文化講座
第8回:~夜桜を愛でるテーブル~
前シリーズでは「お弁当の作り方」と題し、毎日のお弁当作りが楽しくなるコツと旬のお弁当レシピをご紹介しました。
今シリーズでは、和食・中華・フレンチ・イタリアンなど、毎月テーマを決めて、家庭でも手軽に作る事ができるコース料理のレシピをとっておきのテーブルコーディネートとともにご紹介しています。12回シリーズを終えた頃には、きっと「おもてなしの達人」と呼ばれることでしょう。
第8回目のテーマは「夜桜を愛でるテーブル ~友と人生について語り合う~」
~清水へ祇園をよぎる桜月夜 今宵逢ふ人みな美しき~
与謝野晶子が歌った名歌です。夜更けの桜というものは格別に美しいもの。宇宙の美を感じさせるこの花の魅力は、その小さな花びらにあります。桜が舞い散るのは、私たちの運命のひとひらかと、静かにも舞い散る花びらに、身を託してしまう春の宵。満開の美をただ一瞬だけ心に止めて、散りゆく桜を眺めていると、どうしようもない寂寥感に襲われたりもします。そんな花冷えの季節には、心合う友とお互いの人生について語り合いたくなるものです。今月は、友と夜桜を愛でながら、しっとりと語り合うテーブルをご紹介します。お花見の席で、お酒と会話がすすむ料理2品と、テーブルコーディネートを楽しむ上で必要なアイテムである食器についても取り上げます。
★テーブルコーディネートの楽しみ方
■必要なアイテム(道具)
今号までに、リネンとフィギュアについてご紹介しました。今回は基本の食器を取り上げます。
<食器>
揃えたい食器の種類(プレート類)
洋食器のパーソナルアイテムとして、ディナー皿・デザート皿・スープ皿・パン皿・カップ&ソーサーの5ピースを揃えましょう。これだけあれば家庭でフルコースディナーを楽しむことが出来ます。
(1)ベースプレート・位置皿(直径30cm)
アンダープレート、プレースプレート、サービス皿などとも呼ばれます。最初からセッティングされてあり、座る位置を決めるためのお皿で、それぞれの席の中心に置かれます。
(2)ディナー皿(直径27cm)
最もよく使う皿。前菜、主菜それぞれの一品料理を盛り付けるときに使用する皿です。
絵柄が少なくシンプルなものを用意しておくと、どんなコーディネートにも活躍してくれます。
(3)サラダ / デザート皿(直径21cm前後)
サラダやケーキだけではなく、朝食用などにも使用できます。ディナー皿の上に、このサラダ皿をのせます。
ディナー皿と2枚重ねたままで、サラダやオードブルをいただく場合もあります。
(4)パン皿(16cm前後)
カジュアルな食事では省略してもかまいません。取り皿としても使用できます。
(5)スープ皿(直径20cm前後・または「シリアルボウル」でも良い)

(5)
深さがあるので、スープだけではなく、シチュー(煮込み料理)やパスタにも使えます。
ディナー皿と重ねて使うと豪華なので、できれば同じパターンのものをおすすめします。
※「シリアルボウル」=直径15cm前後。深さは4cmくらいのものが便利です。
シリアル(コーンフレーク)にはもちろん、スープ、サラダにも使用できます。
ムースやババロアなどのやわらかいデザートやアイスクリーム、シャーベットを盛るのにもおすすめです。
(6)カップ&ソーサー

