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インターネット公開文化講座

文化講座

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世界の長寿食

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第5回:「韓国の長寿食」について学びます。

前シリーズでは「日本食って素晴らしい!」と題し、日本食の代表である「天ぷら」「寿司」「餅」「蕎麦」など、国内外で人気のある日本食についてご紹介してきました。

今シリーズは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいります。

第5回目のテーマは、「韓国の長寿食」です。

WHO(世界保健機関)が発表した2022年世界の長寿ランキングによると、韓国は世界第3位、平均寿命83.3歳の国です。韓国の人々はどんな料理を食べているのでしょうか?

※ちなみに世界全体の平均寿命は73.3歳、世界最長寿の国は日本で、平均寿命は84.3歳です。

韓国の概要

面積:100,200km2(日本の1/4)
人口:5,180万人(日本の2/5)
首都:ソウル
宗教:仏教:27%、キリスト教:24%、その他儒教、天道教
言語:韓国語(ハングル文字)


韓国の国旗

韓国ってどんな国?

韓国という名は通称で、正式には「大韓民国」と言います。
東アジアに位置する共和制国家で、以下のような行政区域に分かれています。
代表的な地域を紹介します。

特別市

ソウル特別市

大韓民国の首都であり、京畿地方に位置する特別市で、25の行政区でできています。人口は約941万人です。アジア最大級の都市であり、世界5位の都市圏人口と東京、ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ世界4位の都市圏経済力を有しています。


ソウルの夜景

広域市

釜山広域市

大韓民国南東部に位置する広域市です。朝鮮半島南東端に位置し、韓国の主要都市の中で最も日本の近くに位置しています。


釜山の街並み

特別自治市

世宗特別自治市

大韓民国中部に位置する特別自治市です。「行政中心複合都市」と呼ばれ、韓国の中央官庁が集積するニュータウンがあります。

特別自治道

済州特別自治道

大韓民国(韓国)本土南西部に位置する道で、済州島全体と牛島、馬羅島などの付属小島嶼からなります。国防や外交を除く多くの権限を持っている特別自治道です。


済州市と漢拏山

韓国の食文化の特徴

韓国の食文化は大きく3つの特徴があります。

  1. ごはんを主食とし、おかずと汁物を好んで食べます
  2. キムチ、塩辛などの発酵食品を食べます
  3. 料理はひとつの皿に盛り、取り皿は使わず、そのまま口に運んで食べます

スジョを使います

韓国の食事では、「スジョ」を使います。主に使うのは「スッカラク(さじ)」で「チョッカラック(箸)」はおかずをつまむときだけに使います。


筆者が現地で購入したスジョ

韓国料理のおいしさの秘訣

古来より伝わる5味(甘・辛・苦・酸・塩)と5色(白・赤・黒・黄・緑)を盛り込んでいます。
5味の役割を果たすのが「薬念(ヤンニョム)」と呼ばれる調味料や野菜です。

韓国と言えば「キムチ」

豊臣秀吉が朝鮮侵略の際に唐辛子を韓国に持ち込み、18世紀末頃からキムチ作りに使われるようになりました。
それまでは「ムルキムチ(水キムチ)」が主流で、山椒が辛味として使われていました。
キムチ=お母さんの味と言われるほど、韓国国民はキムチが大好きです。


市場に並ぶキムチづくりに欠かせない唐辛子

韓国ではキムチづくりのことを「キムジャン」と言います。キムジャンは韓国の人にとって、1年のうちで重要な行事のひとつです。
かつては、「キムジャン休暇」、「キムジャンボーナス」などを出す企業もあったほどですが、家庭での伝承が途切れているのが現状です。

韓国でキムチを習いました

良質の唐辛子を使い、魚醤やにんにく、しょうがを加えて薬念(ヤンニョム)を作ります。
塩漬けした白菜に薬念(ヤンニョム)を入れて白菜キムチのできあがり!


韓国でキムチを習っている筆者(2023年)


カクテキ
(大根キムチ)


オイソバギ
(きゅうりのキムチ)


エゴマのキムチ

食べ頃を逃さないことが、ポイント

食べ頃を逃して酸っぱくなってしまったら炒め物や煮物、チゲ(鍋料理)にしてください。
ごま油が酸味をやわらげ、すばらしい味付けになります。

キムチの博物館

仁寺洞にあるインサドンマルという複合施設には「ミュージアムキムチ間」(旧キムチ博物館)があり、キムチの伝統や歴史がわかりやすく映像で紹介されています。


ミュージアムキムチ間外観


各種キムチと筆者


各種キムチと筆者

韓国宮廷料理

李朝時代に王様が食べていた料理で、各地方から献上された最高の食材を使った料理です。
食材本来の味を生かした素朴な味で、彩りを考えて美しい盛り付けがしてあるのが特徴です。
韓国では、「机の脚が折れるほどの料理」という慣用句があり、「料理の数が多ければ多いほど良い」という意味です。
宮廷料理のフルコースでは、料理の数が30種類を超えるものもあります。


