文化講座
第3回:栗について学びます
前シリーズでは「お料理博士になろう!!」と題し、食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、「旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!」というテーマで、この季節に最もおいしい食材や調理法を取り上げ、その効能はもちろん、それらにまつわる様々な事柄などを、皆様にご紹介しています。
第3回目のテーマは「栗」。
「栗」の美味しいレシピと、栗の歴史や成分等についてご紹介します。
まずは、栗を使ったおいしい料理とデザートをご紹介します。
栗を使ったおいしい料理とデザート
栗ときのこの炊きおこわ
材料 | 4~5人分(実習分量) | |
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生栗(中~大) | 8粒(皮付き200g) | |
ぶなしめじ | 1/2パック(60g) | |
白まいたけ | 1/2パック(50g) | |
生しいたけ | 4枚 | |
A | 水 | 100ml |
酒 | 大さじ1 | |
しょうゆ | 大さじ1・1/2強 | |
もち米 | 1・2/3カップ(330ml分) | |
米 | 1/3カップ(70ml分) | |
水 | 350~400ml | |
きのこの煮汁 | 100ml | |
塩 | 小さじ1/2 | |
ぎんなん(あれば) | 12コ |
作り方
- 栗は皮をむいて7mm角位に切って水に晒し、ザルに上げて水気を切ります。
- しめじは石突きを取って3等分長さに切り、まいたけは小さめに手でほぐし、しいたけは短いせん切りにします。
- 鍋に2.と(A)を入れ、きのこから水分が出るまで煮て具と煮汁に分けます。
- 米は炊く30分以上前に洗い、分量の水に浸水させます。
- 4.に分量の煮汁(足りない場合は水を足す)を入れ、塩と1.を加えて炊きます。
- ぎんなんは殻をむいて玉じゃくしで転がしながら茹で、薄皮をむいて半分に切ります。
- 炊き上がった5.に、3.の具と6.を入れて蒸らします。
焼き栗おむすび
エネルギー191kcal、たんぱく質3.3g、脂質0.9g、塩分1.0g(1コ分)
材料 | 100gくらいの おむすび12コ分 (実習分量) |
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新米(あれば) | 3カップ(600ml分) | |
昆布だし汁 | 800ml弱 | |
酒 | 大さじ2 | |
生栗 | 300g(18粒) | |
塩 | 小さじ1 | |
黒ごま | 大さじ1強 | |
梅干し | 適量 |
作り方
- 昆布は水に2時間程浸けておきます(水出し)。
※冷蔵庫でゆっくりと水出しすると良い - 米は洗って1時間以上、1.と酒に浸水します。
- 栗は底の部分を包丁で薄く切り取ります。
- 魚焼きグリルに3.を入れて12~15分間程強火で焼きます。
- 4.が熱いうちにキッチンペーパー2枚で包むようにしてむきます(鬼皮も渋皮もきれいにむけます)。
- 2.の米に分量の塩を入れてサッと混ぜ、5.をのせます(砕けた部分などものせると良い)。
- 6.を普通に炊き、炊き上がったら栗を含めて100g位のおにぎりにします。
- 器に盛り、梅干しを上にのせます。
※写真にはきゅうりの漬け物を添えました
栗のスープ
材料 | 4人分(実習分量) | |
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栗 | 12粒(300g) | |
水 | 500ml | |
くず野菜(玉ねぎ・にんじん・パセリの軸など) | 適宜 | |
バター | 10g | |
玉ねぎ(みじん切り) | 15g | |
野菜だし | 300ml | |
牛乳 | 200ml | |
塩 | 小さじ3/4 | |
白こしょう | 少々 | |
砂糖 | 小さじ2 |
作り方
- 栗は40分間程蒸します。飾り用に2粒残し、残りは2つに割ってスプーンで中身を取り出します。
- 分量の水にくず野菜を入れ、野菜だしを取ります。
- 鍋にバターを溶かし、玉ねぎを甘い香りがしてくるまで炒めます。野菜だしと1.を加えて煮ます。
- 3.の粗熱を取りミキサーにかけて鍋に戻し、分量の牛乳を入れて火にかけます。
- 塩とこしょう、砂糖で調味し、器に盛ります。飾り用に残しておいた栗を粗く刻み、上に添えて召し上がります。
お家でモンブラン
材料 | 直径5cm×高さ3cmの 紙カップ8コ分 |
