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インターネット公開文化講座

文化講座

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日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第1回:北海道

 前シリーズでは「発酵食品の魅力にせまる」と題し、代表的な発酵食品を毎月順番に取り上げ、その特徴や健康効果、おすすめの料理をご紹介しました。今シリーズでは、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピにしてご紹介します。

第1回目の今月は、「北海道」です。

1.北海道

2012年3月 新千歳空港内のラーメン道場前での筆者

  • 面積:83,456.75km2(日本の総面積の約22%を占める)
  • 人口:5,444,307人(平成25年3月現在)
  • 道庁所在地:札幌市

日本、47都道府県の中で唯一の「道(どう)」です。


2.北海道の食文化

北端の未開地「蝦夷(えぞ)ガ島」が、「北海道」と名前が改められたのは明治2年のことです。
蝦夷にはもともと、アイヌ民族が住んでおり、北海道の郷土料理にはアイヌ民族の食文化をそのまま継承した食べ物が多く見られます。
サケがよく獲れた事から、アイヌの人々はサケを主食として食べていました。
その為、北海道の郷土料理には石狩鍋・三平汁・チャンチャン焼きなど、サケをメインとした料理が数多くあります。
北海道ではサケの事を「アキアジ」といいます。
産卵の為に河川をさかのぼるサケの旬が秋であるところから秋味であるという説と、サケを意味するアイヌ語の「アキア・チップ」から出た言葉という2説があります。

北海道は海産物以外にも、その広大な土地を利用した農産物の収穫もあります。
じゃがいも・玉ねぎ・とうもろこし・ゆり根・豆など、種類も豊富です。
北海道は、まさに食材の宝庫と言っても良いでしょう。

3.北海道の名産品

北海道には数多くの名産品がありますが、ここではその一部を紹介します。

(1)じゃがいも(馬鈴薯)

全国のじゃがいも収穫量の8割以上を占めます。
昼夜の大きな温度差が、うまみをしっかりと蓄えたおいしいじゃがいもを育てます。

~じゃがいもを使ったお菓子~

「ロイズ」(ROYCE')...株式会社ロイズコンフェクト
デパートの物産展などで大人気のロイズは、チョコレートを中心にカカオの加工品を製造・販売している日本の企業です。
札幌市を中心に北海道内に直営店を展開するほか、通信販売による全国展開も行っています。
特に北海道産のじゃがいもを使用した、「ポテトチップチョコレート」は人気沸騰中。
じゃがいもを揚げて作ったポテトチップスに、チョコレートをつけたシンプルなお菓子ですが、とてもおいしくて私も大好きなお菓子です。

ロイズのポテトチップチョコレート

2012年3月 新千歳空港内のロイズファクトリーの前での筆者

(2)とうもろこし

北海道で作られているとうもろこしの生産量は、国内総生産の約50%を占めています。
とうもろこしといっても種類は様々で、近年は生でも食べられる品種も出てきました。

~とうもろこしを使った料理~

茹でてそのまま食べてもおいしいのですが、ラーメンの具材や炊き込みご飯に入れてもおいしいものです。
北海道のラーメンの多くには、とうもろこしがトッピングされています。

華づ枝作・とうもろこしご飯

≪作り方≫
米2カップを洗って普通の水加減をし、30分以上おく。とうもろこし1~2本は包丁で実をそぎ落とし、ほぐす。米にとうもろこしと塩小さじ2/3を入れて炊き、炊き終わったらバター15gを加え、10分程蒸らしたらかきまぜて出来上がり。


(3)サケ

北海道知床半島の東側に位置する羅臼は、サケの漁獲高日本一です。
メスのサケから採れるいくらも、北海道名物の海鮮丼などに使用されています。

~サケを使った料理~

チャンチャン焼き・石狩鍋・三平汁など、サケを使った料理がたくさんあります。

(4)コンブ

生産量は、全国の9割以上も占めています。
種類も多く、産地によって品質も異なります。
日高のヒダカコンブ(三石コンブ)・松前のマコンブ・利尻のリシリコンブ・釧路のナガコンブなど多くの種類のコンブが獲れます。

~コンブを使った郷土料理~

華づ枝作・松前漬け

もともとは松前藩(現在の北海道松前郡)で保存食として作られていた物が、「松前漬け」です。
コンブとスルメ、かずのこを合わせてしょうゆ漬けにした、酒の肴にぴったりの料理です。


(5)カニ

2012年3月 札幌市・場外市場内の食事処「にっかい」で食べた毛ガニ

タラバガ二・花咲ガニ・毛ガニなど、獲れる種類が豊富です。
カニは冷たい水を好む為、水温が他の海域に比べて低い北海道の海でよく獲れるのです。

~カニを使った郷土料理~

てっぽう汁(カニが入ったみそ汁)や、カニみそを使ったカニ甲羅鍋などがあります。
もともとは漁師料理からきている物が多いようです。


4.北海道の郷土料理

北海道には多くの郷土料理が存在します。
ここではその一部をご紹介します。

(1)チャンチャン焼き(末尾にレシピを紹介しています)

半身にしたサケやホッケを野菜などと共に鉄板で焼き、みそダレをかけて焼き上げた料理です。
2007年に、農林水産省が選定した郷土料理百選において、北海道からは石狩鍋、チャンチャン焼き、ジンギスカンが選ばれました。
名前の由来は諸説あります。
「チャンチャン焼き」は手早く作れる料理で、北海道では手早くする事を「ちゃちゃっと」というので、それが訛ったという説と、「お父ちゃんが鉄板をチャンチャンと音を立てながら作ったから」という説などがあります。