韓国宮廷料理「荘園」
テーブルいっぱいに宮廷料理が並びます


クジョルパン
八種類の具を巻く宮廷料理です
調理、撮影:伊藤華づ枝

韓定食

宮廷料理をより家庭的にアレンジしたものが韓定食です。
ご飯とチゲ(小さな鍋物)に、10~20種類のおかずやキムチなどの付け合せが出されます。
宮廷料理がやや薄味なのに対し、韓定食は比較的しっかりした味付けがしてあります。
野菜や豆、穀物をふんだんに使う、精進料理風の韓定食を出す店もありそのスタイルはさまざまです。

韓国の代表的な料理

ビビンバ

韓国語で「ビビン」は混ぜる、「パッ」はご飯という意味で、韓国の混ぜご飯です。
ビビンパともピピンバとも呼ばれ、丼や専用容器にご飯とナムルや肉、卵などの具を入れてよくかき混ぜて食べる料理で、コチュジャンやごま油などの調味料をかけ、スプーンでよく混ぜてから食べます。


石焼きビビンバ
調理、撮影:伊藤華づ枝

参鶏湯

ひな鶏の中に米、高麗人参、なつめ、栗、にんにく、しょうがなどを詰めて鶏が軟らかくなるまで、じっくり煮こんだ薬膳スープです。
薬膳料理や補身料理(ポシン料理・滋養食)ともされています。
韓国では夏バテ時の疲労回復としてよく食べられているため、「夏の料理」とされています。


参鶏湯
調理、撮影:伊藤華づ枝


スーパーや市場には参鶏湯の食材がずらりと並びます

韓国冷麺

韓国語では「ネンミョン」といい、そば粉をじゃがいものでんぷんでつなぎにした麺を使います。
冷やした肉スープに、水キムチの汁を合わせて作ったスープに具と麺を入れます。


冷麺
調理、撮影:伊藤華づ枝

パジョン(チヂミ)

韓国風お好み焼きのこと。
小麦粉・米粉・水・卵に適当な野菜(ニラ・タマネギ・ニンジン・ネギなど)を混ぜ合わせ、タネを作ります。これにキムチを加えると「キムチチヂミ」、イカや海老、カキ、ホタテの貝柱などの海産物を入れると「海鮮チヂミ」になります。
少量の油でパリッと仕上げるのがポイントです。


海鮮チヂミ
調理、撮影:伊藤華づ枝

チャプチェ(雑菜)

柔らかく戻した唐麺(タンミョン)と呼ばれる春雨と、細切りにした牛肉とタケノコ、同じく細切りにしたニンジン、タマネギ、ホウレンソウ等の野菜、シイタケやシメジ、キクラゲ等のキノコ類をゴマ油で炒め合わせ、醤油、食塩、砂糖等で甘辛く味をつけた料理です。


チャプチェ
調理、撮影:伊藤華づ枝

ナムル

家庭料理のひとつで、もやしなどの野菜やゼンマイなどの山菜、野草を塩ゆでしたものを調味料とゴマ油で和えたもの、あるいは生のままの野菜や山菜などもナムルといいます。


ネギのナムル
調理、撮影:伊藤華づ枝

ケランチム

韓国風の茶碗蒸し。石鍋に卵とあみの塩辛を入れ、直接火にかけて作ります。
韓国語で「ケラン」は「鶏卵」、「チム」は「蒸し(物)」を意味しています。


ケランチム
調理、撮影:伊藤華づ枝

韓国料理の特徴と栄養素

韓国料理には野菜や発酵食品を使うことが多く、以下のような特徴があります。

野菜たっぷり

韓国料理には上記で紹介したように野菜を使った料理が多いことが特徴です。
世界的にみても野菜の摂取量は多く、世界第3位で1日平均摂取量は584.63gです。日本の1日の野菜摂取量269.2gと比べると2倍以上の野菜を摂取していることがわかります。
韓国料理で特によく使われる野菜には以下のような栄養素があります。

白菜

ビタミンCや葉酸などのビタミン類、カリウムやカルシウムなどのミネラル、食物繊維が含まれています。

もやし

エネルギー代謝に欠かせないビタミンB1やビタミンB2、免疫力を高める効果があるビタミンC、高血圧予防に効果的なカリウムなどが豊富です。

ほうれん草

野菜の中で鉄分が最も多く、鉄分の吸収を助けるビタミンCも豊富に含まれています。
カロテン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCなどのビタミン類も多く、さらに葉酸、食物繊維も豊富なので、とても栄養価の高い野菜です。

