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文化講座

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お弁当作りを楽しむ

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第7回:高齢者のお弁当について学びます

前シリーズでは「旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!~」と題し、その季節に最もおいしい食材や調理法を取り上げ、その効能はもちろん、それらにまつわる様々な事柄の説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、「お弁当作りを楽しむ」というテーマで、幼児や学童期から、中高年者が楽しめる弁当や、おもてなしも含めたマダムのためのおしゃれ弁当など、その作り方の注意点なども含めてお弁当に向くレシピを皆様にご紹介しています。

7回目のテーマは「高齢者のお弁当
高齢者の特徴と食事との関係や、今回は特に低栄養にならないために意識したい点などをご紹介します。

まずは、高齢者の低栄養にならないためのお弁当を作ってみましょう。
彩りの良い釜飯で、栄養素をしっかり摂取する弁当スタイルです。

  • 栄養バランスを考えた色取りの良い釜飯は、食欲をそそります。
  • ひとつひとつの食材に丁寧に下味をつけ、出し汁を効かせて調味したのでうまみが生きています。
  • 季節感を持たせる盛り付けで、様々な思い出がよみがえる料理としました。

たけのこ釜飯

たけのこ釜飯

材料 4釜分
  3カップ
かつおだし(冷えたもの) 840ml
新たけのこ(茹で) 大1本(220g)
油揚げ 3枚
A しょうゆ 大さじ2強
小さじ1・1/4~1・1/3
砂糖 大さじ1/2
新たけのこ(茹で) 小1本(100g)
B かつおだし 200ml
しょうゆ 大さじ1・1/2
みりん 小さじ1
花かつお 1/2カップ(3g)
C 3コ
かつおだし 大さじ3
少々
菜の花 8本(90g)
にんじん(薄切り) 8枚
D かつおだし 200ml
薄口しょうゆ 大さじ1
ひとつまみ
干しシイタケ 4枚
E 干しシイタケの戻し汁 200ml
しょうゆ 大さじ1
砂糖 小さじ1
エビ(1尾20g位のもの) 4尾
ホタテ貝柱(冷凍・中) 4コ
  しょうがのしぼり汁 小さじ1
しょうゆ 大さじ1
うずら卵(茹で) 4コ
紅しょうが(薄切り) 8枚

作り方

  1. 米は洗って、分量のかつおだしに1時間位浸水します。
  2. たけのこは小さめのいちょう切り、油揚げは油抜きをして細かめのみじん切りにし、たけのこと油揚げに(A)をまぶして10分間置きます。
  3. 1.に2.をのせて普通に炊きます。
  4. たけのこの硬い部分は5mm厚さの半月切り、穂先は縦に切ります。鍋に(B)を煮立ててたけのこを汁がなくなるまで煮含めて、花かつおをもみながら入れてまぶします。
  5. (C)を混ぜ合わせて卵焼きを作り、ひさご形にします。12等分にします。(ひさご型ではさむ)
  6. 菜の花は3等分にし、茹でて水に取ります。にんじんは花形に抜き、茹でて水に取ります。水気を切った菜の花と共に(D)に浸けます。
  7. 干しシイタケは洗ってから、水でゆっくり戻します。軸を取って鍋に入れ、(E)を加えて汁気が少なくなるまで煮ます。
  8. エビは背ワタを取って塩と酒(分量外)を振ってもみ洗いをし、塩茹でしてから殻をむきます。
  9. ホタテは碁盤目に切り込みを入れフライパンで焼きながら、しょうがじょうゆを塗ります。
  10. 釜に3.のたけのこご飯を盛り、4.~9.、うずら卵、紅しょうがを添えます。

高齢者の食生活のポイント

長生きして本当に良かったと思えるような老齢期を送るためには、精神的な豊かさとともに、健康でなくてはなりません。健康を維持するための基本は、やはり食生活です。高齢者は加齢とともに、身体機能の低下、社会的、経済的自立の低下、気力の低下などが起こり、病気にかかりやすくなります。また、長い間の家庭環境や生活条件が異なるために個人差が大きくなり、低栄養が問題になる人が増加する一方、過剰栄養が心配される人もいます。そのため高齢者の食生活は、個々の身体機能に見合った栄養量の確保と、心理的、社会的、経済的特徴も考慮する必要があるといえます。

体の特徴と栄養

年をとると細胞数の減少により、臓器や組織の萎縮や重量が減少して身体諸機能が低下し、いわゆる老化現象が起こります。特に感覚機能,咀しゃく機能、えん下機能、代謝機能の低下が著しくなります。食生活に由来する影響が大きく、食物を摂取しても栄養として利用する効率が悪くなり、栄養不足による栄養失調や病気にかかりやすくなります。また、老化現象の進行は個人差が大きく出ます。

