文化講座
第1回:夏の名残りを楽しむ和の献立~九谷焼のテーブルコーディネート~
前シリーズでは「お弁当の作り方」と題し、毎日のお弁当作りが楽しくなるコツと旬のお弁当レシピをご紹介しました。
今シリーズでは、和食・中華・フレンチ・イタリアンなど、毎月テーマを決めて、家庭でも手軽に作る事ができるコース料理のレシピをとっておきのテーブルコーディネートとともにご紹介します。12回シリーズを終えた頃には、きっと「おもてなしの達人」と呼ばれることでしょう。
第1回目のテーマは「夏の名残りを楽しむ和の献立」
暦の上ではもう秋を迎えますが、まだまだ厳しい暑さが続いている今日この頃。こんな時こそ、涼を感じながら残暑を楽しむ献立でスマートにおもてなししたいものです。第1回目の今回は、おもてなしの心と暑い季節に喜ばれる料理をご紹介します。
★「おもてなし」とは
「もてなし」という言葉は、「モノを持って成し遂げる」という語源からきています。では、お客様をもてなすためには、何が必要でしょうか。もてなしには、目に見えるもの(モノ)と目に見えないもの(コト)の2種類が必要とされています。まず、目に見えるものとして料理があります。その料理を盛り付ける器やテーブルコーディネートも重要です。花を飾ったり、その時に着ている洋服などのすべてが入ります。一方、コトとは接客やマナーなど、その時の会話や気持ちのことをいいます。わかりやすく言えば、「思いやりの心」です。もてなしのもうひとつの語源とされている「裏表なし」からもわかるように、裏表のない心で誠心誠意相手に尽くすということが肝心です。このモノとコトの両方が合わさって、最高のおもてなしが完成するのです。
★暑い季節に喜ばれる料理とは
食欲が低下しがちな暑い季節。どうしたらおいしく食べてもらえるか、食べる人を想いながら献立を考えることがおもてなしの極意です。
<温度について>
暑い時には、やはり冷たいものが食べたくなります。多少食欲がなくても、ひんやりとして口当りの良いものだと食べやすくなります。しかし、冷たすぎるものは体を冷やし、食欲不振を悪化させる原因になるので注意しましょう。
料理を作る人としては、火を使わない料理があるととても便利です。火を使わずに短時間でできる料理が一品あると、時間と気持ちにゆとりができ、おもてなしを楽しむことができます。おもてなしは、相手はもちろんですが、自分自身も楽しむことが大切です。
<色について>
美しい彩り、涼しげな色を選びましょう。見た目が美しいと食欲をそそります。料理に色が足りない時には、盛り付ける食器を工夫すると良いでしょう。
<量について>
暑い時は、食事にあまり時間をかけたくないものです。品数が多い献立より、一皿でパパッと手軽に食べられるものが、食べる人も作る人もうれしいですね。栄養が偏らないように、一日の献立のバランスをみながら考えましょう。
以上のポイントをふまえ、今回ご紹介する和食のコース料理はこの3品です。
夏の名残りを楽しむ和の献立

火を使わない料理。あらかじめ用意しておく場合は、テーブルに出す直前に調味料と和えると水分が出ません。香味野菜の色と香りが涼しげです。
材料 | 4人分 |
マグロ(刺身用) | 250g |
青じその葉 | 5枚 |
セロリ | 70g |
玉ねぎ | 1/4コ |
(A) | |
しょうゆ | 大さじ2 |
溶きからし | 小さじ2/3~1 |
うまみ調味料 | 少々 |
作り方
- マグロは1cm角位に切ります。
- 青じその葉はせん切りにします。
- セロリは皮むき器で皮をむき、斜めにごく薄切りして水にさらします。玉ねぎも同様にごく薄切りにし、水にさらします。
- (A)をよく溶き合わせ、1.~3.を加えて和えます。

彩りが美しく、食欲をそそります。具だくさんでボリュームがあるため、満足感を得られる一皿です。
材料 | 4人分 |
茶そば(乾麺・又は日本そば) | 360g |
サラダ油 | 適宜 |
牛平切り肉 | 240g |
塩 | 小さじ1/4 |
こしょう | 少々 |
卵 | 2コ |
塩 | 少々 |
万能ねぎ | 12本 |
レモン | 1/2コ |
大根 | 160g |
紅しょうが | 適量 |
糸のり | 適量 |
(A) | |
出し汁(濃) | 600ml |
みりん | 大さじ2 |
しょうゆ | 大さじ2 |
塩 | 小さじ1強 |
作り方
- そばはたっぷりの熱湯で少し固めにゆでて水にとり、もみ洗いしてザルに上げます。
- フライパンに油をしき、牛肉を炒めながら軽く塩、こしょうをふります。
- 卵は薄焼きにしてせん切りにします。
- 万能ねぎは小口切り、レモンは半月形の薄切りを、1人3枚を目安にカットします。
- 大根は皮をむき、すりおろします。ザルに上げて水気を軽くしぼります。
- 器に1.を盛り、2.~5.、紅しょうが、糸のりを散らします。
- (A)を煮立ててつゆを作り、6.にかけます。

美しい黄緑色が涼を感じさせてくれます。食後に甘いものがあるとホッとします。
材料 | 4人分 |
枝豆(国産・さや付き) | 400g |
(A) | |
砂糖 | 1/2カップ弱 |
塩 | 少々 |
水 | 大さじ1 |
(B) | |
白玉粉 | 120g |
水 | 120ml |
作り方
- 枝豆は多めの塩を入れた熱湯で柔らかくなるまでゆで、さやから出して薄皮をむきます。
- 1.をフードプロセッサーにかけます。(又はすり鉢でしっかりすります)
- 2.に(A)を加えてさらに混ぜ、少しずつ水を加えて混ぜます。
- (B)を手で練り合わせ、1人5コを目安に丸めます。
- 4.を熱湯でゆで、水にとります。
- 5.の水気をふいて3.のあんをからめ、器に盛ります。
★とっておきのテーブルコーディネート

白・黄・緑を基調とした九谷焼を使ったテーブルコーディネートです。さわやかな涼を感じつつも、残暑を表現できるのは、力強く重厚な味わいの九谷焼ならでは。少しの黄色がわずかな秋の気配を感じさせてくれる、まさに今の季節にふさわしいテーブルとなりました。
■九谷焼とは
石川県で焼かれる陶磁器です。九谷焼は肥前の柿右ヱ門、京都の仁清と共に徳川時代の初期に興り、日本の上絵磁器の三大源流をなすものです。江戸時代初期、大聖寺藩領内の九谷村で色絵磁器生産を始めたのが九谷焼の原点です。その特徴は、開窯から約50年間に作られた「古九谷」と、一時途絶えた後に復活した「再興九谷」以降に分けられます。古九谷の大胆な図柄と独特の美意識は世界的にも大きな評価を得ています。
■九谷焼蔵元(菁華窯(せいかがま))

菁華窯の玄関にて 2010年4月撮影
明治23年(1890年)開窯の九谷焼窯元。 初代が魯山人に陶芸の手ほどきをしたことで知られ、現代は四代目の須田菁華さんが技を受け継いでいます。