にんじん

β-カロテン、カリウム、食物繊維、葉酸、ビタミンCが多く含まれており、とても栄養価の高い野菜です。

発酵食品

韓国ではキムチ、テンジャンやコチュジャン、チョングッチャンといった味噌類など多くの発酵食品を使います。

テンジャン

大豆を醗酵させて作る発酵食品です。テンジャンは鍋や汁物にも多く用いられ、豆腐、唐辛子、エホバク(ズッキーニに似たカボチャの一種)、ネギ、キノコ、肉、貝などとともにチゲに入れてテンジャンチゲ(味噌鍋)にしたりします。
テンジャンはフラボノイドのほかビタミン類、ミネラル類を豊富に含んでいます。

コチュジャン

もち米麹と唐辛子の粉などを主な材料とする韓国の発酵調味料です。ビビンバを食べる際の必需品であるほか、鍋物や煮物、炒め物、和え物から薬味などにも用い、そのまま生野菜につけたり直接飯に混ぜ込んで食べたりもします。用途がきわめて広く、頻繁に用いられるため、日常の食事に欠かせない調味料です。

チョングッチャン

韓国料理に使われる、発酵させた大豆のペーストのことです。チゲを作るのによく用いられます。ビタミン等の栄養素を多く含み、特に冬の健康食と考えられています。

今回は、韓国料理の代表的な家庭料理である野菜を多く使った「チャプチェ」とキムチを使った「たっぷりキャベツのポークチゲ」を紹介します。

チャプチェ
~雑「チャプ」は混ぜ合わせる、菜「チェ」はおかずという意味~

チャプチェ
料理作成・撮影:伊藤華づ枝

材料 4人分
韓国春雨(乾燥) 200g
牛肩ロース薄切り肉 200g
A しょうゆ 大さじ4・1/2~5
大さじ1・1/2
砂糖 大さじ3~4
しょうが(すりおろし) 小さじ1強
にんにく(すりおろし) 小さじ1/2強
しめじ 1パック(100g)
赤パプリカ 1/2コ(100g)
万能ネギ 80g
むきエビ 8尾(90g)
  少々
黒こしょう 少々
サラダ油 大さじ1
B ごま油 大さじ2
サラダ油 大さじ1
しょうが(せん切り) 10g
少々
黒こしょう 少々
白いりごま 大さじ2
ごま油 適量
1コ

作り方

  1. 韓国春雨は沸騰した湯で、6~7分間茹でて戻します(食べて芯がなくなるくらい)。水に取ってもみ洗いし、水気を切ってざく切りにします。
  2. 牛肉は細切りにし、(A)をもみ込みます。
  3. しめじは石突きを取って2~3本ずつにほぐし、パプリカは種を取って細切り、万能ねぎは4cm長さに切ります。
  4. エビは背ワタを取り、塩と酒(分量外)でもみ洗いし、水で洗います。熱湯で茹で、ザルに上げて塩とこしょうで調味します。
  5. フライパンに油を敷き、4.のエビを焼き付けて一旦取り出します。
  6. 5.のフライパンに(B)を足し、しょうがをじんわりと炒め、しめじを加えて更に炒めます。
  7. 6.に2.を入れて炒め、肉の色が変わったら赤パプリカとねぎを入れ、1.を加えて炒め合せます。味をみて塩とこしょうで調味し、5.のエビを戻し入れて、ごまを混ぜます。仕上げにごま油をかけます。
  8. 卵は薄焼きにし、せん切りにします。
  9. 器に7.を盛り、その上に8.の錦糸卵をのせます。

たっぷりキャベツのポークチゲ

たっぷりキャベツのポークチゲ
料理作成・撮影:伊藤華づ枝

材料 4人分
豚薄切り肉(ロース) 150~200g
キャベツ 200g
しめじ 1パック(100g)
えのき茸 1/2袋(100g)
ニラ 1束(100g)
ねぎ 1本(80g)
木綿豆腐 180g(1/2丁)
アサリ 200g(18粒)
ごま油 大さじ1
しょうが(せん切り) 1かけ
にんにく(せん切り) 小1かけ
A 800ml
コチュジャン 小さじ2
大さじ2
しょうゆ 大さじ2
白菜キムチ 150g
小さじ1/2
韓国唐辛子(あれば) お好みで

作り方

  1. 豚肉とキャベツはざく切りにします。
  2. しめじとえのき茸は石づきを取ってほぐし、ニラは4等分長さ、ねぎは斜め切りにし、豆腐は8等分にします。
  3. アサリはよく洗います。
  4. 熱した土鍋又はフライパンにごま油を入れ、しょうがとにんにくを炒めます。
  5. 4.に(A)を入れます。
  6. 5.が煮立ったら豚肉、キムチ、アサリ、野菜、豆腐を加え、アサリの口が開くまで煮ます。
  7. 6.の味を見ながら、塩で味を調えます。
  8. お好みで唐辛子を振って食べます。
世界の長寿食
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