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日本食って素晴らしい!

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第3回:「寿司」について学びます。

前シリーズでは「私は麺食い人!」と題し、日本独自の発展を遂げたラーメンを始め、アジア各国の食文化ともつながりの深い麺料理など、バラエティに富んだ麺料理をご紹介しました。
今シリーズでは、「日本食って素晴らしい!」というテーマで、日本食の代表である「天ぷら」「寿司」「餅」「蕎麦」など、国内外で人気のある日本食についてご紹介いたします。
「和食」がユネスコ無形文化遺産になって来年で10年目を迎えます。普段、私たちが食べている「日本食」の素晴らしさを一緒に再確認していきましょう。

第3回目のテーマは、「寿司のルーツと寿司のなぜ?」

日本食の中で一番人気と言えばやっぱり「寿司」でしょう。日本だけでなく、世界各国の人たちにも愛されている寿司です。
11月1日は「全国すしの日」です。
11月1日頃には、新米が収穫されて魚もたっぷり脂がのるなど、1年で最も美味しいすしネタが揃うことで昭和36年に制定されました。
今回は寿司のルーツや寿司のなぜをひも解くとともに、家庭でも手軽にできる握り寿司を紹介します。

寿司とは

寿司(すし・鮨・鮓)とは、一般に米飯などと主に魚介類を組み合わせた和食のことを言います。
一般的には「握り寿司」が代表的ですが、いなり寿司、押し寿司、ちらし寿司など様々な寿司があります。
巻き寿司や稲荷寿司など必ずしも魚介類と組み合わせない寿司もあり、日本食の代表として海外でも大人気です。


かやくいなり寿司 椎茸や人参、茹でたけのこを入れたいなり寿司
(伊藤華づ枝 作)


ぜいたくちらし寿司 鯛やマグロ、うなぎなど7つのネタを使ったちらし寿司
(伊藤華づ枝 作)


サラダ巻き寿司 子どもも大好きなサラダ巻き寿司
(伊藤華づ枝 作)

寿司のルーツ

日本で「鮨」・「鮓」の文字が文献に現れるのは、8世紀からです。中国ではそれよりもはるか前(「鮨」の字は紀元前)から使われていた文字です。古代中国では、「鮨」は魚の塩辛を、「鮓」は塩と米を使った魚の漬物を意味しました。しかし3世紀頃になると、2つの文字は混同されて使われるようになっています。
寿司が中国で作られるようになる以前から、東南アジアでは魚とご飯を漬け込んだものが食べられていました。
現代のように冷蔵設備が整っていない時代では、生のままだと魚はすぐに腐ってしまいますが、ご飯と一緒に漬け込んで自然発酵させ長持ちさせる工夫がされた保存食、これが寿司のルーツと言われています。

日本の寿司の変遷

日本の文献で寿司が登場するのは8世紀になってからです。「漬物」としての寿司の作り方は、日本に稲作が伝えられたと同時に伝わったと考えられています。
平安時代中期の「延喜式」には、材料が魚と米と塩だけであったと記載されています。また、平安時代末期の「今昔物語集」には、寿司を「おかず」にしてご飯を食べるという話が出てきます。当時の寿司は魚と一緒に漬け込んだご飯は捨ててしまい、魚だけを食べるものだったようです。
日本における寿司の歴史の最初の大変革は、室町時代の「ナマナレ(生成)」の登場です。これまでは、ご飯にしっかりと漬けて発酵させたものでしたが、このナマナレは、漬け込む時間が短く、発酵も浅いもので、これまで捨てていたご飯もネタ(魚)と一緒に食べる寿司に変化しました。
寿司の歴史の次の大変革は、江戸時代の「早寿司」の誕生です。
ネタとご飯を自然発酵させて酸っぱくする代わりに、酢でご飯や魚に酸っぱい味をつけて食べる寿司です。すぐに出来るので「早寿司」と呼ばれました。
江戸時代に江戸に登場すると大流行し、江戸から全国へと伝わっていきました。
最初の頃の「早寿司」は、木箱にご飯を詰めてその上にネタを並べ、箱に合わせた「落とし蓋」を乗せて、その上にしばらくの間重石を乗せていました。やがて、重石を乗せる代わりに蓋を両手で押して作るようになり、さらに早く作れるようになりました。「箱寿司」や「押し寿司」などとも呼ばれました。
江戸時代の文政年間、寿司はさらに大きく変わっていきます。「握り寿司」の登場です。

