文化講座
第3回:関東(1)東京
前シリーズでは「発酵食品の魅力にせまる」と題し、代表的な発酵食品を毎月順番に取り上げ、その特徴や健康効果、おすすめの料理をご紹介しました。今シリーズでは、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピにしてご紹介しています。
第3回目の今月は、「関東(1)東京」です。
1.東京都
事実上、日本の首都機能が置かれたところです。
日本の司法・立法・行政の中心地・経済の中心地です。
- 面積:2,188.67km2
- 人口:13,282,271人(2013年8月現在)
- 都庁所在地:新宿区
2.関東と関西~味の違い~
東京を中心とした関東と大阪を中心とした関西では、同じ料理でも調理法や味などが異なります。
特に違いが分かるのが、「すし」・「天ぷら」・「うなぎ」です。
関東で食べられる料理を「江戸前」と呼びますが、江戸前とは江戸湾(現在の東京湾)のことで、京の都が山国(海に面していない)なのに対し、江戸は海に面しているので、海で獲れる魚介を使った料理が有名になりました。
- ○江戸の三味(すし・天ぷら・そば)とは...
- 江戸時代には様々な料理が屋台で販売されていました。
中でも「すし」・「天ぷら」・「そば」は特に人気があり、「江戸の三味」と呼ばれて庶民に愛されました。
~すし~
関東で「すし」といえば「にぎり寿司」ですが、関西で「すし」といえば「押し寿司」といわれています。
昔は寿司も屋台で売られていた為、その場ですぐに作って食べられるにぎり寿司が江戸っ子には好まれ、関西は酢〆等の加工した魚を使った押し寿司が主に食べられていました。
名古屋市で江戸前寿司が食べられる店「寿し銀」(名古屋市中区栄1-6-7)の寿司
関西式・焼きサバ寿司(華づ枝作)
~天ぷら~
「天ぷら」は関東では卵を入れた衣を使い、ゴマ油でこんがりきつね色に揚げます。関西では卵を入れない衣を、大豆白絞油や綿実油で揚げるのが特徴です。
関東では天ぷらといえば魚介、関西では野菜や山菜を揚げることが多かったようです。
魚介の臭みを消すため、関東では風味のあるゴマ油を使ったとされています。
~うなぎ~
関東と関西では、うなぎの「捌き方」と「焼き方」が異なります。
関東は背開きをして1尾を2~3つに切って串を打ち、白焼きした後、蒸して再び焼くので、ふわっと柔らかいのが特徴です。
関西は腹開きし、長いまま串を打って素焼きにしたものを、再びタレをかけて焼き上げるため、パリッとした香ばしさが楽しめます。
捌き方の違いは、関東が武士の国のため、腹から割る(切腹に通じる)ことを嫌って背開きにしたといわれています(※この説とは全く異なる説もあります)。
うなぎだけではなく、天ぷらなどの材料になるアナゴやキス、ハゼなどの小魚も、すべて背開きにします。
3.関東の名店
○すし
・弁天山「美家古寿司」
1866年(慶応2年)創業。
煮きり、ツメ、ヅケ、酢〆、昆布〆など古典的な技法を、今もなお守り続けている老舗です。
江戸前本来の味が堪能できるお店です。
弁天山「美家古寿司」(東京都台東区浅草2-1-16)の店前での筆者
・すきやばし「次郎」
ミシュラン6年連続三ツ星受賞の名店。
築地で仕入れた旬の素材を、すし酢からネタの温度までこだわり抜いて握る「名人の店」です。
すきやばし「次郎」(東京都中央区銀座4-2-15塚本ビル地下1階)の店前での筆者(1991年2月)
○天ぷら
・天一本店
1930年創業の老舗。
戦前より財政界をはじめとする様々な要人のサロンとして親しまれるなど、内外の多くの文化人に愛されてきました。
彼らに同伴して来店した外国の要人も多かったため、日本を代表する天ぷら屋となりました。
天一本店(東京都中央区銀座6-6-5)の入り口での筆者(1990年8月)
1990年代に日本全国を回って美味しい物を食べ歩いた時の東京の名店のマッチ箱(開いたもの・天一は右上)
〈愛知県名古屋市で関東式の天ぷらを楽しむならココ!〉
★天富良(てんぷら)「にい留」(名古屋市中区新栄2-8-13シャトー秋月102)
東京の名店「天一」本店で修業した新留修司さんが、2013年6月に名古屋に店を開きました。
ゴマ油で揚げた、サクッと軽い関東式の天ぷらを、塩やカレー塩・2週間寝かせて作る、こだわりの天つゆなどで楽しめます。
