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インターネット公開文化講座

文化講座

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日本食って素晴らしい!

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第5回:「餅」について学びます

前シリーズでは「私は麺食い人!」と題し、日本独自の発展を遂げたラーメンを始め、アジア各国の食文化ともつながりの深い麺料理など、バラエティに富んだ麺料理をご紹介しました。
今シリーズでは、「日本食って素晴らしい!」というテーマで、日本食の代表である「天ぷら」「寿司」「餅」「蕎麦」など、国内外で人気のある日本食についてご紹介いたします。
「和食」がユネスコ無形文化遺産になって来年で10年目を迎えます。普段、私たちが食べている「日本食」の素晴らしさを一緒に再確認していきましょう。

第5回目のテーマは、「餅のルーツと雑煮」

「もういくつ寝るとお正月~♪」
そろそろ年末の足音が聞こえてくる季節になりました。
正月と言えば、お節料理と雑煮でしょう。
今回は日本の行事に欠かせない「餅」について紹介します。

餅の歴史

餅の歴史のはじまりは、縄文時代からと言われています。縄文時代に中国から稲作と一緒に餅が伝わりました。
季節の節目や縁起のよいものとして食べられるようになったのは平安時代からと言われ、1000年以上も前から餅は日本人の節目の食べ物として根付いています。
餅が縁起のよいものとして食べられるようになった理由は、日本人の稲作信仰と呼ばれる考え方があり、植物の稲にも霊魂が宿ると信じられていたからです。これらの霊魂を人が食べることで、生命力などの力を得ているという考え方です。正月などの「ハレの日」の行事には餅は欠かせない食べ物となっています。

日本人と餅

餅博士の藤田秀司氏の書物によると、秋田県の1軒の農家では、1980年代頃には1年に37回もの餅をついていたといいます。13節句・里帰り・干し餅・あられ餅・八十八夜草餅・歯固め餅・地蔵祭り・稲荷餅・天狗餅・迎え餅など、家族の記念日や神仏のお供えとして生活に根付いていました。

餅の種類

餅には、粒状のもち米を蒸して杵でついた「搗き餅(つきもち)」と、穀物(うるち米、アワ、キビなど)の粉に湯を加えて練り蒸しあげた「練り餅(ねりもち)」があります。
次の表に具体的な餅を紹介します。日本では地域や季節・行事に餅が密接に関係していることがわかります。

  つき餅(もち米) ねり餅(うるち米) その他(小麦粉、でんぷんなどを用いた餅)
穀粒 のし餅
丸餅(鏡餅)
草餅
安倍川餅
うぐいす餅
ずんだ餅
あられ
おはぎ・ぼたもち
五平餅
きりたんぽ
<小麦粉>
焼皮桜餅(長命寺)
くず餅
<でんぷん>
葛餅
わらびもち
<その他>
麩餅
穀粉 桜餅
羽二重餅
白玉もち
求肥
せんべい
団子(みたらし、花見、月見など)
ちまき
柏餅


桜餅(写真:伊藤華づ枝作)


五平餅(写真:伊藤華づ枝作)


よもぎ入りおはぎ(写真:伊藤華づ枝作)

美しい緑とよもぎの香りを楽しめる「よもぎもち」から紹介します。

よもぎもち

よもぎもちは、餅によもぎを混ぜたものです。
よもぎの若芽には特有の爽やかな香りがあり、それが珍重されます。春先の和菓子を代表するものの一つとなっています。
よもぎには邪気を払う力があり、食べると寿命が延びるという考え方から3月3日の桃の節句に用いられるようになりました。

よもぎもち

よもぎもち

材料 40~42コ分
もち米 1升(9カップ分)
よもぎ(正味) 250~300g
重曹 小さじ1/2位
※粒あん
  小豆 300g
上白糖 300g
小さじ1/4
もち粉(手粉) 適宜

作り方

  1. もち米は1晩水に浸けます。
  2. よもぎはやわらかい部分のみを使用し、熱湯に重曹を入れて茹でます。少し水に晒して粗切りにします。
  3. 1.をザルに上げて30~40分程蒸します。
  4. 3.をもちつき機かパンこね機に入れて、粒がなくなるまで混ぜます。
  5. 4.が8分通り混った時点で、水気をしっかりしぼった2.のよもぎを入れて更に混ぜます。
  6. 水を付けた手でもちをちぎり(40g位)、もち粉を広げたバットの上に並べます。
  7. 約30g位に丸めておいた粒あんを、6.のもちで包みます。
  8. そのまま食べても、2~3日後に固くなったものをオーブントースターで焼いて食べるのもおいしいです。
    ※固くなってから冷凍するとよいです