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スポンジケーキ | ||
卵 | 3コ | |
グラニュー糖 | 60g | |
バニラエッセンス | 少々 | |
薄力粉 | 60g | |
サラダ油 | 大さじ3 | |
栗&生クリーム | ||
A | 生クリーム | 200ml |
グラニュー糖 | 20g | |
栗の甘露煮 | 6コ(80g) | |
さつまいもクリーム | ||
さつまいも | 大1本(400g) | |
くちなしの実 | 1コ | |
牛乳 | 90ml | |
B | バター(無塩) | 40g |
グラニュー糖 | 50g | |
コアントロー(あれば) | 小さじ1/2 | |
栗の甘露煮 | 8コ |
作り方
- 卵とグラニュー糖を大きめのボウルに入れ、湯せんで6~7分間を目安にハンドミキサーを使ってしっかりと泡立てます。途中でバニラエッセンスを加えます。
- 1.に薄力粉をふるって加え、粉が見えなくなるまで手早く混ぜます。
- 2.の生地の一部を別のボウルに取り分け、ぬるま湯に浮かべて温めておいたサラダ油を加え、さっくりとていねいに混ぜます。
- 3.を2.に戻し入れ、さっくりと混ぜ合わせます。
- 紙カップに4.を7分目位まで流し入れ、180度のオーブンで12分間焼き、スポンジケーキを作って冷まします。
- ボウルに(A)を入れ、氷水に浮かべながら泡立てます。栗は5mm角に切ってクリームに混ぜ、5.で焼いたスポンジケーキの上に塗ります。
- さつまいもは輪切りにし、厚めに皮をむきます。水に5分間位晒しておきます。さつまいもは蒸し器で、串が刺さる位まで蒸します。熱いうちに裏漉しをします。
- くちなしの実を半分に切り、分量の牛乳に浸けておきます。
- 8.の色が付いてきたらくちなしの実を取り出し、(B)を入れ、7.を加えて練り、冷まします(冷めると固くなるので、牛乳を足して絞れる固さまで調整します)。
- 9.が冷めたら絞り袋に入れ、6.の上に絞り出して上に栗の甘露煮をのせます。
※お好みでシロップ(水 大さじ2、グラニュー糖 大さじ1を500wの電子レンジにかけて冷ましたもの)を5.のスポンジケーキに塗ると、更にしっとりとしたケーキに仕上がります
栗きんとん
エネルギー62kcal、たんぱく質0.7g、脂質0.1g、塩分0g(28コとしたときの1コ分)
材料 | 26~28コ分(実習分量) | |
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生栗 | 1kg | |
A | 水 | 180~200ml |
グラニュー糖 | 150g |
作り方
- 栗はきれいに洗ってから鍋に入れ、たっぷりの水を入れて火にかけます。(蒸しても良い)
- 1.が煮立ったら50分程度茹でます。*半分に切って食べてみて、中心まで火が通っていれば良い。
- 2.を包丁で半分に切り、中身をティースプーンで削り取ります。
- 3.の3/4量を裏ごし(すり鉢ですってもよい)、残り1/4は粗く刻みます。
- (Aを)煮立てて4.をすべて入れ、中火で練り上げます。
- 5.を小分けにしてバットに並べ、粗熱を取ります。
- 6.をラップで、1コあたり30gずつ位の茶巾しぼりにします。
1. 秋の味覚の代表「栗」
秋本番を迎えています。この季節は「食欲の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」「芸術の秋」などと言われるように、過ごしやすい気候だからこそいろいろな事を楽しむチャンスです。とはいえ、やはり一番の楽しみは、秋の味覚を堪能することです。新米、マツタケ、ギンナン、サンマ、新ソバ、サツマイモ、柿など、秋の恵みはたくさんありますが、中でも特に秋の訪れを強く感じさせてくれるものに栗があります。
2. 栗の歴史
約5000年以上前の縄文時代の遺跡から栗の栽培跡が見つかるほど、栗は古い歴史を持っています。近年では食材としても秋の風物詩的な意味合いが強いですが、かつては貴重な栄養源であると同時に漢方薬として利用されていました。平安時代の初期に、中国から「接ぎ木」の技術が京都の丹波地域に伝わってから大粒の栗が栽培され始め、徐々に地域が拡大していきました。丹波では現在でも栗の栽培が行われていて、大粒で甘みのある「丹波栗」はブランド品として有名です。また、長野県の小布施地方も江戸時代に幕府に献上していた名産地として知られています。日本各地で栽培されていた栗ですが、昭和16年頃に発見された害虫「クリタマバチ」による被害で日本中の栗園は大打撃を受けました。それ以降、クリタマバチに抵抗性を持つ品種が育成されて、現在も品種改良は行われています。