にい留の店主と筆者
揚げたての天ぷらの数々を楽しんだ後は、小天丼か天茶が選べます
この日は小天丼を食べました
(2013年8月)
・銀座「天国」本店
1885年創業の天ぷら「天国」。
銀座で小さな屋台として始めた店が、今では地下から地上3Fまでのビルになっています。
1Fは気軽に天ぷらや天丼を楽しめるとあって、お客さんがひっきりなしに出入りしています。
銀座天国本店(東京都中央区銀座8-9-11銀座天国ビル)の店前での筆者
天国の天丼
(2013年1月)
○うなぎ
・野田岩
創業は寛政年間の、およそ200年前。
徹底して素材にこだわり、手間隙をおしまず調理し、伝統の味と技術を守り続けるうなぎの名店。
うなぎのおいしさを引き立てる丁寧な仕事で、目と舌を楽しませてくれます。
野田岩(東京都港区東麻布1-5-4)の店前での筆者
(1991年2月)
・竹葉亭
創業は江戸末期。
上質のうなぎを白焼きにして蒸しあげ、秘伝のタレをつけて焼く江戸前の蒲焼を食べさせてくれます。
箸ですっと切れるほど柔らかく、あっさりした味が好評。
今もなお伝統の味・技術を引き継いでいます。
本店は東京ですが、名古屋にも出店があり、関東式のうなぎを楽しむことが出来ます。
竹葉亭 名古屋店(名古屋市中村区名駅1-1-4 JRセントラルタワーズ12F)のうな丼
う巻き
(2013年8月)
○その他
・マキシム・ド・パリ
パリの由諸あるレストラン「マキシム」の伝統を受け継ぐ、正統派フレンチレストラン。
フランス料理の最高峰を極めた店で、"一皿の芸術"に出会えます。
マキシム・ド・パリ(東京都中央区銀座5-3-1)ソニービルの前での筆者
(1990年12月)
・割烹 吉葉
旧宮城野部屋の建屋と横綱吉葉山の名前を譲り受け、1983年創業。
店内には本物の土俵や番付表があり、相撲部屋さながらの雰囲気で、17種類の具材が入った吉葉特製のちゃんこ鍋が楽しめます。「ちゃんこ」とは本来、相撲部屋で力士が作る手料理すべてを指します。
中でも鍋物は一度に大量に、かつ簡単に調理が出来、栄養バランスが整い、鍋を囲んで連帯感も生まれて力士の食事に適していたため、広まりました。
割烹 吉葉(東京都墨田区横綱2-14-5)の店内での筆者
ちゃんこ鍋を前にした筆者
(2013年9月)
4.東京新名所
★ソラマチ
2012年5月にオープンした、東京スカイツリーの根元に立地する都内最大級の複合商業施設です。
スカイツリーを目の前に見ながら食事が出来るレストランや、下町の風情溢れる商店街、水族館、プラネタリウムなど312店舗が集結しています。
スカイツリーをバックにソラマチ(東京都墨田区押上1-1-2)の入り口での筆者
ソラマチ商店街での筆者
(2012年5月)
★丸の内駅舎
2012年10月に東京駅丸の内駅舎の保存・復元工事が完了し、約100年前の東京駅が再現されました。
赤レンガ造りでドーム型の屋根、華やかな内装で、東京駅が一層賑わっています。
東京駅丸の内駅舎(東京都千代田区丸の内1丁目)の前での筆者
(2013年9月)
★渋谷ヒカリエ
渋谷駅東口に位置し、駅から直結する複合商業施設です。
渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区渋谷2-21-1)の前での筆者
パティスリー・サダハル・アオキのエクレア
色とりどりのエクレアや店頭で焼きながら売る「焼きマカロン」に行列が出来ていました
(2012年5月)
★タニタ食堂
計測器の大手メーカーが、社員食堂を一般の人向けに作った食堂。
タニタの経営理念「我々は『はかる』を通して世界の人々の健康づくりに貢献します」を実践する場として社員食堂を作り、メディアの目にとまってレシピ本を出すなど、近年話題のスポットです。
タニタ食堂(東京都千代田区丸の内3-1-1丸の内国際ビルヂング地下1階)日替わり定食を前にした筆者
(2012年5月)
★築地場外市場
築地市場は東京都中央区築地にある、公設の卸売市場です。
その規模は世界最大です。
築地市場周辺にも多くの店舗があり、「場外市場」と呼ばれています。
場外は場内に比べ、一般客や外国人などの観光客が多く見られます。
築地場外市場(東京都中央区築地)の入り口近く卵焼き屋前での筆者
