文化講座
第2回:運動会の必勝弁当 ~おいしそう!に見えるお弁当作りのコツ~
前シリーズでは「歳時記とごはん」と題し、日本人として伝え続けていきたい正月・七夕・節分などの日本の歳時記と、それにまつわる謂れや慣わし・行事食をオリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、もっと身近な食育として「お弁当の作り方」を旬のレシピとお弁当作りが楽しくなるコツとともにご紹介しています。
第2回目のテーマは「運動会の必勝弁当」
夏休みが終わり、2学期が始まりました。まだまだ残暑の季節ですが、朝夕の涼しい風に秋の訪れを感じます。これからの過ごしやすい季節は、体を動かすのに最適な気候です。買い物に行ったとき、いつもより少し遠くの駐車場にとめるだけでも、良い運動になりますよ。自分に合った無理のない範囲で、スポーツの秋をお楽しみください。さて、秋には楽しいイベントが多くありますが、中でもお弁当に気を遣うものに、運動会があげられます。運動会でのお弁当は、周りにいる大勢の人の目に触れる上、ビデオに映れば一生残るなど、悩みの多い存在です。逆に言えば、ここで目を引くお弁当を披露することで、「できる主婦」「料理上手」をアピールできる絶好の機会といえます。そこで今月は、難しいことをしなくても「おいしそう」「みんなとちょっと違う」お弁当を作るコツをお話します。
★おいしそうに見えるお弁当とは
娘のために作った6年間のお弁当記録

筆者の娘(高校生の頃)

お弁当の記録
長女が中学生になった時から高校を卒業するまでの6年間、お弁当を作り毎日写真に撮って記録に残しました。管理栄養士という立場上、育ち盛りの子どもの食事には絶対手が抜けません。栄養面、衛生面、そして見た目を考慮し、お弁当を作りました。
慌しい朝にできるだけ手早く、見た目も美しく、もちろんおいしく。私が娘のために実際に作ったお弁当の中から、ポイントと共にいくつかお弁当の写真もご紹介します。
(1)準備編
- メニューを考える
- 下準備をする
- 煮物を作っておく
- ついでに作って冷凍しておく
ゆっくり考えられる前日にメニューを考えます。何を作るか考えてあるだけで、気持ちにもゆとりができ、朝スムーズにお弁当を作ることができます。
材料を切ったり、野菜を下ゆでするなどの下準備は、夕食の時に一緒にしておきます。下味も前夜につけます。但し、肉は前日から漬け込むとかたくなるため、できれば当日の朝が良いでしょう。魚は前夜から漬けておくと味がしまり、身がしっかりするため前夜から準備します。
煮物は前夜に作っておき、朝再度火を通します。お弁当作りは毎日のことですから、あらかじめおかずが一品でもできていると、気持ちに余裕ができてお弁当作りにストレスを感じにくくなります。
毎日の食事でハンバーグやミートソースなどを作る時には、お弁当用に少し取り分けて冷凍しておきます。あとは焼くだけ、火を通すだけのものはとても便利です。
(2)色彩編
- 見た目が大切
- 白・黒・赤・黄・緑をバランス良く
- お弁当箱の色や形も演出のうち

三色そぼろ弁当
味はもちろん重要ですが、お弁当箱のフタをあけた時、一番初めに感じるのは視覚です。色が美しいとお弁当がおいしそうに、華やかに見えます。
ご飯やパンの白、のりやこんにゃく、肉の黒、トマトや赤パプリカ、ニンジンの赤、卵やコーン、カボチャの黄、ほうれん草やピーマン、ブロッコリー、グリーンアスパラの緑などをバランスよく取り入れましょう。

明るい色をプラスして
今日のおかずは全体的に色が暗い、あと一色明るい色が欲しいという時には、おかずケースやピックなどを上手に利用しましょう。お弁当箱を明るい色にするのも有効です。同じおかずでも、いつもとお弁当箱が変わるだけでガラッと印象が変わります。

シリコン製のケース
洗って繰り返し使うことができるシリコン製のおかずケースもあります。電子レンジ対応で、そのまま加熱できるため便利です。ゴミの削減にもつながります。
(3)切り方、詰め方編
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斜めに切る
卵焼きや春巻きなど斜めに切って詰めるとお弁当に立体感が生まれ、おいしそうに見えます。
- 立てて詰める
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単調に並べない
同じものを一直線に並べず、少しずらしたり、斜めに詰めることでグッとセンスアップします。
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隙間を埋める
お弁当は持ち歩く際に動くため、隙間があると片方によったり、つぶれたりして見た目が悪くなってしまいます。空白を残さないように、きっちり詰めます。あと一品足りない時には、プチトマトやピックに刺した枝豆、ひと口チーズなどが重宝します。
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具を上に飾る
混ぜご飯やめん類などの具は上に飾ってよく見えるようにします。ニンジンやピーマンなど、色がきれいな野菜が見えると彩りが良くなります。少しの魚や肉でも、よく見える位置にあると豪華になります。
松茸にぎり弁当
うなぎ混ぜご飯弁当
横に寝かせて詰めるのではなく、立てて詰めると見た目が良くなります。切った断面を上にするときれいです。