※粒あんの作り方

  1. 小豆は洗い、水に浸して30分間ぐらいおきます。
  2. 1.を火にかけて煮立ったらザルに上げ、冷たい水で洗います(びっくり水)。これをもう1回繰り返します。
  3. 2.に3~4倍の水を加え、煮立ったら弱火にし、小豆が柔らかくなるまで水をさしながら煮ます。
  4. 3.に砂糖を2~3回に分けて入れ、最後に塩を加え、木しゃもじのあとが出来るまで練り上げます。
  5. 4.をすりこ木でつぶしながら練り、バットに広げて冷まします。(約900gの粒あんが出来上がります)

<圧力鍋の場合>1.2.5.は上記通り

  1. 2.に水1200~1500mlを加え火にかけ、沸騰したらフタをし圧力がかかってから20~25分ゆでます。
    圧が抜けたらフタを開け、ザルに上げて水気を切り、砂糖を2~3回に分けて入れ、最後に塩を加え、しゃもじのあとが出来るまで練り上げます。

次に雑煮について紹介します。正月と言えば「雑煮」です。

雑煮とは

雑煮(ぞうに)は、餅を主な具とし出汁に醤油や味噌などで味付けしたつゆをはった日本料理です。
日本では正月に多く食べられ、地域や家庭によって食材が異なります。
正月に訪れる「年神様」をお迎えするために大みそかにお供えしておいた餅や野菜を、翌日の正月に雑煮にして食べていたことが起源です。つまり雑煮とは、神様にお供えした雑多なものを煮るという意味と捉えてよいでしょう。

全国の雑煮

雑煮には全国各地の文化があります。餅の形状は角餅なのか丸餅なのか、味噌仕立てなのか済まし汁なのかを中心に、それぞれ特徴のある雑煮があります。代表的なものを紹介します。

愛知県

質素倹約を旨とした徳川家康の出身地だけあって、実に質素です。角餅は煮て用い、すまし汁仕立てにします。「餅菜(小松菜の一種)」を入れるのは「名を挙げる」に通じています。

長野県木曽郡

かつては富山湾で揚がったブリは、飛騨高山から野麦峠を越えて届けられました。そのため信州信濃地方の人々にとって正月に食べる塩ブリはご馳走であり、雑煮の主役も塩ブリです。すまし汁仕立で、焼角餅、塩ブリ、焼豆腐、大根、にんじん、ごぼう、わらび、ぜんまいが入っています。

京都

餅は丸餅で焼かずにそのまま西京味噌の汁の中に入れて煮込み、食べる際にはかつお節を振り掛けます。
争い事がなく物事が丸く収まるようにと具は丸く切ります。

正月に雑煮を食べない地域もある

正月に餅を食べない「餅なし正月」を過ごす地域があります。餅なし正月の由来としては、先祖が戦いに敗れて落ち延びた、あるいは戦いの最中が正月で餅の用意も出来なかったということがあり、その苦難を偲ぶために子孫は正月に餅を食べないといういわれを持つことが多いようです。
福島県、長野県、愛媛県、和歌山県、岡山県などでその風習が残っています。

雑煮

雑煮

材料 4人分
餅菜(又は小松菜) 160g
紅かまぼこ 1/3板
鶏もも肉 100g
干ししいたけ 4枚
A かつおだし汁+しいたけの戻し汁 800ml
みりん 大さじ1
薄口しょうゆ 大さじ3
切り餅(大) 4切れ
花かつお 適量

作り方

  1. 餅菜は茹でて4~5㎝長さに切ります。
  2. かまぼこは適当な大きさに切ります。
  3. 鶏肉は8等分に切り、サッと熱湯を通します(霜降りにしておくと雑煮の汁が濁りません)。
  4. しいたけは水で戻します。
  5. (A)を鍋に入れて煮立て、3.と4.を共に煮ます。ここまでを大晦日(12月31日)に準備しておきます。
  6. 正月当日は5.を煮立てて1.と餅を入れ、サッと煮ます(もちはこんがり焼くか、電子レンジで火を通しても良いでしょう)。椀に盛り、かまぼこと花かつおを添えます。

雑煮、焼き餅、ぜんざいなど、餅を使った料理は数多くありますが、アレンジレシピとして「餅とキムチの春巻き」を紹介します。

餅とキムチの春巻き

餅とキムチの春巻き

材料 10本分
白菜キムチ 200g
豚肩ロース肉(薄切り) 130g
ごま油 大さじ1・1/2
もやし 1/2袋
片栗粉 大さじ1・1/2
春巻きの皮 10枚
餅(しゃぶしゃぶ用) 10枚
小麦粉のり 適宜
揚げ油 適宜

作り方

  1. キムチはザルに上げ、軽く水気を切ります。
  2. 1.と豚肉は粗く切ります。
  3. フライパンにごま油を熱して豚肉、もやし、キムチの順に炒めます。
  4. 火を止めてから分量の片栗粉を入れて水気をおさえ、バットに広げて冷まします。
  5. 手で半分に折った餅と4.を春巻きの皮で包み、小麦粉のりで端を止めます。※小麦粉のりとは、小麦粉を水でトロリとするまで練ったもの
  6. 高めの温度でサッと揚げます。
日本食って素晴らしい!
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