握り寿司の登場

華屋与兵衛という寿司職人が、握り寿司を大ヒットさせます。
与兵衛が寿司屋を始めた頃は、早寿司を売っていました。しかし、早寿司は作るのに時間がかかる、魚の脂気が抜けてしまうといった欠点があり、これを何とか解決したいと試行錯誤した結果、1824~25年頃、与兵衛は手で握って、すぐに食べさせる事を思い付きました。これが「握り寿司」です。
握り寿司は次第に江戸っ子の間で評判を呼び、握り寿司の店が江戸中にでき、重石を使う早寿司はやがて消えていきました。握り寿司はいわば「江戸の郷土料理」で、長い間江戸以外の地域には広まりませんでした。
握り寿司が全国に広まった理由は、関東大震災や太平洋戦争により、店が焼けてしまったり、あるいは戦災を避けて東京を離れた寿司職人が故郷に帰って店を開くなどして、各地方に寿司の技術を伝えていったことによるものです。
もともと生魚を好んで食べてきた日本人の味覚に、握り寿司がぴったり合ったということもあるでしょう。

世界に広がる「Sushi」

寿司は今や世界で人気の日本食の1つです。
寿司が世界に広まった理由は、かつて日本が侵略して植民地としたアジアの国々に、日本人が寿司を持ち込み、それが定着した(韓国のキンパなど)ことや、海外に移民した日本人たちが集まって作った日本人と日系人の街にできた寿司屋がやがて現地人たちにも人気を集めていったと言われています。
アメリカの大都市には、「Sushi Bar」と呼ばれる寿司屋がたくさんあり、アメリカ人の間で寿司が、「油を使わず、カロリーも低いヘルシー食品」として人気を呼んだことで定着しました。
アメリカ独自の寿司として、アボカドなどをネタに使った「カリフォルニア・ロール」が人気です。

寿司のなぜ?

「なぜ1貫、2貫と数えるのか?」については、握り寿司が誕生した江戸時代に庶民は穴の空いた銭50枚を紐で1組にして持ち歩いていて、その1組を1貫と呼び、これと寿司の握り1個が同じ位の大きさだったところから、貫になったと言われています。
「なぜ2貫ずつ出てくるのか?」ですが、昔は1貫の大きさが、おにぎりくらいの大きさがあって、大きなネタでひとつ握り、二つに切って出していましたが、手間がかかるので、最初から小さく握り、寿司は2貫ずつ出す様になったと言われています。
「なぜガリが添えられているのか?」は、魚の殺菌効果や生臭さを消すためです。加えて、ネタを食べた後に、その後味をなくして、次のネタをより美味しく食べられるようにする為です。

子どもからお年寄りまで大好きな「お寿司」。
今回は、ネタも魚だけではなく、いろんなものを揃えて、手作り握り寿司パーティーを開きましょう!

握り寿司・手作りガリ添え

握り寿司・手作りガリ添え
家庭で作るぜいたく握り寿司(伊藤華づ枝作)

材料
寿司飯
  3カップ  
720ml~  
A 米酢 大さじ3  
山吹酢 大さじ3  
砂糖 大さじ6  
小さじ2~  
握り寿司
①マグロ(中トロ) 1切れ15g薄切り 2コ
②ローストビーフ
〈作り方は別紙参照〉
1切れ15g薄切り 2コ
③煮アワビ
〈作り方は別紙参照〉
  2コ
芽ねぎ   適量
④煮ハマグリ
〈作り方は別紙参照〉
中(70g位) 1コ
⑤原木しいたけ 1枚
⑥エビ
〈作り方は別紙参照〉
1尾25g位のもの 1尾
ワサビ    
のり(押さえ用)
(全形を横半分・縦1cm幅に切ったもの)
  3枚
軍艦
⑦イクラのしょうゆ漬け 適量 1コ
⑧辛子明太子 適量 1コ
⑨ウニ 12g 1コ
のり
(全形を横6枚に切ったもの)
  3枚
細巻き
⑩マグロ   30g
ワサビ    
のり
(全形を横半分に切ったもの)
  1枚
 
