文化講座
第12回:お盆 ~感謝する「心」を大切に~
前シリーズでは「食育をはじめましょう」と題し、それぞれのライフステージに合わせた食事についてご紹介しました。
今シリーズでは、食育・続編として「歳時記とごはん」をご紹介しています。
日本人として伝え続けていきたい正月・七夕・節分などの日本の歳時記と、それにまつわる食事を謂れや慣わし・行事食をオリジナルレシピとともにご紹介しています。
今シリーズ最終回・第12回目のテーマは「お盆」
太陽の日差しがキラキラと眩しい今日この頃。子ども達は夏休みに入り、家族で出かける機会も増えることでしょう。お盆の連休には、帰省ラッシュによる高速道路の大渋滞も予想されます。時間と心にゆとりを持ち、くれぐれも安全運転でお出かけください。
1.お盆とは
お盆休み、盆踊りなど、お盆は私達の生活に浸透していますが、お盆とはいったい何なのでしょうか。
お盆の正式名称は、盂蘭盆会(うらぼんえ)といい、先祖の精霊を迎え追善の供養をする期間であり、これを「お盆」と呼んでいます。7月または8月の13日から16日までの4日間です。
迎え火と送り火
13日の夕方、玄関や軒下に提灯をつるし、玄関先や門先でおがら(皮をはいだ麻の茎を乾燥させたもの)を燃やし、ご先祖様が迷わないで家に帰ってくることができるように迎え火をたきます。

東山如意ケ嶽の「大文字」
16日の夜、再び玄関先や門先でおがらを燃やし、ご先祖様をお送りします。煙と共に天へのぼるよう願いを込めます。
京都の夏の風物詩でもある「五山送り火」も規模の大きい送り火のひとつです。毎年8月16日に行われます。
お盆の習慣は地域や宗派、あるいは時代によって様々ですが、いずれも家族や一族が集まり、今の自分があるのはご先祖様のお陰であると感謝しながら、家族の絆の大切さを再確認することが先祖への供養となります。「帰省できない」などの諸事情もありますが、お盆は先祖や故人を偲び、自分自身をかえりみる良い機会です。
2.お供え
お盆の期間中は、お花やお供え物を普段より多めに行い、精進料理を供えた仏膳(霊供膳)などを供えます。
精霊馬(しょうりょううま)

地域によって「ご先祖様の乗り物」と呼ばれる精霊馬を用意します。
キュウリとナスに割り箸や爪楊枝を刺して作ったもので、キュウリは馬、ナスは牛に見立てています。諸説ありますが、一般的にはご先祖様が足の速い馬に乗って、早く家に戻ってくることができるように、また帰るときは、少しでも長く家に居て欲しいと牛に乗ってゆっくり帰るようにとの願いが込められています。
季節の食品
新鮮な季節の野菜や果物をお供えします。
特に決まりはありませんが、それぞれに意味を持つ食材もあります。
- そうめん
ご先祖様を偲び、そうめんのようにいつまでも長く、心と心のつながりを大切にしますという意味が込められています。 - 芋類
土の中でしっかり育つ芋は、地道に着実に育つ生命力を表します。
古くから穀物の代用としても重宝してきました。 - キュウリ
短期間で実を結ぶことから、早く願いが叶うようにとの意味があります。 - ナス
「親の意見とナスの花は千に一つも無駄がない」という諺の通り、努力や経験が無駄になることなく、良い結果を得られますようにとの願いが込められています。
精進料理
精進料理とは、鎌倉時代の禅宗で確立された魚介・肉類を一切使わず、山菜・野菜・海藻・穀類などを材料として調理される料理をいいます。仏教では、殺生(生き物を殺すこと)が禁じられていたため、野菜を工夫して調理した精進料理が発達しました。
お盆に精進料理を食べることは、殺生をしないというだけの考え方でなく、野菜をはじめすべてのものに命があり、私達は色々な命をいただいて生かされていると、すべてのものに感謝する心を思い出すという意味があります。
3.夏の涼を感じるテーブルコーディネート

今回は、夏休みに帰省した孫と楽しく遊んだ思い出に浸る祖父母のテーブルをイメージしました。白と青、水色をメインとし、すがすがしい清涼感を演出しました。中央に置かれた団扇、朝顔のアレンジ、貝殻のモチーフの小物が夏を強調しつつも、色使いやガラス食器で涼しさも感じます。ナプキン代わりの手ぬぐいはキュッと結ぶことでスッキリ感を出しました。クロスは孫のために作った甚平と同じ生地のものを使用し、祖父母の愛情、孫のかわいらしさが伝わる作品となっています。

透き通るような青色が美しい朝顔とグリーンをあしらったアレンジです。実はこの朝顔は、孫が種をまき、大切に育てたもの。一生懸命水やりをする孫の姿を思い出すと、自然に笑顔がこぼれます。

一緒に行った海水浴。「海に入るより、海岸に落ちているきれいな貝殻を見つけるほうが好きみたいね」などと会話が弾みます。このような話題のタネとなるものをトーキンググッズと言います。
4.お盆にみんなで楽しむ料理
★豆腐の夏野菜中華サラダ
~華やかな彩りがテーブルをキュートに演出~

材料 | 4人分 |
豆腐(絹) | 2丁(600g) |
きゅうり | 1本 |
赤パプリカ | 1/2コ |
黄パプリカ | 1/2コ |
長芋 | 100g |
(A) | |
酢 | 大さじ5 |
しょうゆ | 大さじ4 |
砂糖 | 大さじ4 |
ゴマ油 | 大さじ2 |
おろししょうが | 1かけ |
作り方
- 豆腐は水にさらしてから、小角に切ります。
- 野菜は7~8mm角に切ります。(長芋は酢水にさらすことで変色を防げます)
- (A)を混ぜ合わせて中華ダレを作ります。
- 器に豆腐を盛り、2をのせて3をかけ、スプーンを添えます。
※写真にはディルを添えました。
★自家製・桃のシャーベット
~桃のやさしい甘みが上品な冷菓~

材料 | 作りやすい分量 (5~6人分) |
(A) | |
グラニュー糖 | 100g |
水 | 150ml |
桃(中) | 2コ |
(B) | |
レモン汁 | 大さじ1 |
白ワイン | 大さじ1 |
ミントの葉(あれば) | 少々 |
作り方
- (A)を煮立ててシロップを作り、冷まします。
- 桃は沸騰した湯の中に入れ、すぐ取り出して冷やし、皮をむきます。
- 2を一口大の大きさに切り、(B)をまぶします。
- 1と3を合わせ、フードプロセッサーにかけて冷凍庫で凍らせます。
- 4を再びフードプロセッサーにかけ、再び冷凍庫で凍らせます。
- 器に盛ってミントを添えます。
※写真には生の桃とドレンチェリーを添えました。