サンドイッチ弁当

いなり寿司弁当
(4)応用編
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珍しいものが目を引く
お弁当はどうしても同じようなものになりがちです。定番も必要ですが、時には変わったものを取り入れることをおすすめします。いつもと違う、みんなと違う、お弁当にこんなもの?という意外性が目を引きます。
天むす弁当
花巻き寿司弁当
運動会の必勝おやき弁当

運動会の定番であるおにぎりのかわりに、信州名物のおやきを作りました。おやきは手に持って食べやすい上、皮は小麦粉からできているので消化も良く、体力を使う運動会にピッタリ。中に具が入っているので、急いでいる時はそれだけでもOKという優れもの。いつもと違うお弁当に、作り方などお母さん同士の会話も弾みます。運動会の季節は、まだ日差しが強くお弁当が傷みやすいため、付け合せのおかずには防腐作用のある食材を選びました。アウトドア風のボックスに、おやきは立てて、うずらの卵はピックに刺して立体感を出すことで、運動会の気分を盛り上げています。このお弁当で、お子さんもお母さんも笑顔になりますように。
★おやき
~お好みの具をはさんでアレンジ自在~
材料 | 6コ分 |
<生地> | |
(A) | |
薄力粉 | 150g |
ベーキングパウダー | 小さじ1/2 |
塩 | 少々 |
熱湯 | 90~100ml |
<切り干し大根の煮物> | <3コ分> |
切り干し大根(戻して) | 130g(乾20g) |
にんじん | 50g(中1/2本) |
揚げはんぺん | 50g |
だし汁 | 150ml |
サラダ油 | 適量 |
(B) | |
砂糖 | 大さじ1/2 |
しょうゆ | 大さじ1・1/2 |
酒 | 大さじ1 |
<野沢菜> | <3コ分> |
野沢菜 | 45g |
ごま油 | 適量 |
(D) | |
しょうゆ | 少々 |
砂糖 | 少々 |
花かつお | 適量 |
バター | 適量 |
作り方
- ボウルにAを入れ、熱湯を加えて箸で混ぜ、まとまってきたら手でよくこねて耳たぶくらいの硬さにします。
- 切り干し大根は1時間程水に浸けて戻し、固く絞って大きくザク切りにします。
- にんじん、はんぺんは千切りにします。
- なべに油を熱してにんじんを炒め、大根とはんぺんを加えて軽く炒めます。
- (4)にだし汁を加えてしばらく煮て、Bを加えて調味します。
- おやきに包む分だけをペーパータオルで汁気を取り、残りは惣菜としていただきます。
- 野沢菜は細かく刻み、水に浸けて軽く塩抜きします。
- フライパンにごま油を熱して(7)を炒め、(D)を加えて調味し、花かつおも加えます。
- (1)を6等分にして2種類の具を各3コずつ包みます。
- フライパンにバターを軽く敷き、弱火で両面こんがりと焼いた後、蒸し器で15分間程蒸します。
※朝作る場合は、作り方(8)まで前日に準備します。生地は乾燥しないようにビニール袋などに入れ、冷蔵庫に入れておきます。
ひじきの煮物やあんこなどお好みの具でアレンジしましょう。
★ほうれん草のしょうがじょうゆあえ
~防腐作用のあるショウガで運動会でも安心~
材料 | 2人分 |
ほうれん草 | 1/2袋 |
塩 | 少々 |
(A) | |
しょうが(おろす) | 1/2片 |
しょうゆ | 小さじ1/2~1 |
作り方
- ほうれん草は塩ゆでして水に取り、ギュッと水気を絞ります。
- (1)を適当な長さに切り、Aであえて調味します。
★イカの梅あえ
~爽やかな梅の香りで口もさっぱり~
材料 | 2人分 |
イカ | 90g |
きゅうり | 1/2本 |
塩 | 小さじ1/2 |
梅干 | 1コ |
塩 | 少々 |
作り方
- イカは糸切りにし、熱湯でサッとゆでます。
- きゅうりは小口切りにして軽く塩を振り、しんなりしたら洗い流して絞ります。
- 梅干をよくたたいて塩で調味し、梅肉を作って(1)と(2)をあえます。
★うずら卵のカレー煮
うずらの卵はゆでて殻をむきます(うずら卵の水煮でも可)。鍋に水、カレー粉少々を入れ、卵が色づくまで煮ます。よく冷めてからピックに刺します。