ハラン(あれば)   適量
南天(あれば)   適量

寿司飯の作り方

  1. 米は洗ってから分量の水に30分~1時間浸水して炊きます。
  2. (A)をボウルに合わせ、しっかり溶きます。
  3. 炊き上がった米に2.を手早く打ち、冷まします。

握り寿司の作り方

  1. 寿司飯を17~20g取り、右手で軽く握ります。
  2. 左手の指先にネタをのせ、ワサビを塗り1.をのせます。
  3. 右手人差し指で上の面、右手親指と中指で長い側面、左手親指で短い側面を軽く押さえ、形を整えます。
  4. 3.を裏返して、同様に形を整えます。
  5. 煮アワビとエビには、押さえ用ののり(全形を横半分にし、さらに縦1cm幅に切ったもの)を巻きます。(のりの切り方・写真①)

軍艦の作り方

  1. のりは横に6枚切りにします。(のりの切り方・写真②)
  2. 寿司飯を17~20g取り、右手で軽く握ります。
  3. 左手にのりを縦長におき、2.をのりの中央右揃えにのせます。
  4. 右手人差し指で上の面、右手親指と中指で長い側面、左手親指で短い側面を軽く押さえ、形を整えます。
  5. のりの上側を寿司飯に沿って下へ巻いたら、下側を同様に上へ巻きます。
  6. ネタをのせます。

細巻きの作り方

  1. のりを横半分にします。(のりの切り方・写真③)
  2. 巻きすの上にのりを横長におきます。
  3. 寿司飯を70~80g取り、のりの上下両端を1cm程度残して広げます。
  4. 中央にワサビ、ネタをのせます。
  5. ネタを両手で押さえながら、巻きます。
  6. 形を整えたら、1本を6等分に切ります。

握り寿司なんて握れない...という方でも安心です。とても便利な道具がありますので紹介します。

これさえあれば、握り寿司もお手のもの!

握り寿司の押し型です。
型の穴にご飯を詰めて、押し出すだけで、簡単にシャリができます。その上にお好みのネタをのせれば、握り寿司のできあがり!

のりの切り方

(2)ローストビーフ(1人・2切れ)

材料 15人分
牛ロース肉(又はもも肉)(長方形・塊) 500g
A 黒こしょう 少々
にんにく(すりおろし) 1粒(7g)
玉ねぎ(すりおろし) 1コ(200g)
サラダ油 大さじ2
B かつお出汁 80ml
しょうゆ 80ml
みりん 大さじ2
大さじ2

作り方

  1. 牛肉は1時間程常温に置き、脂身を取ります。
  2. 1.に(A)をすりこみ、10分間置きます。
  3. フライパンに油を熱し、にんにくと玉ねぎをぬぐい取った肉を入れてフタをし、中強火で肉を動かさずに2分間位焼き、裏返して2分間焼きつけます。
  4. 3.の余分な油を拭き取り、3.でぬぐい取ったにんにくと玉ねぎと(B)を入れてフタをし、煮立つまで強火で加熱します。沸騰したら中弱火にし、11分間程蒸し焼きします(5~6分たったところで、肉を裏返します)。
  5. 4.の肉を取り出してアルミホイルに包み、10~15分間置いて肉汁を落ち着かせます。薄く切ります。
厚手鍋の場合
  1. 2.はフライパンの場合と同じ
  2. 厚手鍋に油を入れて中火で温めます。
  3. 熱したら、にんにくと玉ねぎをぬぐい取った肉をのせて動かさずに中火で3分焼きます。
  4. (B)とぬぐい取ったにんにくと玉ねぎを加え、フタをして中弱火で23~25分焼きます。
  5. アルミホイルに包んで20分置きます。

