文化講座
続・誰でもわかるイタリア語 第10回 使役動詞
| このシリーズ「誰でもわかるイタリア語」では、イタリア語の基礎を文法用語に頼って説明することを出来るだけ避け、誰にもわかるようにまとめています。また「旅に役立つ会話フレーズ集」では旅行での場面を想定した会話文をまとめましたので、自分のちからで訳し、旅行の場面で使えるようにチャレンジして下さい。 | 
【使役動詞】について
 前回は動詞Fare「する、作る、ためになる」のいろいろな使い方を説明しました。
             今回はfareにはもう一つ重要な使役動詞と呼ばれる働きがあります。作り方は「fare+動詞の原形(不定詞)」で、「...させる」「...してもらう」の意味となります。例えば、Faccio portare l'ombrello alla stazione.(傘を駅まで持ってこさせる)とか、Faccio dormire la bambina  presto.(子供を早く寝かせる)などのように使います。
              またlasciareという動詞を使って、「lasciare+動詞の原形(不定詞)」で、「...させておく」「...するがままにしておく」「...することを許す」などの意味で使います。放任動詞とも呼ばれるものです。例えばLascio giocare i bambini.(子供たちを遊ばせておく)とかLascio suonare il pianoforte tutta la mattina.(午前中ずっとピアノを弾かせておく)などのように使います。
注意する点
直接目的語(mi,ti,ci,vi,lo,la,li le)、間接目的語(mi,ti,gli,le,ci vi,gli)、再起代名詞(mi,ti,si,ci,vi,si)やその他の代名詞などの置き方について注意して下さい。
| a) | fareまたはlasciareの後にくる動詞(不定詞)は、原形のままで維持しなければなりません。動詞の不定詞の語尾に付けることはありません。付けるときは、基本的には動詞fare(lasciare)の前に置きます。 更に動詞が前置詞(a又はdi)なしで不定詞をとる場合、動詞と不定詞の主語が同一であるのが普通です。しかし使役動詞の場合には、不定詞の主語は異なり、その後ろに来る言葉が主語となります。例えばFaccio venire mio figlio.(私が息子に来させる)という文章では、venireの主語は「私」ではなく「息子」が主語となりますので訳すときには注意する必要があります。 | 
- Faccio fare esercizi al pianoforte a Maria.
 (私はマリアにピアノの練習をさせます)
- Le faccio fare esercizi al pianoforte.
 (私は彼女にピアノの練習をさせます)
- Glieli faccio fare.
 (私は彼女にそれをさせます)
| b) | 使役動詞が従属動詞(dovere,potere,volere)と共に用いられる場合でも同様に、動詞fare(lasciare)の語尾に付けるか、従属動詞の前に置きます。 その場合、fareは、子音で始まる動詞が続くとき、fareがfarとなります。すなわち語尾切断(troncamento)が行われます。 | 
- Devi farti tagliare i capelli corti.
 (君は髪を短く刈ってもらわなければいけない)
- Ti devi far tagliare i capelli corti.
 (君は髪を短く刈ってもらわなければいけない)
■使役動詞 A:「fare+動詞の原形(不定詞)」 (...(することを)させる)
1. 動詞の原形(不定詞)が直接目的語(~を)を取る他動詞の場合
「人に...させる」の「人に」は間接目的語「a+人」を使うのが一般的であるが、すでにaを使っている場合は、「da+人」を使い、使役の意味を強めます。
Il padre fa leggere il giornale a suo figlio.
              (父は息子に新聞を読ませる)
Il padre fa leggere a casa il giornale da suo figlio.
              (父は家では息子に新聞を読ませる)
- Facciamo fare due vestiti all'anno.
 (私たちは年に2着の服を作らせる)
- La signora fa aspettare sempre suo marito.
 (奥さんはいつも主人を待たせる)
- Te lo faccio sapere.
 (君にそれを知らせよう)
- Mi sono fatto chiamare un taxi.
 (私はタクシーを呼んでもらった)
- Mi sono fatto portare alla stazione da un taxi.
 (私はタクシーで駅まで送ってもらった)
2. 動詞の原形(不定詞)が直接目的語を取らない自動詞の場合
- La madre fa andare a letto i suoi bambini.
 (お母さんは子供たちを寝に行かせる)
- Mia figlia fa cadere un po' di brodo sul pavimento.
 (私の娘は床にスープを少しこぼす)
- Mi occorre far presto.
 (急がなければなりません)
- La sua barzelletta mi hanno fatto ridere di gusto.
 (彼の小話は私を腹の底から笑わせた)
- Mario fa telefonare alla sua segretaria.
 (マリオは自分の秘書に電話をさせた)
- Mario ha fatto telefonare al dottore dalla sua segretaria.
 (マリオは自分の秘書に医者に電話させた)
- Maria fa venire il suo ragazzo per aiutarla il trasloco.
 (マリアは引っ越しを手伝ってもらうために彼氏に来てもらう)
3. 「farsi+動詞の原形(不定詞)」(自分自身を(に)...させる)または(...してもらう)を意味する場合
行為者「人に」を表す前置詞は「da+人」で表します。
- Mi faccio fotografare da Chiara.
 (私はキアーラに写真を撮ってもらいます)
- Mi faccio vedere quella borsa nera in vetrina.
 (私はショーウィンドーのあの黒いカバンを見せてもらいます)
- Mi faccio tagliare i capelli dal barbiere.
