り方の注意点なども含めてお弁当に向くレシピを皆様にご紹介しています。

8回目のテーマは「高齢者のお弁当(2)
高齢者が料理を手作りする意義や、食事作りの工夫などをご紹介します。

まずは、食事作りがおっくうになりがちな高齢者にとって、重宝な鍋物を作ってみましょう。

  • 鍋物には肉や魚介類などが入るため、たんぱく質を十分に摂ることができます。たんぱく質は、高齢者にとって長寿を維持する大切な栄養素です。
  • 野菜や芋類は、胃腸の調子を整えるという利点もあります。
  • 栄養素が溶け込んだ残り汁(つゆ)にうどんを入れたりおじやにすると、煮汁に溶け出した栄養素をしっかりと摂れます。煮汁を捨てないことは、環境にも良いでしょう。

ハマグリ鍋

ハマグリ鍋

材料 2人分
ハマグリ
(中~大・1コ50g位)
6コ
A かつおだし 2・1/2カップ
(500ml分)
しょうゆ 大さじ1
大さじ2
~小さじ1/4~
(ハマグリの塩分をみて)
絹豆腐 1/2丁
えのき茸 1/2袋
白ねぎ 1本
三つ葉(小) 1/2束
  すだち 1コ
粉山椒
(七味唐辛子又は黒こしょう)
少々
ごはん 1人分
2~3コ

作り方

  1. ハマグリは殻と殻をこすり合わせてきれいに洗います(一般的には砂出ししたものが売られているので砂出しの必要はない)。
  2. 土鍋に(A)を入れ、ハマグリを順に入れて煮ます。
  3. 豆腐は水によく晒し、1人分を2切れ程度に切ります。
  4. えのき茸は石突きを切って大きくほぐします。ねぎは1cm厚さの斜め切り、三つ葉は半分の長さに切ります。
  5. 2.のハマグリを取り出して、すだちや薬味で食べます。
  6. 2.の鍋に3.と4.を入れてサッと煮て取り出して食べます。具を順に加えて煮ます。
  7. 煮汁から野菜のくずなどをすくい取り、ごはんを加えてとろとろに煮てから溶き卵を入れておじやを作って食べます。

~過去によく作った料理(炊き込みご飯)も、思い出しながら作ってみましょう~

あさりとふきの春の香ご飯

あさりとふきの春の香ご飯

材料 4人分
  あさり(殻付・中) 400g
大さじ3
大さじ3
  2カップ(400ml分)
昆布だし汁 450ml
ふき 1本
新たけのこ 中1本(200g)
A しょうゆ 大さじ1・1/2
小さじ1/3
貝の蒸し汁 100ml
木の芽(あれば) 適宜

作り方

  1. あさりはきれいに洗います。
  2. 鍋に1.を入れて分量の酒と水をふり入れ、フタをかけて蒸し煮し、身を取り出します。蒸し汁は残しておきます。
  3. 米を洗って分量の昆布だし汁に1時間程つけておきます。
  4. ふきはたっぷりの塩で板ずりをし、塩をつけたまま茹で、皮をむいて小口切りにします。
  5. たけのこは小さめのいちょう切りにし、(A)で下味をつけます。
  6. 3.に分量の貝の蒸し汁と、5.のたけのこを汁ごと加えて炊きます。
  7. 火が切れたところであさりの身と4.のふきをのせ、10分間程蒸らします。
  8. さっくりと混ぜ合わせ、木の芽を散らします。

※昆布だし汁は昆布10cmを600ml程の水に浸けたものを使用しました

高齢者が料理を手作りする意義

「料理をすること」は様々な効果をもたらします。『脳を鍛える大人の音読ドリル』などの著書で知られる脳研究の第一人者である東北大学の川島隆太教授は、調理中に脳の前頭連合野が活性化すると科学的に証明しました。(2004年実験)

調理をする過程には、

  • 献立を考える
  • 食材を準備する
  • 洗う
  • 切る
  • 煮る、焼く、炒めるなど調理する
  • 盛り付ける
など様々な工程があります。
料理を行うには、食材や調味料を選んだり、段取りを決めて計画を立てたりと、料理を始める前でも頭を使って考え、計画性を高めます。最近の献立を思い出し、毎日違う献立を立てるようにすることで、認知機能が活性化します。
また、料理中も切る・炒める・盛り付けるといった作業があり、調理器具や調味料の準備で移動することも多く、それらの動作をテキパキと行う必要があります。そのため、料理は基本的な身体機能を働かせる活動のひとつといえます。また、複数のメニューを同時に調理することで、手順は異なり、工程もさらに複雑になります。こうした作業の中で脳は常に動き続け、その作業が複雑で難しいほど、集中力を向上させて脳をしっかり働かせます。
さらに、隠し味などで工夫をこらすことで、より脳は活性化されます。料理を作るということは、食に対する興味や関心を高め、認知症予防にも役立っています。

そのうえ、料理には「相手を喜ばせる」、「達成感がある」、「おいしいものが食べられる」といった楽しみがあります。家族や友達と食事をして「美味しい」と共感しあうことで、お互いにコミュニケーションが取りやすくなり交流を深めます。誰かの家に集まってホームパーティをするのもお勧めです。こうして、食事は体だけでなく心の健康面でも役立ちます。

毎日規則正しい食生活

健やかな高齢期を過ごすためには、規則正しい食事の習慣を身につけることが大切です。規則的な食事は生活にメリハリができるとともに、食欲を増進させます。また食事内容を豊かにするために、様々な食事作りの工夫をして、食事量や栄養量を確保することが大切です。

簡単で内容豊かな食生活にするための工夫

  1. 缶詰、乾物、冷凍食品など保存のきく食品を買い置きしておくと、買い物ができない日に便利です。
  2. 常備菜(佃煮、煮物、ねりみそなど)を、作り置きしておくと便利です。
  3. 食品の栄養成分表示や期限表示を確かめて食品を選択し、栄養価が高く鮮度の良い食品を購入するように心がけます。
  4. 鮮度の良い食品を適量購入する習慣をつけ、食中毒などを予防します。
  5. テレビ、新聞、雑誌などのマスメディアを利用して、正しい情報、新しい情報を取り入れ、栄養や料理の知識を常に身につけるようにします。
  6. 便利な料理器具を活用しましょう。
    • 電子レンジ......短時間で調理ができます。また冷凍食品の解凍や、料理や飲み物などを温めることができます。
    • 冷凍庫(フリーザー)......冷凍食品を長期間保存することや、家庭で料理を冷凍することができます。
    • オーブントースター......パン、餅、ホイル焼き、グラタン、ピザ、クッキーなどを焼くことができます。冷めたフライや魚などを、温めることができます。
  7. 旬の食品の利用は、安価で栄養価が高くおいしい上、季節を味わうことができて食欲増進にもつながります。
  8. 簡単に料理ができるように、工夫します。
    • 一品でたくさんの食品を使用する料理(例:焼きそば・鍋物・炊き込みご飯など)は、栄養のバランスがとれて料理の品数が少なくてすみます。
    • 時間のある日に下処理しておくと、毎日の料理が簡単になります。
    • ご飯は一度に2~3回分炊き、残りは冷凍保存したり、雑炊やおかゆを作ります。
    • 揚げ物の残りはだし汁で再加熱したり、丼物(天丼、かつ丼など)に利用します。
  9. 食材の宅配サービスなども、上手に利用すると便利です。
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