感覚機能の低下

  • 視覚、味覚、聴覚、臭覚、触覚

消化吸収機能の低下

  • 咀しゃく機能、えん下機能、消化管による運動機能、消化液の分泌低下

その他身体機能の変化

  • 体内水分が減少し、脱水症になりやすい
  • 骨量の減少
  • 夜間排尿回数の増加
  • 糖利用の低下

予備力や適応力の低下

複数の疾病にかかる人の増加

高齢者に多い病気と食生活

脳卒中(脳血管障害)

血圧を上げないように薄味(塩分の適正)とします。次に老齢者は食が細くなりがちですが、充分なたんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維の摂取と適切な脂肪量の摂取、栄養のバランス、アルコールを控える食生活が大切です。障害により長期間不自由な生活を送る人には、介護食を与えなければなりません。

老人性骨粗しょう症

カルシウム吸収率の高い牛乳や乳製品の摂取と、栄養のバランスをとることです。また、ビタミンDを多く含むさんま、いわし、さばなどをとることも効果的です。この他、骨を丈夫にするためには体を動かし、骨に負荷をかけてやることや日光浴も大切です。

鉄欠乏症貧血

充分な食事摂取と動物性たんぱく質、鉄分の多い食品、吸収を促進するビタミンCを多く含んだ野菜を積極的にとることです。また、鉄の吸収を阻害するお茶や加工食品にも注意が必要です。

脱水症

食事量を多く、水分の多い食事を心掛ける必要があります。

認知症

食事だけでは改善できないものですが、よくかむ事や、血流をよくし血栓予防に効果のあるタウリン、DHA、EPAを多く含む青魚をとり、高血圧や動脈硬化を防ぐために減塩や加工食品のとりすぎに注意が必要です。また、ビタミンB1も脳障害に関係が深いと言われています。

では、今回は低栄養にならないためのメニュー作りについてお伝えします。
年をとるにつれ、生理機能の低下や食事の減少などにより、低栄養になる傾向があります。一般的には、80歳以上になると、ほとんどの人が低栄養になるといわれ、高齢者の低栄養は大きな問題点となっています。

低栄養になる原因

  1. 年とともに消化吸収力が落ちる、消化液分泌量が減ってくるなどの身体機能の低下が原因となります。
  2. 1人暮らし、家に閉じこもりがちな生活、寝たきりなど、体が思うように動かないことによる食欲不振や単調な食生活も原因となります。
  3. 植物性食品を中心とした食事嗜好や、煮物などに偏った単調な料理法、入れ歯や虫歯によるやわらかい糖質主体の食べ物を中心に食べてしまうという傾向も低栄養に拍車をかけているのが現状です。

低栄養を予防するために

  1. 低栄養の人ほど寿命が短く、老化の進行が早いといわれています。低栄養にならないための基本は、充分なエネルギーと不足栄養素の確保です。
  2. 食事は栄養のバランスを考えて食べるようにします。毎食ごとに主食、主菜、副菜を揃えましょう。
  3. 高齢になるとともに、副食(おかず)中心の食事を心掛けます。
  4. 量より質を考えます。
    • 老化を遅らせるのは栄養の質です。
    • 少量で栄養価の高い料理を食べましょう。
    • 牛乳、チーズなどの乳製品、豆腐、魚、卵などをとるようにします。
    • たんぱく質、ビタミン(特にA、B2)、ミネラル(特にカルシウム、鉄)などの栄養素を多く摂取します。
  5. 高齢者になっても肉、油は大切です。毎日適量とるようにしましょう。
  6. 献立と料理に工夫を凝らします。
    • 単調な料理を改善し、食品数を多く利用した料理を作ります。(1日25~30種類の食品を目安に)
    • 料理は単に味(味覚)だけではなく、美しく、香りよく、かたさ、口当たり、歯ごたえ(テクスチャー)や適温を考慮して、食欲を増進させます。
    • 旬の味や懐かしい味、嗜好、行事食、郷土料理も取り入れます。
    • 少量のアルコールは食欲を増進させる効果があります。有効的にアルコールを活用します。
    • 食事に楽しみを増やすために間食(デザート1品)を用意します。
    • 食べやすく(個人の身体状態に合わせて)調理します。
  7. 毎日積極的に体を動かすことは食欲を増します。
  8. 食事が充分に食べられるように、歯の治療や義歯を入れて噛む力を高めます。
  9. テーブルクロスや食器などに季節感を出す等、食環境を楽しく、豊かに整えることが大切です。

振り返って良い人生だったと思える人生であるよう、本人だけでなく周りの人々もしっかりとサポートしたいものです。

お弁当作りを楽しむ
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