自然体験 | 組合員レポート
山村たいけんin東白川 花餅づくりとワラ細工を体験しよう。
平成14年12月1日(日) くもり時々雨
岐阜県加茂郡東白川村 こもれびの里にて
参加者11組44名
- 案内人/川尻秀樹さん
技術士(林業部門)、樹木医、森林インストラクター、きのこアドバイザーなどとして活動。現在、岐阜県立森林文化アカデミー林業経営支援グループに勤務。天生県立自然公園公認ガイドとしても活躍中。
- ワラ細工花餅づくり講師/東白川村の方々
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四季桜がちらほらとほころび、雪虫が舞う頃になると、新しい年を迎えるための準備が始まる東白川村。新年を間近に控え、稲ワラを使ったしめ縄や、紅白餅を花のように咲かせてつくる花餅づくりの体験をした。
10:05~ |
開会式
本日の案内人川尻秀樹さんのあいさつ。「東白川村は寺が1つもない神道の村。ここ、 こもれびの里も神土(かんど)という地名なんです。今日は12月1日。1年で最後の月で す。新年に神さまに捧げるものを、この神の村で一緒につくりましょう」。 |
10:15~ |
稲ワラ文化のお話を聞く
こもれびの館の母屋にて東白川村の藤井茂樹さんと、川尻さんより地元に伝わるワラ細工やワラにまつわるお話を聞く。はじめに藤井さんが見せてくれたのはワラジ。人だけでなく、馬や牛にはかせるワラジもあってびっくり!地元では今でも山から材木を運び出すときなどに牛を使うことがあり、これらはみな現役の道具だということ。ほかにも暑さ、寒さ、雨をしのぐための別名バンドリと呼ばれる胴蓑(みの)や、切り餅が2升分入るバッグのような形のせんぐ俵など、珍しいワラ細工が次々登場。これらのワラ細工は今ではつくれる人がなかなかいない貴重品なのだとか。また、ワラ細工に欠かせない道具が「槌(つち)」。湿らせたワラをたたいてやわらかくする木製の道具で、幻の生き物「ツチノコ」は、これに形が似ているところからその名がついたとか。
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←ワラでつくった胴蓑は、カッコイイ! |
「古来よりワラには神聖なる稲霊がこもっているとされ、ワラでつくったしめ縄(しめ飾り)を掲げるのは清浄・神聖な場所を区画するという意味があるんです。お正月に玄関や神棚などにしめ縄を飾るのは、家の中に悪霊を入れず、穢(けが)れを取りさり、無病息災・家内安全を願ってのこと。身近なところでは神社の鳥居・社殿・手水舎に掲げたものや、巨大な岩や樹木、家の建前などに張ったりしたものを見かけます。それから、しめ縄をつくるのに青刈りしたワラを使うのは、自分たちの生活の糧を減らして神さまに捧げるという意味があるんですよ。ワラは昔も今も貴重品。昔は、山へ柴刈りに行っても、刈った柴はその辺に生えていた草などでまとめたほど。貴重品のワラは使わなかったんです。今は、稲を手で刈らなくなったので、ワラそのものが手に入りにくくなりました」。川尻さんのお話から、今まで何気なく飾っていたしめ縄の意味を知り、ワラの大切さも実感。
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10:30~ |
ワラをなう
日常で使うものは右ない、神さまにお供えするものは左ないが基本。ワラを3本ぐらいずつ両手に持って、根元をひざや足の指の間にはさみ、掌をこすりあわせるようにしてワラによりをかけていく。まずは名人藤井さんのお手本。ワラ2本の細い縄から、ワラ20本程度の太い縄まで、見事な手つきでスルスルなっていく。その早技に参加者は「わあ、すごい!」。しかし、自分でやってみるとなかなか思うように進まず、ほとんどの参加者が悪戦苦闘。「手を水で湿らせながら、縄をぴんと張って、小指の下のほうの掌を使って転がしていくのがコツ」と藤井さん。川尻さんも家族の間をまわって応援。うまくいかず不機嫌そうだった子どもたちも、川尻さんのちょっとしたアドバイスでうまくできると思わず顔がほころぶ。30分ぐらいすると、細いながらも長さのあるしめ縄が完成。中には、「昔、近所のおばあさんに教えてもらったことがある」「子どもの頃、おじいさんに教えてもらった」という経験者もいて、太いしめ縄に挑戦。見事にないあげた。
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← 川尻さんにコツを教えてもらったよ! |
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←昔、教えてもらってね。今でも体が覚えてるよ。 |
