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インターネット公開文化講座

文化講座

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日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第2回:東北

 前シリーズでは「発酵食品の魅力にせまる」と題し、代表的な発酵食品を毎月順番に取り上げ、その特徴や健康効果、おすすめの料理をご紹介しました。今シリーズでは、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピにしてご紹介しています。

第2回目の今月は、「東北」です。

東日本大震災により被災された皆さまへ心よりお見舞い申し上げます
被災地が一日も早く復興することを、心よりお祈り申し上げます

1.東北地方

宮城県・気仙沼湾岩井崎・陸中海岸国立公園(現在の三陸復興国立公園)前での筆者
(2009年6月)

青森県

  • 面積:9,644.55km2
  • 人口:1,338,181人
  • 県庁所在地:青森市

秋田県

  • 面積:11,636.28km2
  • 人口:1,052,698人
  • 県庁所在地:秋田市

岩手県

  • 面積:15,278.89km2
  • 人口:1,295,900人
  • 県庁所在地:盛岡市

宮城県

  • 面積:7,285.77km2
  • 人口:2,326,702人
  • 県庁所在地:仙台市

山形県

  • 面積:9,323.46km2
  • 人口:1,143,434人
  • 県庁所在地:山形市

福島県

  • 面積:13,782.76km2
  • 人口:1,949,637人
  • 県庁所在地:福島市

2.東北地方の食文化

東北地方は山菜の宝庫です。長い冬が終わり春になると、いっせいにネマガリタケ・ミズ・シオデ・ウルイなどの香り高い山菜が出始めます。
夏から秋にかけては、ホヤ・イカ・ウニ・アワビ・鮭・ホタテなどの海産物が見事な漁獲量を誇り、秋にはうまい米自慢となり、りんごが色づき、山はキノコであふれます。採れたての米は滋味豊かな日本酒となり、その米や酒を楽しみながらの鍋物は友を呼び、河原で友と共に食べる芋煮会となったり、きりたんぽ鍋という名物を生み出しました。
しかしもともとこの地の食卓は、「長い冬に育まれた知恵の塊」でした。長く厳しい冬という自然と戦って暮らす生活の中で、人々は野菜や魚を漬物や乾物にするなどの貯蔵文化を身につけ、それらを友と分け合う中で人を思いやる心や粘り強い連帯の力を身につけたのです。東北人の食卓には今もなお、自然と戦って暮らした先人の知恵があふれています。

3.東北地方の名産品と郷土料理

東北地方には数多くの名産品がありますが、ここではその一部を紹介します。

★青森県

(1)せんべい汁

青森県八戸市周辺の郷土料理。
せんべい汁専用の南部煎餅を使い、ごぼうやキノコ、ねぎなどの具材と共に、しょうゆ味で煮立てた汁物です。
汁に使用する南部煎餅は、「かやき煎餅」と呼ばれるもので、汁の具にする事を前提とした煮込んでも崩れにくい煎餅です。
だし汁を吸った煎餅は、すいとんの歯ごたえを強くしたような食感となります。
もともとは救荒食品だったとされるせんべい汁ですが、近年"B級グルメ"で大人気となっています。

(2)りんご

生産量日本一を誇ります。
全国生産量の約55%です。
様々な品種が作られており、青森県で生まれた品種もあります。
日本で最も一般的に栽培されている「ふじ」は、青森県藤崎町で誕生した事からついた名前で、近年は国外にも盛んに輸出されています。

★岩手県

(1)岩手三大麺

冷麺

冷麺のルーツは北朝鮮生まれの在日1世の青木輝人(ヤン・ヨンチョル)が、1954年(昭和29年)5月に盛岡市で「食道園」を開業した事に始まります。
かみきれないほどのコシの強い麺は当初は盛岡の人には不評で、「ゴムを食べているようだ」などと言われました。
当時は辛いキムチも日本では一般的ではなかったこともあり、まったく受け入れられませんでした。
青木は「故郷の味」を守りながらも、麺を食べやすく変えたところ、盛岡の新しいもの好きな若者たちの間で「一度食べたらあとを引く」と評判になり、店には常連客があふれるようになりました。