市場内で食べた海鮮ひつまぶし寿司
(2012年5月)
5.レシピ
相撲部屋の名物料理。具だくさんで栄養バランスの取れた鍋物です
材料(4~6人分) | 分量 |
エビ(7~8cm、殻付き) | 8~12尾 |
ホタテ貝柱(冷凍) | 4~6コ |
生しいたけ | 4~6枚 |
大根 | 200g |
にんじん | 100g |
ごぼう | 1/3本 |
しらたき(結び) | 12コ |
油揚げ | 4~6枚 |
にら | 1ワ |
もち麩 | 8~12コ |
A | |
鶏ひき肉 | 200g |
塩 | 小さじ1/4 |
卵 | 1/2コ |
白ねぎ(みじん切り) | 5cm |
B | |
水 | 1000ml |
鶏がらスープの素 | 小さじ1 |
塩 | 小さじ2~2・1/2 |
しょうゆ | 大さじ1 |
みりん | 大さじ2 |
すりごま(お好みで) | 少々 |
七味とうがらし(お好みで) | 少々 |
ご飯 | 茶碗2杯分 |
卵 | 4コ |
作り方
- エビは背わたをとり、ホタテ貝柱は碁盤の目状に切り込みを入れ、共にサッと茹でます(霜降り)。
- 生しいたけは石突をとって飾り切りにします。大根とにんじんはそぎ切りにし、9分通り下茹でしてザルにあげます。
- ごぼうはささがきにし、水にさらして下茹でします。
- しらたきは塩もみをし、洗わずに茹で、水にとって冷やします。
- 油揚げは熱湯に通し、油抜きをして三角に切ります。
- にらは2等分にします。
- もち麩は水で戻します。
- (A)をボウルに混ぜ合わせ、12等分に丸めます。
- (B)を煮立たせ、8.を入れて煮ます。
- 鍋に1.~7.を並べ、9.を注ぎ入れ、材料にじっくり火を通します。
- 器に10.を盛り、お好みで七味とうがらしとすりごまを散らします。
※お好みで残った汁にご飯を加え、とろみが出てきたら、溶き卵を加えておじやを作ります。
かんぴょうやしいたけを煮て寿司飯に混ぜることで、美味しさアップ
材料(4~6人分) | 分量 |
米 | 2カップ |
水 | 450ml |
酒 | 大さじ2 |
A | |
酢 | 50ml |
砂糖 | 大さじ3 |
塩 | 小さじ1 |
かんぴょう(煮たもの) | 適量 |
干ししいたけ(煮たもの) | 適量 |
にんじん | 40g |
戻りカツオ(又はマグロ、刺身用) | 150g |
イカ(刺身用) | 60g |
きゅうり | 1本 |
塩 | 小さじ1/2 |
レンコン | 100g |
B | |
(A)の合わせ酢 | 小さじ1 |
水 | 大さじ1 |
C | |
卵 | 2コ |
かつお出し汁 | 大さじ2 |
塩 | 少々 |
砂糖 | 少々 |
寿司しょうが | 適宜 |
わさび | 適宜 |
しょうゆ | 適宜 |
作り方
- 米は洗って分量の水と酒を入れ、1時間程浸水してから炊き上げ、10分間程蒸らします。
- 1.に(A)を混ぜ合わせて打ち、手早く冷まします((A)の合わせ酢は一部をレンコン用に残します)。
- 煮たかんぴょうと干ししいたけをみじん切りにします。にんじんはみじん切りにしてから茹で、水気をしぼります。
- 2.に3.を入れて混ぜ合わせます。
- 戻りカツオは1人4~5枚当てに刺身よりやや薄く切ります。イカは1人3枚当てに切ります。
- きゅうりは縦半分に切り、斜めに細かく切れ目を入れて1.5cm幅に切ります。塩でもみ、サッと洗います。
- レンコンは薄いいちょう切りにし、酢水でさらして茹でます。水気をしぼり、(B)に浸けます。
- (C)でだし巻き卵を作り、1人2枚当てに切ります。
- 器に4.を盛り、5.~8.と寿司しょうがを盛ります。
- 9.にわさびとしょうゆを添え、召し上がります。
〈かんぴょうと干ししいたけの煮かた・16~20人分〉
- かんぴょう(乾燥)30gは水で洗い、塩もみして茹でます。沸騰してから10~15分間程茹で、やわらかくなったら水にさらし、適当な長さに切ります。
- 干ししいたけ10枚分は一晩ゆっくりと戻します。
鍋に干ししいたけの戻し汁とかつお出し汁を800ml入れ、1.と2.を入れてゆっくりと煮てからしょうゆ50ml、砂糖大さじ2・1/2で調味し、かんぴょうがやわらかくなり、汁がなくなるまで煮ます。