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インターネット公開文化講座

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エプロン一年生さんの為の基本クッキング

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

おいしい味の基本 ~香辛料で味に差をつけましょう~

これから料理を学びたい人・お料理大好きな人へ
このページでは、料理の基本やその逸話などを、料理法だけでなくいろいろな角度からご紹介します。

これまでに、基本の料理道具や身だしなみ、料理をおいしく仕上げる調味料の扱い方、野菜、魚介類、肉類の切り方、だしのとり方、調理用語、アルコールなどについて記しました。第8回目は香辛料の種類と効用をご紹介します。

友人のホームパーティーに出席した時のこと。彼女の手料理は比較的簡単でシンプルなものでしたが、メリハリがあってとても洗練された味でした。スパイスが 上手に使われており、旨みと共に香りも高く、印象的な味だったと記憶しています。使い方ひとつで、料理の味に大きく影響を与える香辛料。香辛料をうまく使 いこなすことが、料理上手への近道といえそうです。



◆香辛料とは◆

特有の香りや味、色を利用し、くさみ消しや香り付けを行って風味を増したり、辛味などの刺激の付加や着色によって食欲を増進させる作用のあるものを言います。
多くは植物の葉、茎、果実、花、蕾(つぼみ)、樹皮、種子、根、地下茎などの生鮮品または乾燥品及びその粉末を用います。(写真1)
(写真1) 香辛料

◆香辛料の歴史◆

香辛料の歴史は古く、紀元前から世界各地で使用されていました。特にヨーロッパでは肉類が料理の中心であったため、防臭、防腐作用のある香辛料は欠かせな いものでした。多くは東洋から運ばれてきたため、大変高価で貴重であり、交易品として膨大な利益を生み、しばしば貨幣の代用ともなりました。
日本でも、古事記によると紀元前からすでにショウガが使われており、香辛料は長く薬用として珍重されてきました。17世紀頃西洋スパイスが伝来し、明治以 降カレーが食べられるようになってから一般家庭に広く普及しました。

◆香辛料の効用◆

香辛料にはそれぞれに様々な効用があるため、目的に応じて上手に使い分けると良いですね。

防臭作用
肉や魚など特有の臭いを消す
防腐・殺菌・酸化防止作用
微生物の繁殖を抑えたり、脂肪分などの酸化を防止して食品を保存する
香り・辛味
香りや辛味をつけることによって食欲を増進させる
着色作用
食品に色をつける
薬理作用
整腸作用や滋養強壮、咳止めや消化吸収を助けるなどの薬効

◆香辛料いろいろ◆

~香辛料の効用の見方~
香辛料が持つ代表的な効用を★マークの3段階で表示します

★★★ 非常にある
★★   ある
★     多少ある
☆     あまりない
(写真2) スパイス入れ

ペッパー(胡椒)(写真3)
あらゆる料理の味付けに欠かせない、最も有名なスパイスです。
白より黒のほうが香り・辛味共に強く、ホワイトシチューや白身魚などの白っぽい料理には白を使います。
粒(ホール)、粗挽き、粉末の形状があり、それぞれの料理に合わせて使い分けます。
【効用】
香り・辛味 ★★/★★★
防臭 ★★★
薬効 ★★(発汗、健胃など)
(写真3)
上より時計回りにピンクペッパー、ブラックペッパー、ホワイトペッパー(いずれも粒状)
(写真4)
ステーキには粗びきの黒こしょうをたっぷり振って

ガーリック(ニンニク)(写真5)
肉料理はもちろん、中国料理やイタリア料理でもなくてはならない存在です。
昔からカツオのたたきに添えられるのは、ニンニクの風味でカツオ特有の臭いを消すと共に、高い殺菌作用によって食中毒を予防する働きがあるからです。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★★
薬効 ★★★(滋養強壮、疲労回復、血液サラサラなど)
(写真5)
右は乾燥して粗びきしたもの
(写真5)

ジンジャー(ショウガ)(写真6)
ニンニクと共にほとんどの家庭にあるスパイス。料理に使われる他、鍋物や寿司、焼き魚、天ぷらなどの薬味としても大活躍。また、お菓子や飲料などにも幅広く使われます。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★★★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★
薬効 ★★★(風邪、冷え性、健胃、解毒など)
(写真6)

わさび(写真7)
寿司、刺身、蕎麦、お茶漬け、漬物など、日本食にはつきもの。江戸時代には庶民にも広がり、寿司や蕎麦の薬味として使われていました。近年では、わさびマヨネーズやわさびドレッシングなども人気です。
【効用】
香り・辛味 ★★/★★★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★★
薬効 ★(解毒、血栓予防など)
(写真7)
(写真8)
おろしたては風味が格別