花巻市内「明月館(岩手県花巻市西宮野目13-63-5)」で筆者が食べた冷麺

左側のキムチを汁ごとたっぷり入れて食べます
(2009年6月)

わんこそば

熱いそばつゆをくぐらせた一口大のそばを椀に入れ、客が食べ終わるやいなや次々とそばを入れ続け、客が満腹になってフタを閉めるまで続けるスタイル。
盛岡・花巻では毎年わんこそば大会が開催され、賑わっています。
長野県の戸隠そば、島根県の出雲そばと並び、日本三大そばの一つとされています。

盛岡じゃじゃ麺

今から50年程前に旧満州(現在の中国東北部)に移住していた人が、現地で食べた炸醤麺(ジャージャーメン)を元に盛岡の人の舌に合うように工夫をし、「じゃじゃ麺」というオリジナルを完成させたといわれています。
中華麺ではなく、平べったいきしめんかうどんのような独特の麺を使い、秘伝の肉みそ・きゅうり・ねぎなどをトッピングして食べます。
じゃじゃ麺ファンの最後の楽しみは「チータン」です。麺を食べ終わったら、器に卵を割り入れて麺のゆで汁を注いでもらい、ねぎや肉味噌を加えるとおいしい「チータン」の出来上がりです。

★山形県

(1)あけびやき

山形県「出羽屋(山形県西川町間沢58)」で筆者が食べたあけびやき
(1989年10月)

あけびの皮にきのこのみそ煮を入れ、たっぷりの油で焼いたものです。
中身を食べるのではなく、皮を食べるのが山形県ならでは。
あけび料理は他にも、干したあけびを使った煮物などさまざまです。


(2)さくらんぼ

山形県寒河江市でさくらんぼ狩りをしている筆者
(1989年6月)

さくらんぼの収穫量全国1位は山形県です。
(全国のさくらんぼ収穫量の約7割を占めています)


★宮城県

(1)ホヤ料理

気仙沼漁港近くの店で食べた殻付ホヤ
(2009年6月)

ホヤは海底の岩礁に着生する海産動物で、見た目がパイナップルに似ているので、「海のパイナップル」と呼ばれています。
最も身が厚くなる6~7月が旬で、鮮度が良いと熟したフルーツのような甘い香りと味がします。
三陸沿岸で漁獲され、刺身や酢の物、焼き物など、酒の肴として食べられます。


宮城の気仙沼漁港では、市場に流通することがほとんどない「マンボウ」なども食べられます。
筆者はマンボウの食感が大好きです。

気仙沼漁港近くの店で食べたマンボウ
(2009年6月)

(2)牛タン料理

仙台の牛タン専門店「利久(宮城県仙台市青葉区中央1-1-1仙台駅3階牛たん通り)」で食べた厚切り・牛タン焼き
(2009年6月)

タンとは舌を意味する英語です。仙台で焼き鳥屋を経営する佐野啓四郎さんが、昭和23年に牛タン焼きの専門店を開業したところから始まりました。
牛タンは高たんぱく・低脂肪であることなどがマスコミで取り上げられるようになり、全国で知られるようになりました。

ちなみに、塩味のタンの「タン塩」は石焼ビビンバの石鍋などの発案で知られる銀座清香園総本店の張貞子さんが、スウェーデンの空港で見たタンの燻製をヒントに、タンを塩とレモンで食べることを始めたと言われています。

(3)ずんだ餅(末尾にレシピを紹介しています)

仙台で食べたずんだ餅
(2009年6月)

ずんだ餅はお盆に仏前に供えるものとして、古くから東北地方で食べられてきた郷土菓子です。枝豆を茹でてすり潰し、砂糖を混ぜた枝豆あんを餅にまぶして作ります。豆を打ちつけるようにつぶしたことから「豆打(ずだ)」がなまったという説と、「甚太(じんた)」という老人が作り始めたものが訛って「ずんだ」と呼ばれるようになったという説などがあります。


★秋田県

(1)稲庭うどん(末尾に稲庭うどんを美味しく食べる調味料を紹介しています)

