文化講座
西洋アンティーク紀行 第3回 イギリス・アンティーク紀行(2) ロンドンの骨董
前回は美しいコッツウォルズ地方のストウ・オンザ・ウォルドおよびボートン・オン・ザ・ウォーターの骨董店やバイブリーの素晴らしい古民家について書きました。
可愛い水鳥ものどかにたたずんでいます
美しい川沿いに店が並ぶBourton on the Water
今回はロンドンの骨董街を中心に歩いてみましょう。ロンドンはニューヨークと並んで私の大好きな街の一つです。少々物価が高いのですがホテルも気さくで気分的に落ち着いてのんびりできます。地下鉄はチューブという名の通り、管のように細く丸い車体でロンドンの街をくまなく結び、まさに大動脈の役割を果たしています。日本のようにお金を前もってチャージして使う乗車カードと同様のシステムの、オイスターカードが便利です。
このカードが優れているのは、乗る度に切符を購入するよりこれを最初から使った方が遥かにお得な運賃で乗車できる点で、ロンドンはすばらしいです。また、タクシーは高い運転技術と知識を持ったインテリ運転手が多く、誇りを持って働いている姿に好感が持てます。かなり厳しい国家資格で、これにパスするのは勉強してもなかなか難しいらしいのです。ですから行き先をいえば、どこにでも連れて行ってくれます。場所の分かりにくいところは住所をいえばほぼOKで、困ったときはタクシー頼みです。車内は荷物も置ける広さがあり、外観はクラシカルでいながら可愛いロンドンのタクシーが、私は大好きです。かつてはロンドンのタクシーといえば黒塗りでしたが、今はカラフルで宣伝がプリントされていたりして、それもまた楽しいです。車が好きなせいもあって、ついたくさん写真を撮ってしまいます。
色とりどりのロンドンのタクシー
土曜のポートベローの骨董市は大変な賑わいです
さてロンドンの骨董市といえば土曜日開催のポートベロー・ロードの骨董市と相場は決まっていました。地下鉄ノッティングヒルゲートから歩いて10分ほどのこの2マイルに渡る通りは昔、畑に続く細道でしたが、ヴィクトリア女王の時代に鉄道の出現で開発され、今の街並みに発展したそうです。
ストリート・パフォーマーも土曜の骨董市の雰囲気を盛り上げます
かつて2千数百軒といわれた骨董店の多くが、観光客相手のおみやげ店に変貌しています。昔日のアンティークひしめく面影は薄くなりました。それでもアンティークショップは健在ではあります。かつては通路の奥に銀器の店がひしめいていたのですが、今は数軒残っているだけでなくなっていました。
ちゃんとした銀器を売る店でも、おみやげ価格のアクセサリーを入口付近に並べていて、それを目当てに若い女性客が覗いては、何も買わずに出て行くのを多く見かけました。
女の子が好みそうな小物類やら、Tシャツ、安い装飾品を売る店がすごく多くなりました。原宿の竹下通りみたいです。やはり世界的な不況の影響からか、野外はスナックや食べ物屋台がひしめいていて、アンティークの街というイメージは外見上なくなりました。
私も本格骨董は諦めて、カバン、こだわりのアイテム、古き良き時代の雑貨を売っている店を回り、楽しみました。アンティークなラグビーボールやゴルフクラブなどにおもしろいものがあり、やはりイギリスだなぁというものに感心しました。写真の店はディスプレーがうまいので、アンティークといえるほど古くなくとも、どこか懐かしく、まるでセピア色の写真の中に入り込んだような気分にさせる店作りです。貴族達が優雅にスポーツを楽しんだり、未開の土地に冒険旅行に出かけたりした時代のロマンを感じさせます。そんな雰囲気に誘われるのか、男性客が次々と足を止めていました。私も趣味で集めている車や飛行機、飛行船関係の資料やパイプ、生産停止になったウエッジウッド磁器などや写真を探してくまなく歩いてみました。
次々と男性が立ち止まってはボールを触り...買わずに立ち去ります
様々な時計や地球儀
高級家具や室内装飾を売る店も少し残っています
昔からある建物の迷路のような通路をしばらく散策していると、古いレーシングカーの写真を並べている店がありました。眺めていたらその店の主人は元オートレース専門のカメラマンで、並べている写真はすべて自分が撮影したものだと自慢していました。例えば、1955年のル・マン24時間レースの写真。マイク・ホーソンとファン・マヌエル・ファンジオとの一騎打ちで盛り上がったものの、事故で観客を巻き込む80人以上の死傷者が出た大惨事でも有名なレースです。マイク・ホーソンが優勝したのですが、彼の車が起点となって大事故が発生したので、かなり責められたようです。そのホーソンのジャガーDタイプがファンジオのメルセデスを抜いてリードしている瞬間を捉えた1枚です。このように歴史的なレースやレーシングカーのおもしろい写真があったので、何枚か欲しくなりました。店主は耳が大変遠く、残念ながらあまり会話は成立しませんでしたが、写真を買ったら喜んでくれて一緒に記念撮影しました。
元・レース・フォトグラファーの店主と
後はのんびりとこの街で土曜の昼下がりを楽しむことにしました。洒落たオープンカフェの窓越しに、大道芸やら花屋さんの色とりどりの花を眺めて過ごしました。
小雨の中でも楽器を奏でるストリート・パフォーマー
プレゼントでしょうか、花束を買う男性客で繁盛していました