文化講座
第5回:かりんについて学びます
前シリーズでは「お料理博士になろう!!」と題し、食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、「旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!」というテーマで、この季節に最もおいしい食材や調理法を取り上げ、その効能はもちろん、それらにまつわる様々な事柄などを、皆様にご紹介しております。
第5回目のテーマは「かりん」。
「かりん」の美味しいレシピと、かりんの歴史、成分と効用等についてご紹介します。
まずは、かりんを使った身体に良い飲み物をご紹介します。
かりんは果物と言っても、果肉が非常に硬く渋みもあるため生食できませんが、果実酒、はちみつ漬け、シロップ漬け、ジャム、ゼリーなどにしてエキスを利用することで独特の風味が楽しめます。
かりんを使った身体に良い飲み物
かりんシロップ
~受験生や小さいお子さんにお勧め・風邪の引き始めに効果的~
材料 | 作りやすい分量 | |
---|---|---|
かりん | 2kg | |
砂糖(かりんの重さの70%) (又は氷砂糖、グラニュー糖可) |
1.4kg |
作り方
- かりんはたわしで洗って、水気をしっかり拭きとります。
- かりんは固いので、手に注意しながら2~3cmの輪切り、大きなかりんは、縦半分に切ってから2cm厚さに切ります(写真1)。種ごと広口のビンに入れます(写真2)。
- 2.に砂糖を入れ、密閉します。
- 涼しい場所に3週間程おくと出来上がります。※時々かき混ぜます。漬け終わったかりんは取り除きます。(冬場は涼しい場所で保管します)
※冷水又は炭酸水で約5倍に薄めて飲みます
(左)上白糖を入れたもの
(右)氷砂糖とグラニュー糖を入れたもの
(左)かりんのジュース
(右)かりんのお湯割り
かりんサワー漬け
~のどの痛み・不快感に効果的~
材料 | 作りやすい分量 | |
---|---|---|
かりん | 1コ(500g) | |
氷砂糖 | 600g | |
純米酢 | 2本(1000ml) |
作り方
- かりんは洗って、水気をしっかり拭きとります。
- かりんは固いので、手に注意しながら2~3cmの輪切り又は半月切りにします。(写真)種ごと広口のビンに入れます。
- 2.に氷砂糖と純米酢を入れ、密閉します。
- 涼しい場所に3週間程おくと出来上がります。漬け終わったかりんは取り除き、サワードリンクは冷蔵保管します。(冬場は涼しい場所で保管します)
※冷水又は炭酸水で約5倍に薄めて飲みます
漬けてすぐの状態
年数が経つと濃い色になる
かりん酒
~健康酒として~
材料 | 作りやすい分量 | |
---|---|---|
かりん | 2コ(1kg) | |
氷砂糖 | 400g | |
ホワイトリカー(又は焼酎) | 1800ml |
作り方
- かりんは洗って、水気をしっかり拭き取ります。
- かりんは固いので、手に注意しながら縦に半分に切り、種を取って1cm幅に切ります。広口のビンに入れます。
- 2.に氷砂糖とホワイトリカーを入れ、密閉します。
- 涼しい場所に1週間程おくと出来上がります。
※常温で1~2年は持ちます
※湯や水で割って飲みます
かなり飲んで少なくなりました。
1. 歴史
かりんの原産地は中国で、古くから薬用や観賞用などとして利用されていました。平安時代に弘法大師が唐から苗を持ち帰ったことから、日本に伝わったとされています。その後、全国各地で庭木として植えられました。名前の「かりん」が「借りぬ」に通じるため、借金をしないで済むという意味で庭に植える習慣のある地方もあります。ちなみに我が家の庭にも植えてあります。
2. 成分と効用
秋になると黄色い実をつけるかりん。完熟したかりんの果実は特有の芳香を有し、咳止めの効果もあることから健康によい果実として知られています。ただし果肉中に石細胞(せきさいぼう)が多く含まれているので硬く、とても渋いので生食には適しません。
かりんの成分(可食部100g当たり)(日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用)
- ●カリウム...270mg
- ●食物繊維...8.9g
- ●ビタミンC...25mg
- ●βカロテン...38μg
カリウム
利尿作用があり、水分の代謝を助けてむくみを予防します。高血圧予防にもよいとされています。
不溶性食物繊維
ジャムなどにすることで、豊富な食物繊維をたっぷりと摂る事が出来ます。特に不溶性の食物繊維が多いので、便秘の予防や改善に効果がある他、有害な物質を吸着し体外に排出するのを助ける働きもあります。
ビタミンC
肌にうるおいを与えるコラーゲンの合成に関わり、美肌効果が期待できます。
のど飴に使われることで広く知られているように、かりんには咳止めや去痰など喉への効能があります。この効果をもつのが「アミグタリン」という薬用成分です。加水や加熱により分解すると「ベンズアルデヒド」となり、炎症を抑えるはたらきがあるので、風邪を引いたときの咳やのどの痛みを和らげます。
かりんにはクエン酸・リンゴ酸も多く含まれています。クエン酸・リンゴ酸には疲労物質の乳酸を分解する働きがあるので、疲労回復に効果があります。
3. 生産地
かりんは全国で作られていますが、最も多く生産し市場に流通しているのは山形県です。全国の約4分の1を作っています。次いで香川県、愛媛県となっています。
全国に分布しているので、収穫される期間が長く、10月初めから出荷が始まり12月初旬まで流通します。
4. 選び方
かりんを選ぶポイントは、まず全体が明るい黄色に色づいている物を選ぶことです。果皮につやがあり、傷や小さな穴がなく、ふっくらとした形で重量感がある物を選びます。そして香りを確かめ、特有のフルーティーな芳香を感じる物を選んでください。
5. 保存方法
かりんは冷蔵庫に入れなくても良いです。新聞紙などに包んで室温で保存します。果皮に緑色が残っている場合は、しばらく直射日光の当たらない涼しい場所に置いて追熟させましょう。芳香が漂って果皮全体が黄色く染まり、表面に油っぽさを感じたら完熟しています。かりんは比較的日持ちするほうですが、完熟したものはなるべく早く使い切りましょう。