秋田で食べた稲庭うどん
(1991年5月)

秋田県湯沢市稲庭町発祥の手延べ製法の干しうどんです。食用植物油を使用せずに打ち粉にでん粉を使う点や、ひやむぎより若干太く平べったい形状が特徴です。麺の中に多く含まれる気泡が、独特のつるりとした食感やコシの強さを生んでいます。


(2)きりたんぽ

うるち米を炊いてすり鉢に入れてつぶし、ちくわのように杉の棒に巻きつけて炭火で焼いた秋田県の郷土料理。
きりたんぽ鍋は比内地鶏のガラでとっただし汁にしょうゆや砂糖などで味つけし、やや甘辛味のスープを作ってきのこやごぼう、地鶏、セリなどと共に入れて煮た鍋物です。きりたんぽは最後にサッと煮ます。

料亭「あきたくらぶ」前での筆者
(1991年5月)

あきたくらぶで筆者が食べたきりたんぽ鍋
(1991年5月)

あきくらぶは1883年(明治16年)創業(現在は閉店しております)。
狩人の携帯食であったといわれるきりたんぽを、鍋物にしてお客さんへ出しました。

★福島県

(1)わっぱ飯

わっぱとは、山で働く人々や旅人が弁当の器として使った丸い形の箱のことです。
曲げわっぱにご飯を入れ、季節の野菜や山菜、肉、魚などをのせて蒸しあげたものが、わっぱ飯です。

割烹・会津料理「田季野」前での筆者
(1988年10月)

田季野(福島県会津若松市栄町5-31 鐘つき堂小路内)は1917年(昭和45年)創業、元祖・輪箱飯(わっぱ飯)の店と言われています

4.東北の郷土料理レシピ

ずんだもち

枝豆の自然な色合いが美しく、豆の風味が楽しめる宮城の郷土菓子です

エネルギー243kcal、タンパク質8.3g、脂質3.7g、塩分0.3g(1人分)
材料(2人分) 分量
枝豆(国産・さやつき) 200g(1袋)
 
A  
砂糖 大さじ3強
少々
 
大さじ1/2
 
B  
白玉粉 60g
60ml
 

作り方

  1. 枝豆は多めの塩を入れた熱湯で柔らかくなるまで茹で、さやから出して薄皮をむきます。
  2. 1.をフードプロセッサーにかけます(又はすり鉢でしっかりすりつぶします)。
  3. 2.に(A)を加えてさらに混ぜ、少しずつ分量の水を加えて混ぜます。
  4. (B)を手で練り合わせ、10コに丸めます。
  5. 4.を熱湯で茹で、水に取ります。
  6. 5.の水気をふいて3.のあんでからめ、器に盛ります。
稲庭うどんを美味しく食べる調味料・青唐辛子のしょうゆ漬け

コシのあるうどんと、ピリっとした辛さがクセになる味です!

エネルギー13kcal、タンパク質0.5g、脂質0.4g、塩分0.3g(小さじ1杯分)
材料 出来上り3カップ分(約460g) 分量
青唐辛子 600g
ごま油 大さじ2
 
A  
しょうゆ 120ml
みりん 60ml
60ml
 
花かつお(パックタイプ) 20g

作り方

  1. 唐辛子を調理する前に、ビニール手袋、マスク、メガネをつけます。唐辛子は洗ってヘタを切り、キッチンペーパーで水気を拭きます。キッチンバサミで半分に切ってフードプロセッサーに粗くかけます。
  2. フライパンにごま油を入れて1.を炒め、(A)と花かつおを入れて5分間程煮ます。
  3. 2.をボウルへ移し、冷めたら保存容器へ入れ、冷蔵庫で1週間程熟成させます。

※小分けにして冷凍すると年中使えます。
冷たいうどんの薬味の他、冷や奴や糸引き納豆の薬味としても喜ばれます。

茹でた稲庭うどんに青唐辛子のしょうゆ漬けをのせ、しょうゆとすだちのしぼり汁をかけ、混ぜて食べるのが絶品です!

日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~
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