文化講座
第4回:成長期のチャレンジ弁当 ~好き嫌いを克服する工夫~
前シリーズでは「歳時記とごはん」と題し、日本人として伝え続けていきたい正月・七夕・節分などの日本の歳時記と、それにまつわる謂れや慣わし・行事食をオリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、もっと身近な食育として「お弁当の作り方」を旬のレシピとお弁当作りが楽しくなるコツとともにご紹介しています。
第4回目のテーマは「成長期のチャレンジ弁当」
学校生活の一年間で、ちょうど中間にあたるこの時期。生活のリズムも徐々に付いてきた頃ではないでしょうか。時間的にも気持ち的にも少し余裕が出てくる今だからこそ是非取り組みたいのが、好き嫌いの克服です。子どもの偏食は、食事に関する悩みの第一位にあげられるほど母親の心配のもとになっています。今月のこのページは、子どもが好き嫌いをせず、栄養バランスの良い食事をとることができるよう応援します。
★偏食とは
アレルギーとは異なり、特定の食品を嫌って食べないことを偏食といいます。母親としてはとても心配ですが、人にはある程度好き嫌いがあるものです。嗜好は年齢とともに変化しますので、他の食材で必要な栄養素を補える範囲のものなら、あまり問題視することはありません。しかし極端な偏食は、子どもの発育・発達を阻害する危険がありますので、改善が必要です。
★偏食になる原因
- (1)
- 乳幼児期に食品の与え方が偏っていたり、食品体験が乏しいことが、偏食の大きな原因となります。好き嫌いの約半分は食べず嫌いによるものです。食品に対する不快な経験や思い出も、偏食の原因となります。
- (2)
- 神経質や過敏な性格により、新しい食品に適応しにくい場合があります。
- (3)
- 親が偏った食生活をしていると、子どもにも影響します。
- (4)
- 無理強いは食事に対する嫌悪感を増大し、食べ物への興味を失わせます。
- (5)
- 濃い味付け、大きくて食べにくい、かたい、においや香りが強い食品や、新しい味などの料理は、子どもにはなじみにくく、偏食の原因になります。
- (6)
- 野菜、魚、牛乳嫌いの原因
<野菜>
バサバサしている、かたい、味がないなどの理由や、魚や肉に比べ風味がそれぞれ違うため、一つ一つの野菜に慣れるのに時間がかかります。
■子どもが好きな野菜・嫌いな野菜
好きな野菜
サツマイモ、枝豆、ジャガイモ、トウモロコシ、トマト、ニンジン、かぼちゃ など
甘みのある野菜を好みます。色は黄や赤系が多いようです。
嫌いな野菜
ピーマン、ナス、ニラ、オクラ、ネギ、水菜、アスパラガス、ゴボウ など
においやアクが強いものが多いようです。色は緑が目立ちます。
<魚>
魚は料理に手間がかかるなどの理由により、最近大人にも魚離れが進み、子どもも食べる機会が少なくなっています。また生臭い、骨を取るのが面倒、箸を上手に使えないなども原因となります。
<牛乳>
味やにおいが嫌いであったり、甘いジュースなどを多く与えていると牛乳を飲まなかったり、飲む機会が少なくなります。
偏食をなくすための工夫
- (1)
- 親が食事や健康に関する正しい知識を習得し、バランスのとれた食事作りをすることが大切です。親も偏食をなくし、正しい食習慣を実行します。
- (2)
- 子どもにわかりやすく、なぜ体に良い食べ物なのかを教えて食べさせることも必要です。
- (3)
- 子どもの成長に合わせて、多くの食品や料理に慣れさせます。
- (4)
- 嫌いな食品は強制しないでしばらくの間中止し、調理に変化をつけて再度与えてみます。子どもは成長に伴い好みが簡単に変わったり、気分によっても変わりますから、嫌いと決めつけないで根気よく気長に直していきます。
- (5)
- 子どものいいなりに好きな物ばかりを与えないで、嫌いなものは好きな物の中に少量入れ、徐々に増やしていきます。
- (6)
- 食べやすい料理を心掛けます。子どもにとっておいしい料理は食べやすいことです。かむ力に合わせたかたさ、大きさが大切です。
- (7)
- 楽しい雰囲気で食べる習慣、子どもに買物や食事作りを手伝わせる習慣、友人と一緒の食事、野外での食事など変化を与えることも食事の楽しさを教え、偏食を直すために重要です。また、食べることができたら、ほめてあげるようにしましょう。
- (8)
- 野菜、魚、牛乳料理のポイント
<野菜>
- 香りの強いものは避けたり、バターや牛乳でくさみを消したりします。
- かたい野菜は柔らかく煮て水分を多めにし、のどごしを良くします。
- 嫌いな野菜は目立たないようにすり卸したり、みじん切りにして好きな料理に入れ、慣れてきたら薄切り、形のまま食べられるように進めていきます。
- 生野菜より、ゆでる、炒める、揚げる、煮る料理にしたり、汁物やあんかけにしたり、おやつに入れたりすると良いでしょう。
<魚>
- においや姿、骨の苦手な子どもには、白身魚の切り身から与え、パサつかないように煮汁を多くしたり、他の食品と一緒に混ぜ、徐々に増やしていきます。
- 子どもには、魚は油を使った料理が食べやすく、好まれる傾向があります。
<牛乳>
