文化講座
第7回:菜の花について学びます
前シリーズでは「お料理博士になろう!!」と題し、食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、「旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!」というテーマで、この季節に最もおいしい食材や調理法を取り上げ、その効能はもちろん、それらにまつわる様々な事柄などを、皆様にご紹介しております。
第7回目のテーマは「菜の花」。
「菜の花」の美味しいレシピと、菜の花の歴史、成分と効用等についてご紹介します。
まだ肌寒さが残る頃、私たちの心を温かい春色にしてくれるのが菜の花です。一面に咲く黄色の花と若草色の葉が何とも美しく、思わず笑みがこぼれます。この菜の花に魅せられた俳人も多く、とりわけ与謝野蕪村は「菜の花や 月は東に 日は西に」の他にも、いくつか菜の花の歌を詠んでいます。
まずは、菜の花を使ったおいしい料理をご紹介します。
菜の花を使ったおいしい料理
菜の花春巻
エネルギー143kcal、たんぱく質5.3g、脂質7.8g、塩分1.1g(1本分)
材料 | 10本分 | |
---|---|---|
豚薄切り肉 | 100g | |
A | 酒 | 小さじ1 |
しょうゆ | 大さじ1 | |
片栗粉 | 小さじ1 | |
サラダ油 | 大さじ1~1・1/2 | |
菜の花 | 300g | |
たけのこ(ゆで) | 60g | |
生しいたけ | 2枚 | |
B | 塩 | 小さじ1/2 |
こしょう | 少々 | |
砂糖 | 小さじ1 | |
酒 | 大さじ1 | |
しょうゆ | 大さじ1 | |
水 | 90ml | |
和風だしの素 | 小さじ1 | |
片栗粉 | 大さじ2 | |
水 | 大さじ2 | |
春巻の皮 | 10枚 | |
小麦粉 | 大さじ1 | |
水 | 大さじ1 |
作り方
- 豚肉は細切りにし、(A)で下味をつけます。フライパンに油を引き、豚肉をサッと炒めて取り出しておきます。
- 菜の花は塩ゆでして水気をしぼり、3等分長さに切ります。
- たけのこ、しいたけは細切りにします。たけのこはしっかりと水気を絞ります。
- 1.のフライパンに油を足し、しいたけ、たけのこ、菜の花の順に炒めます。(B)で調味し、1.の肉を戻し入れて手早く混ぜます。
- 4.に水溶き片栗粉を加えてしっかりとろみをつけ、室温において粗熱を取ります。
- 春巻皮に具をのせて包み、巻き終わりを水溶き小麦粉(小麦粉のり)で止めます。
- 160℃前後の油で色づくまで揚げます。
※写真にはトマトで作ったバラを添えました
菜の花とれんこんのおひたし~辛子風味~
材料 | 2~3人分 | |
---|---|---|
菜の花 | 200g | |
れんこん(小・細口) | 1/2節(100g) | |
酢 | 少々 | |
A | かつおだし | 200ml |
塩 | 小さじ1/2 | |
薄口しょうゆ | 大さじ1・1/2 | |
練り辛子 | 小さじ1弱 |
作り方
- 菜の花は塩茹でして冷水に取って冷まし、水気を切って3~4等分の長さに切ります。
- れんこんは皮をむいて薄切りにし、よく水に晒した後、熱湯に酢を入れて茹でます。
- (A)を煮立て、冷ましてから辛子を加え、1.と2.を漬け込みます。
- 器に3.を汁ごと盛り付けます。
菜の花とエビのミモザサラダ
材料 | 4人分 | 2人分 | |
---|---|---|---|
エビ(中~小)(殻付き) | 120g | 60g | |
菜の花 | 200g | 100g | |
卵 | 2コ | 1コ | |
ドレッシング | |||
A | マヨネーズ | 大さじ2 | 大さじ1 |
オリーブ油 | 大さじ4 | 大さじ2 | |
穀物酢 | 大さじ1 | 大さじ1/2 | |
塩 | 少々 | 少々 | |
白こしょう | 少々 | 少々 |
作り方
- エビは殻を取り、塩(分量外)ゆでして水に取ります。
- 菜の花は、塩(分量外)ゆでして水にさらします。
- 卵は固ゆでにして、白身は細かく切り、黄身は裏ごしをします。※共に粗く刻んでも良い。
- (A)を混ぜ合わせます。
- 器に1.~3.を盛ります。
- 食べるときに4.をかけます。
菜の花とあさりの辛子和え
エネルギー58kcal、たんぱく質5.7g、脂質0.6g、塩分0.9g(1人分)
※和え衣は80%可食として計算しました
材料 | 4人分 | 2人分 | |
---|---|---|---|
菜の花 | 440g(2束) | 220g | |
あさり | 260g | 130g | |
酒 | 大さじ3 | 大さじ2 | |
A | あさりの蒸し煮汁 | 大さじ4 | 大さじ2 |
しょうゆ | 大さじ2 | 大さじ1 | |
ねり辛子 | 小さじ2/3 | 小さじ1/3 | |
砂糖 | 少々 | 少々 |
作り方
- 菜の花は2~3分間ゆでて水にさらして苦みをとり、1/3の長さに切ります。