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←お母さん力作のしめ縄が完成! |
できあがったしめ縄は、磨きをかけハサミで形を整える。そして半紙でつくった「紙垂(しで)」という清浄の証をつけてしめ縄にしたり、くるくると輪にしてクリスマスやお正月に飾れるリースにしたり。マテバシイ、スダジイ、ツブラジイなどのドングリや、マツボックリ、ヒカゲノカズラというシダ類、ドライフラワー、稲穂などの材料が豊富に揃ったリースづくりは大人気。「でも、しめ縄もつくりたかった......」という参加者のもとに、1人1本ずつしめ縄のおみやげが手渡され「うれしーい!」。
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←クリスマスリースもかわいいでしょ? |
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11:45~ |
山の幸バイキングの昼食
サトイモ、カボチャ、キノコなど旬の味覚や、特産品のトマト・お茶などをふんだんに使ったオリジナル山の幸バイキングの昼食。地元ならではの味が、参加者に大好評!
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12:45~ |
花餅づくりに挑戦!
花餅というのは、ネジキという木に紅白のお餅を花のようにくっつけていくお正月飾り。「ネジキはこのあたりの方言ではカツウルシと言います。剪定して1年目の新しい枝だけが、赤くてツルツルしてきれいなんです。ですから今、皆さんの前にあるネジキは、藤井さんが1年前から剪定して準備したもの。非常に手がかかっているんですよ」と樹木に詳しい川尻さんならではの解説。ネジキのほかにもモミジ、カエデ、ウメ、ハナミズキなどを利用してもいいとか。はじまりは諸説あって、かつては繭(まゆ)が現金収入になったことから、繭に見立ててつくることで農作物の豊作を祈願したとか、生花が手に入りにくかった冬に部屋を飾るためにつくられるようになったなどと言われているということ。「ここらあたりでは、玄関口に1年間飾って、次の年の1月に左義長やどんど焼きではずして焼いたりしますが、3月に枝からはずして雛あられにして食べてもいいんですよ」と、藤井さんからは地元の風習が語られる。
さっそく紅白の餅をさいの目に切って、枝にくっつけていくと、個性のある枝振りが際立ち、それぞれにオブジェのような美しさ。参加者はできあがっていく花餅を前に「きれい~」「かわいい!」「味がある」とうれしそう。最後に縄でつくったミニリースや紙垂をぶら下げ、根元にマツボックリやドングリを飾って完成。あたり一面に餅の花が咲き誇った。
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←「紅白の餅の配分は、芸術的センスで」と藤井さんがアドバイス。 |
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←いろんな花餅が完成。 |
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14:15~ |
もちつき
石の臼と、杵で昔ながらの餅つきを体験。子どもたちが大奮闘。
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←杵って重いねー。 |
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15:00~ |
白川茶とお餅で一服
つきたてのお餅をしょうゆやきなこ、ぜんざいでいただくおやつタイム。つけ合わせで出された手づくりのカブと白菜の浅漬けも人気で、漬け方を地元の人に教わる参加者数名。
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15:20~ |
閉会式
川尻さんあいさつ。「しめ縄と花餅づくりは、今年1年を無事過ごせたことへの感謝と、新しい年も良い年になりますようにとの願いをこめる意味もあります。東白川村は、神さまの土地。そこで培われた貴重な知恵や伝統を、これからも多くの人に体験してもらいたいと思います」。新年を待ちわびるうれしい気持ちをこめて、昔ながらの迎春の習わしを体験することで、稲作文化や地元の民俗の奥深さに触れた1日だった。
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