文化講座
第11回:家族の健康を気遣う松花堂弁当~気になる症状別お弁当作りのポイント~
前シリーズでは「歳時記とごはん」と題し、日本人として伝え続けていきたい正月・七夕・節分などの日本の歳時記と、それにまつわる謂れや慣わし・行事食をオリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、もっと身近な食育として「お弁当の作り方」を旬のレシピとお弁当作りが楽しくなるコツとともにご紹介しています。
第11回目のテーマは「家族の健康を気遣う松花堂弁当」
降り続く雨の中で、紫陽花が凛とした美しい花を咲かせる今日この頃。花や緑は雨の恵みで輝きを増しています。一方で、梅雨は天候が不順なため気温差が激しく、湿度も高いため、私達は体温調節が難しくなり、体調を崩しやすくなってしまいます。梅雨を気持ちよく過ごすために、睡眠をしっかりとり、バランスの良い食生活と適度な運動を心掛けましょう。今月は、梅雨に起こりやすい体の不調を改善するための栄養アドバイスです。毎日のお弁当作りに取り入れて、梅雨を元気に乗り切りましょう。
★梅雨に起こりやすい体の不調
■原因
梅雨はどうして体調を崩しやすいのでしょうか。それは、「湿度」と「気圧」が大きく関係しています。湿度が高くなると、体内の水分代謝が低下し、体温調節がうまくできなくなります。その結果、体がだるい、やる気が出ないなどといった症状が起こりやすくなります。また、気圧が低くなると体内の圧力を上げてバランスをとろうとするため、細胞が膨張して神経が圧迫されやすくなり、関節が痛い、頭痛、肩がこるなどの痛みも出やすくなります。さらに、低気圧はアレルギー症状の原因となるヒスタミンの分泌を促すため、鼻炎やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が悪化しやすくなります。
■症状と対策
<体がだるい・無気力・疲れがとれない>
1.栄養バランス
栄養素が体中に行き届いていない、あるいはある一定の栄養素だけをとりすぎると、過剰分が滞って代謝がスムーズにいかず、不調を訴えやすくなります。栄養バランスを見直しましょう。炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を毎食組み合わせます。栄養バランスについて、詳しくは「お弁当の作り方」第5回:健康家族のスタミナ弁当~栄養バランスを考える~でご紹介していますので、そちらをご参照ください。また、食欲がないからといって口当りの良い飲み物やあっさりした食事ばかりしていると、さらなる栄養不足を招き、疲労回復を遅らせてしまいます。食欲増進のための工夫が大切です。
■食欲増進のための工夫■
- 香辛料を上手に取り入れましょう
- ハーブや青じそ、みょうがなどの香味野菜を利用します
- 酢の物など酸味のある一品は、胃液の分泌を促して食欲を増進させ、消化吸収も助けます
- 盛り付けや器(お弁当箱)を変えてみたり、楽しい雰囲気作りも有効です
2.ビタミンB1
糖質をエネルギー源に変えるために必要なビタミンB1は「疲労回復ビタミン」とも呼ばれ、筋肉疲労や食欲不振を防ぐ働きがあります。これから暑くなる季節は、夏バテ予防にも欠かせません。
■ビタミンB1の多い食品■
豚肉、うなぎ、レバー、玄米、胚芽、大豆、大豆製品、種実類(落花生、ゴマなど)、魚類など
3.クエン酸
新陳代謝を活発にして疲労物質の乳糖や余分な脂質を分解、燃焼させて疲労回復に役立ちます。
■クエン酸の多い食品■
レモン、オレンジ、グレープフルーツ、酢、梅干しなど
<頭痛・腰痛・肩こり・関節の痛み>
1.マグネシウム
筋肉の収縮や弛緩のバランスをとっているミネラル分が不足すると、筋肉が異常収縮を起こして痛みが起こりやすくなります。特にマグネシウムは、血圧の正常化・体温調整に関与し、体内の代謝をサポートして筋肉の働きを良くします。
■マグネシウムの多い食品■
ご飯、しらす干し、大豆、大豆製品、納豆、貝類、海藻類、ココア、種実類(アーモンド)など
2.カルシウム
カルシウムは筋肉の収縮に関与しているため、不足すると筋肉の収縮がうまく行えなくなり、関節などに痛みが生じます。
■カルシウムの多い食品■
牛乳・乳製品、小魚、海藻類、青菜など
3.ビタミンE
血行不良も肩こりや関節の痛みにつながります。血行を良くして筋肉の緊張をやわらげ、コリをほぐします。
■ビタミンEの多い食品■
種実類(アーモンドなど)、油、バター、卵、うなぎ、めんたいこ、いくら、モロヘイヤなど
<食欲不振・胃腸の調子が悪い>
1.1日3食、規則正しく、よくかんで腹八分目
朝食抜きや夜遅い食事のように、食事時間や回数が乱れるなどの不規則な食生活は胃腸の負担を増加させ、機能の低下につながります。食べ過ぎも胃腸に負担をかけ、十分な消化吸収が行えないため、調子が悪くなる原因です。腹八分目を心がけましょう。
2.消化の良い食品
消化の良い食品と調理法を選びます。繊維が少なく、やわらかい食品を基本とします。料理は加熱した方が生のままより消化がよくなりますが、肉は加熱しすぎるとかたくなるので注意が必要です。刺激の強い香辛料は避けましょう。