- あさりは鍋に入れて酒を加え、ふたをして中弱火で蒸し煮します。
- (A)をよく溶き、水気をきった1.と2.を和えます。
1. 歴史
観賞用としてはもちろん、食用としての菜の花はとても栄養価が高く、優れた緑黄色野菜です。その歴史は古く、奈良時代には北ヨーロッパから渡来し葉野菜として栽培されていました。しかし平安時代には、アブラナ(油菜)という名前からもわかるように、種子から菜種油をとり、火を灯していたのです。ここから食としてよりは菜種油の原料としての栽培が盛んとなり、江戸時代にあんどんの燃料として急激に広まったと言われています。あらたに食として広まったのは意外に遅く、明治以降です。現在は、この菜種油はサラダ油などに調合され、家庭でもよく使われています。また、花蜜の原料にもなり、「菜の花蜂蜜」は素朴な味わいが楽しめます。
2. 成分と効用
菜の花はビタミンB1、B2、C、β-カロテンが豊富な上、たんぱく質、カルシウム、鉄分、食物繊維なども多く、誰が見ても体に良い野菜「優等生野菜」なのです。特に辛味成分である「イソチオシアネート」は唯一アブラナ科の野菜(他にキャベツ、ブロッコリー、白菜、小松菜、大根、ワサビなど)にだけ含まれ、ガン細胞の発生を抑制する働きや血液サラサラなどの生活習慣病予防効果があり注目されています。また、アルカロイドも含み、ストレス解消や疲労回復、花粉症にも効果があるので、まさに今食べるべき野菜と言えるでしょう。
和種なばな(花蕾・茎、生)の成分(可食部100g当たり)(日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用)
- エネルギー...33kcal
- ビタミンB1...0.16mg
- ビタミンB2...0.28mg
- ビタミンC...130mg
- βカロテン...2200μg
- たんぱく質...4.4g
- カルシウム...160mg
- 鉄分...2.9mg
- 食物繊維...4.2g
3. 生産地
菜の花(花)の生産量
2016年 | 都道府県 | 生産量(t) | 割合(%) |
---|---|---|---|
1位 | 徳島県 | 1,072 | 26.3 |
2位 | 千葉県 | 1,040 | 25.5 |
3位 | 香川県 | 638 | 15.6 |
4位 | 高知県 | 394 | 9.7 |
5位 | 茨城県 | 151 | 3.7 |
6位 | 京都府 | 147 | 3.6 |
7位 | 大分県 | 143 | 3.5 |
8位 | 大阪府 | 91 | 2.2 |
9位 | 和歌山県 | 76 | 1.9 |
10位 | 滋賀県 | 73 | 1.8 |
菜の花が県の花にも指定されている千葉県では、特に房総半島の南部にある安房地方が生産地として有名です。その他、徳島県や香川県など、温暖な地域でよく育てられています。
徳島県で迎える菜の花の旬は2~3月頃です。千葉県で迎える菜の花の旬は1~2月頃です。
京都では菜の花を「花菜」と呼び、寒咲なたねの花のつぼみを食用にし12月ごろから出荷します。切り花用として栽培されていたものを食用に改良したもので、京野菜としてブランド化されています。
菜の花(葉茎)の生産量
2016年 | 都道府県 | 生産量(t) | 割合(%) |
---|---|---|---|
1位 | 三重県 | 628 | 32.0 |
2位 | 東京都 | 240 | 12.2 |
3位 | 群馬県 | 169 | 8.6 |
4位 | 栃木県 | 160 | 8.1 |
5位 | 新潟県 | 125 | 6.4 |
6位 | 福岡県 | 123 | 6.3 |
7位 | 岐阜県 | 76 | 3.9 |
8位 | 熊本県 | 73 | 3.7 |
9位 | 宮城県 | 69 | 3.5 |
10位 | 神奈川県 | 50 | 2.5 |
4. 選び方
菜の花には、主に花蕾を食べるものと葉茎を食べるものがあります。どちらも茎の切り口がみずみずしいものが新鮮です。前者は花が開いてしまうと味が落ちるので、つぼみの部分がよくしまっているものを選びましょう。おいしく調理するポイントは、ゆですぎないことです。適度な歯ざわりとほろ苦さが残る程度に仕上げたいものです。
5. 保存方法
菜の花は日持ちしません。鮮度が落ちると栄養価も下がるため、購入後はなるべく早めに食べたほうが良いでしょう。保存するときは、濡らした新聞紙やキッチンペーパーで包んで保存袋に入れて、根の部分を下向きにして立てた状態で冷蔵庫に保管します。この方法だと2~3日は新鮮なまま食べられます。横向きに寝かしてしまうと、すぐに萎びてしまう他、茎が曲がりやすく、早くいたんでしまいます。
長期保存する場合は、さっと固めに下茹でして小分けにし、冷凍保存します。使う時は自然解凍して、お浸しや和え物などにすると良いでしょう。菜の花に含まれるビタミンは水溶性の成分が多く、茹ですぎると食感だけでなく、特にビタミンCといった栄養素も流れ出てしまいます。