 (私は床屋さんで髪を切ってもらいます)
■近過去などの複合時制では助動詞essereをとるので、過去分詞の語尾が性数一致にする点にも注意して下さい。
- Mario si è fatto esaminare dal medico.
 (マーリオは医者に自分を診察させました)
- Quella attrice non si è fatta fotografare da nessuno.
 (あの女優さんは誰にも写真を撮らせなかった)
■再帰動詞で使う再帰代名詞(mi,ti,si,ci,vi,si)には、「自分を(直接目的語)、自分に(間接目的語)の意味を持っていますが、中にはその働きが意識されない再帰動詞で代名動詞の多くがそれにあたります。そして使役動詞とともに使われる場合には、この再帰代名詞が省略されます。これはlasciareを使う使役動詞でも同様に省略されます。
- Il tuo modo di fare farà arrabbiare la tua ragazza.
 (君の行動の仕方は彼女を怒らせることになるだろう)
- Mi ha fatto accomodare nel salotto.
 (彼は私を客間に通してくれた)
このような動詞には以下のような代名動詞がよく使われます。
             accorgersi di(気づく)、annoiarsi di〈又はa〉(退屈・うんざりする)、arrabbiarsi(腹を立てる・怒る)、pentirsi di(後悔する)、accomodarsi(くつろぐ)
■使役動詞(または放任動詞) B:「lasciare+動詞の原形(不定詞)」(...させておく)
lasciareという動詞を使って、「lasciare+動詞の原形(不定詞)」で、「...させておく」「...するがままにしておく」「...することを許す」などの意味となります。放任動詞とも呼ばれるものです。ドニゼッティのオペラ「ポリュート(Poliuto)」のフィナーレで歌われる「Lasciami in pace morire ormai!」(そっと私を死なせて下さい!)という有名なアリアにも使われています。また同じようにLascio studiare Luigi in pace.(ルイージを静かに勉強させておく)とかNon lascio guardare la TV fino a tarda sera.(夜遅くまでテレビを見させない)などのように使います。
【例文】
- Mi lasci vedere!
 (私に見せて下さい)
- Lasciami parlare!
 (私に話させてくれ)
- Lasciamo dormire i bambini in pace.
 (子供たちをそっと寝かせておこう)
- Lasciamo dire una parola ai tutti.
 (私たちはみんなに一言ずつ言わせた)
- I ricoverati si lasciano lavare dalle infermiere.
 (入院患者さんたちは看護婦さんらに洗うがままになっている)
- Mio marito mi ha lasciato pentire del mio errore.
 (私の夫は、私が自分の過ちを悔いるがままにした)
◆旅に役立つ会話フレーズ集 第10回
 シリーズ『旅に役立つイタリア語』のサブテキストとして使って下さい。
              『旅に役立つイタリア語』では、旅行のいろいろな場面で役立つイタリア語会話についてまとめてありますので是非お読み下さい。その上で、サブテキストとしてこの『旅に役立つ会話フレーズ集』を利用して下さい。旅行のいろいろな場面で使いそうな会話文をまとめてみました。会話の場面を想定して、日本語からイタリア語に訳してみて下さい。最初からイタリア語の解答例を参考にしないで下さい。まずは自分のちからで単語を並べるという努力をして下さい。最初から完璧なイタリア語で会話しようと考えないで下さい。
『美術館・博物館』での会話
会話のフレーズ(Al museo)
【電話での事前予約】その2

- もしもし!見学(la visita)の予約をしたいのですが!
- 8月18日午前の10時2名お願いします。
- 姓(il cognome)は石黒、名前(il nome)は秀嗣といいます。日本人です。
- 予約番号をもう一度いって下さい(ripetere)。
- 料金は現地で支払い(pagare)たいのですが!
- それでは予約お願いします。
- いつの何時なら予約が出来るでしょうか?
- 美術館は何時に開き(閉まり)ますか?
- 今日は何時まで開いていますか?
【写真・ビデオを撮る】
- ここで写真(ビデオ)を撮ってもいいですか?
- 私たちの写真を撮って頂けますか?
- シャッターを押す(premere)だけでいいです。
- 笑って!
- もう一枚お願いします。
- 一緒に写真を撮ってもよろしいでしょうか?
- 教会のファサード(la facciata)を入れて(背景にdietra)写真を撮っていただけますか?
- あの建物(l'edificio)を入れて下さい。
- 写真が出来たら(essere pronto)送ります(spedire)。

(Prenotazione della visita al telefono) II
- Pronto! Vorrei prenotare una visita.
- Vorrei il (giorno) diciotto agosto alle dieci di mattina per due persone.
- Mi chiamo Ishiguro(cognome) Hidetsugu(nome) , sono giapponese.
- Può ripetere il numero di prenotazione?
- Potrei pagare quando arriva al museo(in Italia).
- Allora, può farmi la prenotazione?
- Quale giorno potrei (ancora) prenotare?
- A che ora apre(chiude) il museo?
- Fino a che ora è aperto oggi?
(Foto/Video)
- Posso scattare una foto(riprendere con la videocamera)?
 Posso fotografare qui? È permesso fotografare? Si può fare una foto?
- Vorrebbe(potrebbe) farci una foto?
- Basta premere qui
- Sorrida!(Sorridete!)
- Ancora una (un'altra), grazie! Può fare un'altra?
- Possiamo fare una foto insieme con Lei(voi)?
- Mi può fare la foto con dietra la facciata della chiesa?
- Prenda anche quell'edificio per favore!
- Le spedisco la foto appena sarà pronta.
イラスト:樋口佳代