3.減塩
塩分の多い食事は胃腸の負担を重くします。薄味を心がけましょう。減塩はすべての体調不良や生活習慣病の予防に効果があります。
■減塩のための工夫■
- 漬物、乾物、練製品、ハムなど塩分の多い食品の摂取は少量にします
- 汁物は飲み過ぎないように注意し、具だくさんで薄めの味付けにします
- 麺類の食べ過ぎに注意し、汁は残します
- 塩味のかわりに薬味(わさび、しょうがなど)、香味野菜(みつ葉、青じそ、みょうが、ハーブなど)、酸味(柚子、レモンなど)を上手に取り入れます
- だしをきちんととり、だしの旨味を生かします
- 香ばしい焼き目をつけるなど、風味を生かします
- 調味料(しょうゆなど)はかけるよりつけるようにします
- 減塩調味料や減塩食品も安心して多く摂取してしまうと、結局はとりすぎになるので注意します
- 新鮮な食品を選び、持ち味を生かします
家族の健康を気遣う松花堂弁当
松花堂弁当とは、中に十文字の仕切りがあり、かぶせ蓋のあるお弁当箱を用いたお弁当のことをいいます。今月は、疲れ気味の家族を喜ばせるための松花堂弁当を用意しました。いつもと違うお弁当箱や盛り付けが、とても新鮮で食欲をそそります。彩り良く、空間を上手に利用して盛り付けましょう。しょうがは体を温めて代謝を高めるため、疲労回復を助けます。口当たりが滑らかで食べやすい牛乳豆腐は、消化吸収も良いため、疲れた体をやさしく癒してくれます。しょうがや青じそ、青ゆずのさわやかな香りとスッキリ涼しげな見た目が、梅雨で沈みがちな気分を軽くしてくれるでしょう。
★新しょうがごはん
材料 | 2~3人分 |
米 | 1・1/4カップ |
もち米 | 1/4カップ |
だし汁(冷たいもの) (かつおと昆布で取る) |
330ml~350ml |
新しょうが(塊) | 40~50g |
油揚げ | 2枚 |
(A) | |
みりん | 大さじ1 |
うすくちしょうゆ | 大さじ1 |
塩 | 小さじ1/2弱 |
枝豆 | 4さや |
作り方
- 米は洗ってザルにあげ、40分~1時間前に分量のだし汁に浸けておきます。
- しょうがは汚れをスプーンで削り、繊維にそってせん切りし、水にさらします。
- 油揚げは熱湯をかけて油抜きをして、細かく刻みます。
- 2.と3.を(A)にからませておきます。
- 1.に4.を加えてザッと混ぜて普通に炊き、10分間程蒸らします。
- さっくりと混ぜて器に盛り(又は物相型で抜く)、枝豆を添えます。
★和風春巻き
材料 | 2~3人分 |
ゆでたけのこ | 60g |
卵 | 2個 |
(A) | |
塩 | 少々 |
こしょう | 少々 |
マヨネーズ | 小さじ2 |
サラダ油 | 大さじ1/2 |
豚薄切り肉 (しゃぶしゃぶ用) |
130g |
(B) | |
塩 | 少々 |
こしょう | 少々 |
青じその葉 | 10枚 |
春巻きの皮 | 1/2袋(5枚) |
小麦粉 | 大さじ1~1・1/2 |
水 | 大さじ1~1・1/2 |
揚げ油 | 適量 |
ポン酢しょうゆ | 適量 |
溶き辛子 (チューブタイプ) |
適量 |
作り方
- たけのこは細切りにし、水気をギュッと絞ります。
- 卵をときほぐして1.を入れ(A)で調味します。
- フライパンに油を入れて2.を加え、やわらか目のいり卵を作ります。
- 豚肉に(B)で軽く下味をつけます。
-
春巻きの皮を広げ、豚肉を手前に横に並べ、その上に青じその葉2枚、3.のいり卵をのせて、くるくると巻きます。
- 5.を色よく揚げてお好みでポン酢や辛子を添えます。
★こんにゃくの土佐煮
材料 | 2人分 |
板こんにゃく | 1/2丁 |
サラダ油 | 小さじ1/2 |
(A) | |
しょうゆ | 小さじ2強 |
砂糖 | 小さじ1/2 |
かつおパック | 1/2袋 |
作り方
- こんにゃくは塩もみをしてから、下ゆでをします。
- 8等分の短冊切りにし、真ん中に縦に切り込みを入れて切れ目の中に片端をくぐらせてねじります。
- 2.を鍋に入れ、サラダ油で炒めてから、中火にして(A)で調味します。
- 仕上り間際にかつおパックを混ぜ合わせます。
※お好みで一味唐辛子をふります。
★牛乳豆腐
材料 | 4~6人分・流し缶1缶分 |
牛乳 | 400ml |
吉野くず | 60g |
(A) | |
エバミルク | 150ml |
薄口しょうゆ | 小さじ1 |
酒 | 大さじ2 |
塩 | 少々 |
(B) | |
だし汁 | 200ml |
薄口しょうゆ | 大さじ1~1・1/2 |
みりん | 大さじ1~1・1/2 |
塩 | 少々 |
つるむらさき | 100g |
青ゆず | 少々 |
作り方
- ボウルにくずを入れて、牛乳を徐々に加えながら溶きます。
- 1.を鍋に流し入れ、(A)を加えて煮立て、ゆっくりと煮ます。
- 2.を流し缶に入れて冷やし固めます。
- 別の鍋に(B)を煮立てます。
- 3.を4~6切れに切り分けて器に盛り、4.をかけます。
- つるむらさきは塩ゆでして水に取り、食べやすい大きさに切り5.に添えます。
- 青ゆずのすりおろしをふりかけます。