(2)石狩鍋

サケの本場の石狩地方にちなんだ、北国にふさわしい栄養たっぷりの鍋料理です。
秋から冬にかけて産卵のために石狩川をサケの大群がさかのぼるのですが、そのサケを用いた料理の一つです。
石狩川河口近くにある1880年(明治13年)創業の割烹「金大亭」が元祖と言われています。
地元の漁師が賄い料理としてみそ汁の中に、鮭のぶつ切りや玉ねぎ・キャベツなどの野菜を入れて食べていたものを、「金大亭」が最初に世に送り出した料理と言われています。
最後に魚の臭みやみそ臭さを抑え、うま味を引き出すために山椒をかけます。

★石狩町サケ料理専門店「金大亭(石狩市新町1)」で筆者が食べた元祖サケ料理コース(1990年11月)


(3)イカ飯(末尾にレシピを紹介しています)

北海道渡島地方の郷土料理。
函館の隣町である森駅の駅弁調製業者が第二次世界大戦で米が不足していた頃に、当時豊漁だったスルメイカを用いて米を節約する料理として考案しました。
イカの胴の中にうるち米ともち米を混ぜ合わせて入れ、しょうゆ味で炊き上げたものです。
全国物産展では、今も人気の高い一品です。

(4)いももち

華づ枝作・いももち

北海道・道央・道東地方の郷土料理。
「いもだんご」とも呼ばれ、焼いたもの(味付けしたもの)を「もち」、汁に入れたもの(味付けしていないもの)を「だんご」と区別します。
稲作(もち米)の生産技術が未発達だったこと、豊富にじゃがいもが生産されたことが始まりです。
じゃがいもの皮をむいて茹でるか蒸し、つぶして片栗粉を混ぜて形作り、焼いて甘辛く味つけしたものです。


5.北海道紀行

~1990年11月~

★小樽市・料亭旅館「銀鱗荘(小樽市桜1-1)」

料亭旅館「銀鱗荘」前での筆者

昭和14年創業、石狩湾に囲まれた海抜60mの地にあります。
豪壮で優美なたたずまいの建物は、現在の北海道文化財百選のひとつに数えられています。


玄関先の熊の置物

北海の磯づくしの夕食


★札幌市・料亭「海陽亭」

料亭「海陽亭」前での筆者

海陽亭は百有余年の歴史を持つ、北海道内最古の料亭と言われています。
筆者が行った札幌店は2011年10月に閉店しましたが、小樽の本店(小樽市住吉町4-7)は明治から平成の4代に亘り、古くは元勲 伊藤博文公から田中角栄元総理大臣等、政財界における数々の著名人が訪れた有名店です。


~2012年3月~

★札幌市・狸小路市場

狸小路市場入り口前での筆者

北海道で最古の商店街の一つ、狸小路6丁目にある市場です。
明治6年に開設され、2013年で140年目を迎えました。



狸小路市場内にある魚屋が経営する寿司店で食べた寿司11貫

6.北海道の郷土料理レシピ

チャンチャン焼き

鮭などの魚介や野菜がたっぷり食べられる北海道の名物料理!

エネルギー410kcal、タンパク質23.0g、脂質16.1g、塩分1.7g(1人分)
材料(4人分) 分量
生鮭 2~3切れ
少々
少々
ホタテ(冷凍・生) 4コ
じゃがいも 1コ
キャベツ 100~120g
玉ねぎ 1コ
ピーマン 2コ
赤パプリカ 1/2コ
とうもろこし 1/2本
サラダ油 適宜
もやし 1袋
えのき茸 1袋
 
A  
白みそ(辛口) 100g
砂糖 大さじ4
みりん 大さじ2強
大さじ2
にんにく(すりおろし) 少々
 
バター 40g

作り方

  1. 鮭に塩と酒で下味を付けます。ホタテは格子状に切り込みを入れます。
  2. じゃがいもは乱切りにして下茹でし、キャベツはざく切り、玉ねぎは半月切り、ピーマン、パプリカは乱切り、とうもろこしは輪切りにして下茹でします。
  3. 鉄板の上に油を薄く塗り、じゃがいも、キャベツ、もやし、玉ねぎ、ピーマン、パプリカ、えのき茸、とうもろこしの順にのせます。
  4. フタをしてしばらく焼きます。その上に1.をのせ、混ぜ合わせた(A)をかけてバターをのせ、混ぜ合わせるようにして焼き上げます。

※お好みで七味唐辛子を振りながら召し上がります

イカ飯

圧力鍋でふんわり優しい味のイカ飯を作りましょう

エネルギー226kcal、タンパク質29.0g、脂質2.0g、塩分2.1g(1人分)
材料(4人分) 分量
スルメイカ 小4杯
もち米 1/2カップ
 
A  
800ml
50ml
砂糖 大さじ3
 
しょうゆ 70ml
つまようじ 4本

作り方

  1. イカは腹わたを抜きます。足先は切り落とします。
  2. もち米は洗って30分~1時間程水に浸けておきます。
  3. もち米の水気を切り、イカの胴に5~6分目まで詰め、口をつまようじでしっかりと止めます。
  4. 圧力鍋に(A)を煮立てて3.と1.の足を入れ、沸騰してからフタをして圧力がかかったら火を弱め、10~15分間煮立て火を止めます。(通常の鍋で50分程かけてじっくり煮ても良いです)
  5. 圧力が下がったらフタを開けて取り出し、つまようじを取って、切り分けます。

※写真には青もみじを添えました

日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~
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