また、栗の木は腐りにくく耐久性が高いため、家屋の土台や家具の木材として欠かせない存在で、栗は日本の食・住に重要な役割を果たしています。
3. 生産地
2017年 | 都道府県 | 収穫量(t) | 割合(%) |
---|---|---|---|
1位 | 茨城県 | 4,150 | 22.19 |
2位 | 熊本県 | 2,880 | 15.4 |
3位 | 愛媛県 | 1,840 | 9.84 |
4位 | 岐阜県 | 810 | 4.33 |
5位 | 埼玉県 | 657 | 3.51 |
6位 | 宮崎県 | 594 | 3.18 |
7位 | 山口県 | 571 | 3.05 |
8位 | 長野県 | 530 | 2.83 |
9位 | 兵庫県 | 493 | 2.64 |
10位 | 栃木県 | 486 | 2.6 |
日本の栗の生産量第1位は茨城県で、全体の約4分の1近くを占めています。県中央の笠間市、かすみがうら市、石岡市などで多く生産されています。
4位の岐阜県にある中津川市は栗きんとんの里として知名度が高く、この時期になると全国から大勢の客がお気に入りの店の栗きんとんを求めて訪れます。
4. 栗の栄養素
種子類でありながら脂質が少なく、デンプンやミネラル、ビタミン、タンパク質をバランスよく含んでいます。主成分のデンプンは粒子が細かく消化がよいため、子どもや高齢者、病中病後などの栄養源としても適しています。疲労回復効果が期待できるビタミンB1も多く、夏にたまった疲れを癒し、冬へ向けて体力を増強するのに役立ちます。漢方では体を温めて血行を良くし、胃腸の働きを整え、滋養強壮に効くとされています。
また、渋皮にはポリフェノールの一種、タンニンが多く含まれており、この強い抗酸化作用により、老化の防止やガンの予防に効果があります。殺菌作用があり、抗生物質が効きにくい細菌、コレラ菌、インフルエンザウイルスなどの繁殖を抑制します。渋皮煮などで沢山摂取する事が出来ます。
主な栄養素(可食部100g当たり/日本栗・生)(日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用)
- ●タンパク質...2.8g
- ●脂質...0.5g
- ●炭水化物...36.9g
- ●マンガン...3.27mg
代謝を促進する効果があります。骨の再石灰化を促して骨粗鬆症の予防にも役立ちます。 - ●ビタミンB1...0.21mg
- ●ビタミンC...33mg
栗のビタミンCは、ジャガイモと同じようにデンプン質に包まれているため、加熱しても壊れにくく摂取しやすいです。 - ●カリウム...420mg
ナトリウムを排出する働きがあり、高血圧予防などに効果があります。
5. 種類と選び方
(1)種類
栗は、大きく4種類に分けられます。
- 栗きんとんや栗おこわなど主に和食に使用する日本栗
- 天津甘栗でお馴染みの中国栗
- モンブランやマロングラッセなど洋菓子に欠かせないヨーロッパ栗
- アメリカ栗(ほとんど流通していない)
日本栗の代表的な品種としては、丹沢(たんざわ)、筑波(つくば)、銀寄(ぎんよせ)、石鎚(いしづち)などがあり、いずれも粒が大きく上品な味わいと香りがありますが、渋皮がはがれにくいのが難点です。
一方中国栗は中国から輸入されており、皮がむきやすいのが特徴で、甘栗などの焼き栗に加工されます。
(2)選び方
栗を選ぶ時は、表面の固い鬼皮が固く張りがあり、艶々した光沢があるものを選びます。また、両側を挟まれた平たい粒の物より、ふっくらと丸みがあるものを選びましょう。小さな丸い穴は虫が中に入っている可能性が高いです。また、皮に傷があり、黒ずんでいるものなども避けましょう。手に持った時にずっしりと重みが感じられるものを選びます。収穫後時間が経ったものは乾燥し実が痩せて軽くなってしまいます。また、十分に養分が回らず実が膨らんでいない場合もあります。
6. 保存方法
栗はかたい果皮に包まれていますが保存はあまりききません。生のままの栗は乾燥しやすく、むき出しのまま置いておくと乾燥し香りが抜けるとともに実が痩せてしまいます。
保存するときは常温では乾燥や虫食いの心配があるので、ポリ袋などに入れ、冷蔵庫、出来ればチルド室に入れておくようにしましょう。栗は低温にさらされるとデンプンが糖に変わるため、鮮度のよい栗は冷蔵庫のチルド室で数日間保存することで甘味が増します。
一度茹でた物は、密封容器や袋に入れ冷蔵庫で保存してください。傷みやすいので、2~3日で食べきるようにしましょう。
長期保存したい場合は、冷凍します。食べる際には、再度加熱する必要があります。