唐辛子(写真9)
韓国料理に代表され、世界中で使用されている辛さの代名詞。一味唐辛子(写真10)は、うどんやそば、焼き鳥などの薬味として定着しています。よくお米に唐辛子を入れて保存するのは、殺菌作用により虫がわかないようにするためです。
【効用】
香り・辛味 ☆/★★★
防臭
防腐・殺菌作用 ★★
着色
薬効 ★★★(発汗、脂肪燃焼、代謝促進など)
(写真9)
(写真10)

ゴマ(写真11)
種子は和え物、つけダレやソース、お菓子に、ゴマ油は料理の風味付けに。そのままよりも、すりゴマにした方が香りも良く、消化吸収も良くなります。
【効用】
香り・辛味 ★★★/☆
薬効 ★★★(抗酸化、美肌、整腸、コレステロール値低下など)
(写真11)

マスタード(写真12)
ツンとした香りと辛味が味を引き締めます。おでんや点心、ハムやソーセージ、サンドイッチなど様々な料理に使われますが、香りが飛びやすいので火を通さず直前に用意します。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★★★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★★
着色 ★★(黄色)
薬効 ★(健胃、利尿、興奮作用など)
(写真12)
上から時計回りに粒マスタード、からし粉、練りがらし
(写真13)
マスタードシード

■中級編

料理のアクセントとして取り入れたい香辛料です。

青じその葉(写真14)
古くから日本に自生する「和風ハーブ」で、付け合せや薬味に多く使用されます。花穂じそは花が咲きかけた状態の穂先で、青じその葉ともに刺身のつま(注1)として添えられます。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★★
薬効 ★★★風邪、抗アレルギー、精神安定、貧血予防、利尿など)
(写真14)
左は青じその葉、右は花穂じそ
(写真14)
※注1
『刺身のつまとは』
刺身を引き立てるために添えられる野菜や海藻など。つまには①魚介類特有の生臭さを消す②殺菌による食中毒予防③消化吸収を促進④彩りなどの役割があります。

みょうが(写真15)
日本原産で、日本でしか食べられていません。独特の香りとシャキシャキした食感が食欲をそそります。香りが強いため、薬味や刺身のつまとして多く使われます。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★★
防臭 ★★
防腐・殺菌作用 ★★
薬効 ★★(風邪、のど、発汗、消化促進、抗ストレスなど)
(写真15)

~みょうがを使ったおすすめ料理~
みょうがご飯をおにぎりにしました(写真16)
(写真16)
 

ゆず(写真17)
さわやかな香りと酸味が心地よく、料理の風味付けやお菓子、ジャム、ゆず茶など広く使われています。余ったゆずは、皮を少量ずつ冷凍させておくといつでも使えて便利です。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★
防臭
防腐・殺菌作用
薬効 ★★★(のど、風邪、疲労回復、美肌、免疫力UPなど)
(写真17)

ローリエ(月桂樹の葉・ローレル・ベイリーフ)(写真18)
洋風の煮込み料理に入れると、肉や魚の生臭みをやわらげ、香りが引き立ちます。タンスの引き出しに入れるなど、防虫剤としても使われます。
【効用】
香り・辛味 ★★/☆
防臭 ★★
防腐・殺菌作用 ★★
薬効 ★(消化促進など)
(写真18)

山椒(写真19)
ゆずと共に日本料理の二大香辛料と言われています。
また、中国の山椒は花椒と呼ばれ(写真20)、特に麻婆豆腐などの四川料理に欠かせません。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★★★
防臭 ★★
防腐・殺菌作用 ★★
薬効 ★★(健胃、整腸、利尿、発汗など)
(写真19)
左は粉山椒、右は木の芽
(写真20)

ナツメグ(写真21)
ひき肉料理に抜群の防臭効果を発揮します。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★
薬効 ★(健胃、消化促進、など)
(写真21)

バニラビーンズ(写真22)
お馴染みの甘い芳香がお菓子以外に香水などにも使われていて人気です。バニラエッセンスやバニラオイルだと手軽に使えます。
【効用】
香り・辛味 ★★★/☆
(写真22)

シナモン(肉桂・カシア)(写真23)
スパイシーな甘い香りが特徴。日本ではニッキとして昔から親しまれています。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★
防臭
防腐・殺菌作用
薬効 ★(解熱、発汗、鎮静など)
(写真23)
(写真24)
~シナモンシュガー~
シナモンパウダー:砂糖=1:10