- みそ、ココア、紅茶に入れて臭みをなくし、徐々に慣れていきます。
- 子どもの好きなシチューやクリームパスタなどの料理に使ったり、おやつに入れると良いでしょう。
★子どもが喜んで食べる!献立と調理の工夫
食べやすさに重点をおいて、献立や調理を工夫します。材料はある程度小さく切るのが基本です。
克服のポイント(1)
嫌いなものは包んで隠す、マヨネーズやトマト味など好きな味付けで食べやすく
■野菜のサモサ風
小さく切った野菜とカニの身をマヨネーズであえ、春巻きの皮で包んで揚げます。油とマヨネーズの風味が食欲を刺激します。
■魚のロールキャベツ
骨があるから、生臭いからと嫌われがちな魚は、キャベツなどに巻き込むと食べやすくなります。好みの味付けからスタートし、徐々に形をととのえ、骨が上手にとれる一尾魚にまで、自然に成長させたいものです。
克服のポイント(2)
好きなものと一緒に食べる
■ハンバーグの野菜煮込み
子どもたちに大人気のハンバーグに、野菜卵あんをかけた一皿。柔らかく煮えた野菜がのど越しも良く、食べやすいと喜ばれます。
※今月のこのページは、伊藤華づ枝の著書「家庭の健康料理辞典」を参考に作成しました。
成長期のチャレンジ弁当

苦手な野菜類はかやくご飯として混ぜ込み、薄焼き卵で包みました。食べやすい、形がかわいい、色がきれいと、楽しい要素が満載です。リボン代わりのほうれん草なら喜んで食べられそうですね。肉団子にはコーンをたっぷりまぶし、まるで弁当箱に黄色の花が咲いたように華やかになりました。育ち盛りの子どもに食べさせたいチーズやトマト、ブロッコリーなどは、かつおやゴマで味に変化をつけることで食が進みます。お弁当で友達と一緒に食べると、苦手なものが食べられたということがよくあります。一つ食べられると自信がつき、心と体の成長につながります。「きれいに食べられたわね」と、とびきりの笑顔でほめてあげることも、好き嫌い克服への近道になるでしょう。
★卵巻きかやくおにぎり
~何が入っているのかとっても楽しみ~
材料 おにぎり12コ分 | 1人分=3コ |
米 | 1カップ |
水 | 140ml |
干ししいたけ(水で戻す) | 2枚 |
ごぼう | 20g |
にんじん | 30g |
しいたけの戻し汁 | 100ml |
鶏むね肉 | 60g |
しょうゆ | 大さじ1 |
塩 | 少々 |
こんにゃく | 1/6枚 |
えのき茸 | 1/3袋 |
しめじ | 30g |
むき栗(または甘栗) | 3粒 |
卵 | 3コ |
水 | 少々 |
塩 | 少々 |
油 | 適宜 |
作り方
- 米は炊く30分程前に洗い、水加減をしておきます。米は1合ではなく200mlの計量カップで1杯分の200mlを使用。
- 干ししいたけは水で戻し、細かく刻みます。
- ごぼうとにんじんは小さく刻み、しいたけの戻し汁で煮て2.を加えます。
- 鶏肉は刻んでボウルに入れ、しょうゆと塩で下味をつけます。ゆでて小さく刻んだこんにゃくとほぐしたしめじ、短く切ったえのきも加えます。
- 3.に4.を加え、汁気がごく少なくなるまで煮上げます。
- 1.に刻んだ栗を加えて普通に炊き、火が切れる直前に5.を加えて蒸らします。
- 卵に水と塩少々を加え、うす焼き卵を12枚作ります。
- ラップの上に7.をのせ、6.を12等分にのせて包み、茶巾の形にします。
※ゆでたほうれん草で茶巾の口を縛りました
★肉団子のコーン蒸し
~見た目のかわいさが食欲をそそります~
材料 9コ分 | 1人分=3コ |
(A) | 豚ひき肉 | 40g |
鶏ひき肉 | 40g |
しいたけ(みじん切り) | 小1枚 |
ねぎ(みじん切り) | 2cm |
しょうが(おろす) | 小1かけ |
塩 | 少々 |
しょうゆ | 小さじ1/2 |
こしょう | 少々 |
かたくり粉 | 小さじ2 |
水 | 小さじ2 |
スイートコーン(粒状) | 1カップ |
かたくり粉 | 大さじ1~2 |
作り方
- ボウルに(A)を混ぜ合わせてよく練り、9コに丸めます。
- コーンの水気をよくふき、かたくり粉をまぶしつけます。
- 1.に2.をまぶしつけます。
- 蒸し器に3.を並べ、強火で10~12分間位蒸します。
★チーズとトマトのおかかまぶし
材料 | 2人分 |
カマンベールチーズ | 10g |
かつおパック | 1/3袋 |
ミニトマト | 3コ |
万能ねぎ | 1本 |
作り方
- チーズは小角切りにし、かつおパックをまぶします。
- ミニトマトは半分に切り、万能ねぎは小口切りにします。
- 1.と2.をサッと混ぜ合わせます。
★ゆでキャベツとブロッコリーのごま和え
材料 | 2人分 |
キャベツ | 2枚 |
ブロッコリー | 30g |
すりゴマ | 小さじ2 |
(A) | |
しょうゆ | 小さじ2強 |
砂糖 | 小さじ1 |
水 | 小さじ1 |
作り方
- キャベツはサッとゆで、食べやすい大きさに切ります。
- ブロッコリーはゆで、小さくほぐします。
- すりゴマと(A)を合わせ、1.と2.を和えます。
★季節のフルーツなど
リンゴを食べやすい大きさに切り、皮を市松模様にむきました。