文化講座
第11回:七夕の節句 ~織姫と彦星に願いをこめて~
前シリーズでは「食育をはじめましょう」と題し、それぞれのライフステージに合わせた食事についてご紹介しました。
今シリーズでは、食育・続編として「歳時記とごはん」をご紹介しています。
日本人として伝え続けていきたい正月・七夕・節分などの日本の歳時記と、それにまつわる食事を謂れや慣わし・行事食をオリジナルレシピとともにご紹介しています。
第11回目のテーマは「七夕の節句」
7月7日は七夕。織姫と彦星が年に一度だけ天の川で会うことが許されているという、ロマンチックな1日です。毎年、この日がよい天気で星空が見えると「織姫と彦星が会えてよかったなぁ」と、なぜかうれしくなるものですね。また、この時期はスーパーなどの店舗や駅などに笹の葉が立てられ、願い事を書いた短冊を吊るす光景も多く見られます。今年の七夕に皆様はどのようなお願い事をされますか?
1.七夕とは
天の川と織姫と彦星
七夕といえば、天の川をはさんで織姫と彦星が年に一度会うことができるという話が有名ですが、これは中国発祥の伝説からきています。
天空の神様である天帝には、天の川の西側に住む機織りが大変上手な娘の織姫(琴座・ベガ)がいました。年頃になり、東側に住む働き者の牛使いの彦星(ワシ座・アルタイル)とめでたく結婚します。働き者の2人でしたが、結婚してからは夫婦仲が良すぎて全く仕事をしなくなってしまったため、怒った天帝は2人を引き離し、仕事に励むことを条件に1年に1度七夕の日だけ会うことを許しました。これが七夕伝説です。
その後この伝説が発展し、裁縫や書道、技芸の上達を祈る祭り(乞巧奠・きこうでん)が生まれ、奈良時代に日本に伝わりました。
七夕のはじまり

日本では、棚機織女(たなばたつめ)という巫女が、収穫の無事を祈って衣を織るという禊(みそぎ)の行事がありました。
もともと七夕は「しちせき」と呼ばれる大切な五節句のひとつでしたが、この行事と中国から伝わった乞巧奠が合わさり、棚機(たなばた)から七夕をたなばたと読むようになったとされています。
七夕は乞功奠において、書道や技芸の上達を願う日とされており、これにあやかって日本でも願い事を短冊に書き、笹に飾る習慣が生まれました。
<五色の短冊>
五色の短冊の五色にはそれぞれに意味があるとされています。
- 赤・・・夏の代表的な星、さそり座のアンタレス
- 青・・・織姫、ベガ
- 黄・・・彦星、アルタイル
- 白・・・天の川(銀河)
- 黒・・・夜空・宇宙
はじめは五色の糸が飾られましたが、それが五色の布にかわり、現在は五色の短冊になったようです。そして字の上達を願い、短冊に字を書くようになりました。
2.7月7日は「そうめんの日」
平安時代の書物「延喜式(えんぎしき)」には、"七夕に素麺を食べると大病をしない"と記述されています。
この言い伝えが宮中より始まり、庶民にも広まっていきました。
天の川を表す「白一色のそうめん」、あるいは、五色の糸に見立てた「五色そうめん」。天の川に見立てたそうめんは、涼しさ・爽やかさを演出するだけでなく、そうめんに添える薬味野菜の生姜や小葱は、どちらも食欲増進の効果をもたらすとっておきの夏料理です。夏場に弱った体を労り、消化の良いそうめんを食べるという生活の知恵から生まれた風習と言えるでしょう。
3.七夕を楽しむテーブルコーディネート

今回は、ある文学少女が、梶井基次郎の代表作である小説「檸檬」を読み、レモンが持つ不思議な力にあこがれて作ったコーディネートです。
テーブル中央の藍染のラインが天の川を連想させ、鮮やかなレモン色は夜空で輝いている星にも見えます。また、天の川をはさんで1年に1度しか会うことができないせつなさと、フレッシュで酸味のあるレモンのイメージが重なります。
動(レモン)と静(アンティーク食器)が同居する、まさに当時の主人公の心理を再現したテーブルになりました。

積み重ねた本の上にレモンを置くという小説「檸檬」を象徴する場面を再現しました。爆弾のような形の野趣あふれる無農薬レモンとその葉から、爆発するように猛烈なエネルギーを感じ、このテーブルにインパクトを与えています。

幕末頃の藍色の蓋付茶碗と緑色の漆器(菓子椀)を合わせ、ほっと一息できる和の膳を配置しました。アンティークの器を合わせることで和洋が中和され、和のテーブルにレモンが見事に調和しています。
4.酸味を上手く取り入れた「夏のさわやかごはん」
★舌平目のムニエル 香草レモンソース
~暑い夏に心地よい涼風を感じる一皿~

材料 | 2人分 |
赤舌平目(1切れ120g) | 2切れ |
塩 | 小さじ1/3弱 |
白こしょう | 少々 |
小麦粉 | 適宜 |
オリーブ油 | 大さじ2 |
にんにく(みじん切り) | 1かけ |
(A) | |
セルフィーユ(みじん切り) | 大さじ1/2 |
あさつき(又は万能ねぎ・みじん切り) | 大さじ1 |
イタリアンパセリ(又はパセリ・みじん切り) | 大さじ1/2 |
バター | 20g |
白ワイン | 大さじ1 |
塩 | 適宜 |
白こしょう | 適宜 |
レモン | 1/2コ |
作り方
- 舌平目は骨付きぶつ切りにしたものを買い求め、塩とこしょうをふって小麦粉をまぶします。
- フライパンにオリーブ油(分量の半分)を入れ、(1)を並べて13~15分間じっくりと焼きます。
- 別のフライパンに残りのオリーブ油を入れて弱火でにんにくを炒めます。良い香りが出てきたら、(A)を入れて塩とこしょうで調味します。
- レモンは2枚の薄切りを取り、残りは絞ってレモン汁にします。
- (3)に(4)のレモン汁を加え、ソースを完成させます。
- 器に(2)を盛りつけ、(5)の香草レモンソースをかけて召し上がります。
※写真にはあさつきとセルフィーユを添えました。
★七夕そうめん 和風トマト味
~めんつゆとトマトの相性が抜群!~

材料 | 2人分 |
そうめん(乾) | 3束(150g) |
オクラ | 2本 |
紫玉ねぎ | 1/4コ |
スライスチーズ | 2枚 |
オイルツナ(缶・小) | 1/2缶(40g) |
スプラウト | 適宜 |
スイートコーン(粒) | 適宜 |
めんつゆ(ストレート) | 100ml |
トマトジュース | 100ml |
オリーブ油(好みで) | 少々 |
作り方
- そうめんは袋の表示時間通りにゆでてザルに上げ、水をかえながら洗ってぬめりをとります。
- オクラは塩ゆでして水にとり、小口切りにします。
- 玉ねぎは薄切りにして水にさらします。
- チーズは細切りにします。
- オイルツナは油をきっておきます。
- 器に(1)を天の川に見立てて盛り、(3)~(5)とスプラウトを盛り付け、(2)とコーンを散らし、めんつゆとトマトジュースを混ぜたトマトつゆをそっと流し入れます。
- 好みでオリーブ油をふりかけ、風味を付けます。
※写真にはバジルの葉を添えました。