スターアニス(八角)(写真25)
八つの突起を持つ星型から名付けられました。
鶏や豚の中国料理によく使われます。
【効用】
香り・辛味 ★★★/☆
防臭 ★★
防腐・殺菌作用
薬効 ★(風邪、咳止めなど)
(写真25)

~八角を使ったおすすめ料理~
牛肉とセロリの辛み和え (写真26)
(写真26)
 

■上級編

キッチンにあるだけで「料理上手」な気分が味わえそう。

クローブ(丁子)(写真27)
刺激的な香りの中にもほのかな甘みがあり、ペッパー、ナツメグ、シナモンとともに「4大スパイス」と呼ばれています。着物などの防虫にも使われます。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★★
薬効 ★★(強壮、健胃、消化促進、風邪など)
(写真27)

オールスパイス(写真28)
ナツメグ、シナモン、クローブを合わせたような風味をもっていることが名前の由来です。これさえあれば、色々な料理やお菓子に使えて重宝します。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★★
防臭 ★★★
防腐・殺菌作用 ★★
薬効 ★(健胃、消化促進、口臭予防など)
(写真28)

サフラン(写真29)
「スパイスの女王」と呼ばれる高価なスパイス。パエリヤやブイヤベースの色づけには欠かせません。サフランティーとしても飲まれています。
【効用】
香り・辛味 ★/☆
着色 ★★★(黄金色)
薬効 ★★★(血行促進、婦人病、鎮痛など)
(写真29)

クチナシ(写真30)
きんとんやたくあん、ゼリーやキャンディーの色付けに使われます。日本では飛鳥時代から着色料として用いられてきました。
【効用】
着色 ★★★(黄色)
薬効 ★★(利尿、消炎など)
(写真30)

ターメリック(ウコン)(写真31)
カレーの黄色のベースになっています。日本でもウコンは薬用として珍重されています。
【効用】
香り・辛味 ★/☆
着色 ★★★(黄色)
薬効 ★★★(健胃、風邪、鎮痛、肝・腎機能など)
(写真31)

パプリカ(写真32)
サラダやソースなどの色づけに使われます。辛味はありません。
【効用】
着色 ★★★(赤色)
(写真32)

カルダモン(写真33)
清涼感のある香りで「香りの王様」と呼ばれています。カレーの主原料のひとつです。
【効用】
香り・辛味 ★★★/★
防臭 ★★★(黄金色)
薬効 ★(消化促進、強壮など)
(写真33)

■応用編

いくつかのスパイスが混ざったミックススパイスです。

カレー粉(写真34)
お 馴染みのカレー粉ですが、カレー粉というスパイスがあるのではなく、コリアンダー、カルダモン、ペッパー、クミン、オールスパイス、ターメリック、クロー ブ、シナモン、ナツメグなど数十種類ものスパイスをブレンドしたものです。配合により辛さや風味が変わります。好みに合わせて自分で調合できたら、あなた もスパイスの達人です。
(写真34)

七味唐辛子(写真35)
山椒、唐辛子、ゴマ、シソ、陳皮(みかんの皮)、ショウガなど7種類のスパイスを絶妙なバランスでブレンドした日本特有のミックススパイス。メーカーによって7種類の中身が多少違います。写真は日本三大七味唐辛子のひとつ、長野の八幡屋磯五郎製です。
(写真35)

五香粉(ウーシャンフェン)(写真36)
5種類のスパイスをミックスした中国の代表的なスパイスです。少量加えるだけで、たちまち本格中華に大変身するお役立ちアイテム。
私は鶏肉やゆで卵を煮る際に使用します。五香粉を加えるだけで、中華風の煮物が簡単に作れます。
(写真36)

ゆずごしょう(写真37)
九州大分発祥のゆずと唐辛子のペースト状ミックススパイス。九州では唐辛子のことをこしょうと呼ぶことから名づけられました。鍋や汁物に加えたり、刺身などの薬味はもちろん、オリーブ油との相性もよく、カルパッチョに添えても絶品です。(写真38)
(写真37)
(写真38)
サーモンのカルパッチョ
ゆずごしょう風味

かんずり(写真39)
新潟地方の伝統的な唐辛子のペースト状ミックススパイス。雪にさらしたまろやかな辛味の唐辛子、麹や柚子と混ぜて熟成させます。料理に加えたり薬味にしたりと、適度な辛味を付けるのに和・洋・中問わず何にでも使えます。
(写真39)
エプロン一年生さんの為の基本クッキング
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