※タレは残して握ってから少しかけても良い

(3)煮アワビ(1人・2切れ)

材料 16切れ分
アワビ 4コ
A 酒(又は白ワイン) 150ml
600ml
大根(すりおろす・あれば) 200g
薄口しょうゆ 大さじ2

作り方

  1. アワビは身の部分をタワシでしっかりと洗い、沸騰した湯で殻を下にして2分茹でます。
  2. 水に取って、計量スプーンの取っ手部分で身と殻を外します。
  3. (A)を圧力鍋に入れて煮立ててから、2.のアワビの身を入れます。
  4. 再沸騰したらアクをとり、フタをして15分加圧します。
  5. 4.が冷めるまで置いて味をなじませます。
  6. 1コを4切れのそぎ切りにします。(1人・2切れ)
肝を煮る
  1. アワビの肝はきれいに洗います。
  2. 水200ml、酒 70ml、薄口しょうゆ大さじ1・1/2、しょうが(せん切り)大1かけを小鍋に入れて煮立て、肝を丸ごと煮ます。
  3. 冷めてから、適宜の大きさに切ります。

(4)煮ハマグリ(1人・1コ)

材料 4人分
ハマグリ(1コ70~80g) 4コ
A 150ml
50ml
タレ
B ハマグリの蒸し煮汁 100ml
大さじ2
みりん 大さじ2
たまり 大さじ2
砂糖 小さじ1
水溶き片栗粉 適量

作り方

  1. ハマグリをタワシできれいに洗い、鍋に(A)と共に入れて酒蒸しします。
  2. 1.の蒸し煮汁は100mlを残し(タレ用)、残りの蒸し汁に身を浸しておきます。
  3. (B)を煮立てて、水溶き片栗粉を加えてタレを作ります。

(5)原木しいたけ(1人・1枚)

材料  
原木しいたけ 中1枚
しょうがじょうゆ 適量

作り方

  1. 原木しいたけは格子に切り込みを入れてグリルで焼き、しょうがじょうゆを軽くぬります。

(6)エビ(1人・1尾)

材料  
活エビ(1尾25g位のもの) 1尾

作り方

  1. 背ワタを抜いて串を打ち、濃いめの塩水で茹でます(3~5分程度)。
  2. 水に取って冷めてから串を抜きます。
  3. 腹側から開きます。

出汁巻き卵(1人・1切れ)

材料 1本分(6~8切れ)
A 混合出汁 70ml
吉野葛 3g
少々
砂糖 小さじ1/2~1
薄口醤油 大さじ1/2
3コ
適量

作り方

  1. ボウルに(A)を入れてしっかり溶き混ぜます。
  2. 別のボウルに卵を割り、泡立て器で溶きほぐします。
  3. 2.に1.を茶こしを通して入れます。この際、葛をしっかり溶き入れること!!
  4. 卵焼き鍋を熱して油を塗り、3.の卵液を薄く流し入れて巻きます。
  5. 4.に再び卵液を、数回に分けて入れて巻きます。
  6. 5.をペーパータオルで巻き、形を整えます。

寿司しょうが(ガリ)

寿司しょうが(ガリ)

材料 作りやすい分量
新しょうが 300g
自然塩 9g(しょうがの3%)
A 150ml
150ml
砂糖 大さじ2
自然塩 小さじ1

作り方

  1. 新しょうがは手で大きく割りほぐし、スプーンなどで汚い部分を削り取ります。
  2. 1.を繊維に添って2~3mm厚さの薄輪切りにします。
  3. 2.を熱湯に入れて、手早く茹でます(ひと煮立ちしたらよい)。
  4. 水に取らずにザルに上げ、分量の塩を振ります。
  5. 4.を盆ザルに広げ、室内で扇風機で乾かします(約1~2時間)。
  6. (A)は煮立てて冷まします。
  7. 5.の表面が乾いたら、熱湯消毒した貯蔵ビンなどに入れ、6.を注ぎます。
  8. 時々、上下を返しながら、冷蔵庫で保存します。汁が上までつかり、ピンク色になるまで注意深く見守ります。
日本食って素晴らしい!
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