(6)紅茶用
ソーサーとパン皿を兼ねているものがあります(へりのないもの)。お皿と同じパターンで揃えなくても良いでしょう。紅茶用とコーヒー用とがあり、コーヒーカップ&ソーサーはティーカップ&ソーサーより口が狭く、縦長です。最近は紅茶とコーヒーの兼用カップが一般的です。
お花見膳
桜を愛でながら、ゆったりと堪能したい料理をご紹介します。
アサリの旨味と新タケノコとフキの食感が楽しいごはんです。
さわやかな春の香りが口いっぱいに広がります。
材料 | 4人分 |
アサリ(殻付) | 2パック(400g) |
酒 | 大さじ3 |
水 | 大さじ3 |
米 | 2カップ |
昆布だし | 450ml |
フキ | 1本 |
新タケノコ(ゆで) | 中1本(200g) |
(A) | |
しょうゆ | 大さじ1・1/2 |
塩 | 小さじ1/3 |
貝の蒸し汁 | 100ml |
木の芽(あれば) | 適宜 |
作り方
- アサリはきれいに洗います。
- 鍋に1.を入れて分量の酒と水を振り入れ、ふたをかけて蒸し煮し、身を取り出します。蒸し汁は残しておきます。
- 米を洗い分量の昆布だしに1時間くらいつけておきます。昆布だしは昆布10㎝を約600mlの水に浸けたものを使用。
- フキは適当な長さに切ってまな板に並べ、塩をたっぷり振って手のひらで押さえながら転がして塩をなじませます(これを板ずりといいます。ゆで上がりの色が鮮やかになり、皮がむきやすくなります)。塩をつけたまま熱湯でゆで、皮をむいて小口切りにします。
- タケノコは小さめのいちょう切りにし、(A)で下味をつけます。
- 3.に冷ました貝の蒸し汁と5.のタケノコを汁ごと加えて炊きます
- 火が切れたところでフキとアサリの身をのせ、10分間くらい蒸らします。
- さっくりと混ぜ合わせ、器に盛って木の芽を散らします。
もっちり上品な口あたり。
お酒もごはんもすすみます。
材料 | 4~6人分 |
吉野くず | 70g |
昆布だし | 500ml |
(A) | |
ねりごま | 60g |
うすくちしょうゆ | 小さじ1弱 |
酒 | 大さじ2 |
塩 | 小さじ1/3 |
(B) | |
昆布だし | 100ml |
うすくちしょうゆ | 小さじ1 |
酒 | 小さじ1 |
みりん | 小さじ1 |
酢 | 小さじ1 |
紫菊(食用菊) | 20g |
〈昆布だし〉 作りやすい分量 |
|
日高昆布 | 1・1/2枚(15g) |
水 | 1600ml |
作り方
- ボウルに吉野くずを入れ、昆布だしを少しずつ加えながら塊をほぐして溶かします。
- 1.を鍋に漉し入れて(A)を加え、よく混ぜながら火にかけます。
- 2.が沸騰したら、中強火で5~10分間程度練ります。
- 3.をぬらした流し缶に入れ、まずは水に浮かべて10分間程度冷やします。
- 4.に氷を入れて20分間程冷やし固めます。
- 小鍋に(B)を煮立ててかけづゆを作り、冷やします。
- 6.から大さじ1程のつゆを取り、分量の酢を加えてゆでた菊を浸します。
- 切り分けた5.を器に盛り、6.のつゆをかけ、軽く絞った7.の菊を添えます。
〈昆布だしのとりかた〉
昆布をサッと洗って分量の水に浸け、冷蔵庫に1晩おいてじっくりとうまみを引き出します。
★とっておきのテーブルコーディネート

心合う友とじっくり語り合う席にふさわしく、畳を敷いて落ち着いた和のコーディネートに仕上げました。中心には高さのある桜の枝を活け、上から淡いピンクの花びらがひらひら、ひらひらと舞い落ちます。黒のお膳が花びらのピンクを一層美しく引き立て、幻想的な雰囲気に。花びらの形の箸置きや小皿をあしらい、お花見気分を盛り上げましょう。日本人の心を映したような、しっとりとして格式高いテーブルが完成しました。
畳に座ってお膳でゆったりくつろぐ
十二角の李朝膳に桜の花をあしらった竹かごを置き、酒肴を盛りこむ小さな器たちを入れました。
しだれ桜が描かれた和ろうそく

キャンドルスタンドを置いて、静かに灯りを楽しみましょう。
小さな灯りは心を癒してくれます。