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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所/高等研究院 講師・中日文化センター
講師 伊藤パディジャ綾香

食の安全について考える(5)食品添加物

2023年9月からは「食の安全について考える」というテーマを取り上げています。私たちは日々、食品を食べて生きており、食生活は、住んでいる場所や気候、個人の生活習慣、好き嫌い、経済状況などを反映しています。いかに食の安全を確保するかは、私たちの健康を左右する大きな要因のひとつです。本シリーズでは、食の安全について考え、ご自身の食生活をより豊かにできるよう、情報をお伝えしていきたいと思います。今月は、生体異物のひとつとして食品添加物を取り上げ、解説します。

【食品添加物とは】

食品添加物とは、食品製造の際に添加する物質で、加工したり、保存したり、味をつけたりするときに使う調味料、保存料、着色料などの総称です。厚生労働省は、食品添加物の安全性についての食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なう恐れのないものに限って、成分規格や使用基準を定め、使用を認めています。

食品添加物は、大きく以下の4つに分けられます。

・指定添加物(475品目:2023年7月26日改正まで記載)
安全性を評価した上で、厚生労働大臣が指定したもの
ソルビン酸、キシリトールなど

・既存添加物(357品目:2020年2月26日改正まで記載)
日本において既に使用され、長い食経験があるものについて、例外的に指定を受けることなく使用・販売が認められたもの
クチナシ色素、タンニンなど

・天然香料(約600品目)
動植物から得られる天然の物質で、食品に香りをつける目的で使用されるもの
バニラ香料、カニ香料など

・一般飲食物添加物(約100品目)
一般に飲食に供されているもので、添加物として使用されるもの
いちごジュース、寒天など

厚生労働省によって使用が認められた食品添加物であっても、継続的な安全確保のため、国民一人当たりの摂取量を調査するなどの取組みがなされています。すなわち、指定添加物に指定されても、ヒトの健康を損なう可能性が確認されれば、指定添加物リストから削除されることもあるということです。実際、2004年には、アカネ色素について、提出された資料から、「遺伝毒性及び腎臓への発がん性が認められており、1日摂取許容量を設定できない」とされ、削除されました。

【食品添加物の目的】

食品添加物は、さまざまな目的で利用されますが、大きな目的のひとつには、食品の保存性を高めることが挙げられます。例えば、肉類や、水揚げされた魚に食品添加物を加えて、すり身にしたものが、肉であれば、ハムやソーセージ、魚であれば、ちくわやかまぼこに加工されます。また、食感に変化をもたらしたり、香りをつけたりする目的でも使用されます(表1)。

(食品の品質を保つためのもの)

食品の腐敗や酸化を防ぐために使われるものがあります。ソルビン酸は、カビや細菌などの増殖を抑制し、食品の保存性を高める保存料です。酸化防止剤、防カビ剤、日持ち向上剤、殺菌剤があります。

(食品の製造、加工時に加えるもの)

製造時の泡立ちを抑えるための消泡剤、食品のpHを調整するためのpH調整剤、型離れしやすくするための離型剤があります。

(食品の形成や、食感を持たせるためのもの)

豆腐や麺、マーガリンなどの形を作ったり、食品に滑らかな感じや粘り気を与えるなど食感を持たせたりするために、豆腐凝固剤、膨張剤、かんすい、乳化剤、ゲル化剤、安定剤などが用いられます。

(色を着けたり、脱色したりするためのもの)

クチナシ黄色素やコチニール色素などの着色料、ハムやソーセージなどの色調を改善するための発色剤や、かんぴょう、こんにゃくなどの食品を白くするための漂白剤があります。

(味と香りを良くするためのもの)

キシリトールやアスパルテームなどの甘味を与える甘味料、酸味を与える酸味料、苦味を与える苦味料、うま味や塩味などを与える調味料、香りを与える香料などが使用されます。

(食品の栄養成分を補うためのもの)

食品の調理や加工の過程で失われる栄養素の補充や、栄養成分の強化のために使用されるもので、ビタミン、ミネラル、アミノ酸があります。栄養強化を目的として使用した添加物は、表示が免除されます。

表⒈ 食品添加物の種類と用途(一般社団法人日本食品添加物協会の資料より)

【食品添加物の安全性】

食品添加物は体に悪く健康を損ねる可能性があるもの、というイメージを抱く人も少なくないと想像しますが、表1を見ると、私たちが日常的に食べる食品に使われていることがわかります。
特に、豆腐を作るときに使われるにがりや、中華麺を作るときに使われるかんすいは、古くから使われているものであり、それらの食品を作るために欠かせない添加物でもあります。

前述のように、食品添加物の使用は法律で厳しく規制されています。一方で、安全性を試験するための動物実験では、複数の化学物質を同時に投与したときに起こる影響を厳密に評価することが難しいという問題点も抱えています。このことから、添加物の摂取量が、安全性を担保する上で重要であると言えます。

【まとめ】

今回は、食品添加物について解説しました。私たちは、日常的に添加物を摂取しています。添加物のおかげで、食品の保存性を高めて安全に食べることができますし、風味や食感を向上させておいしく楽しい食生活を送ることができますが、数多くの添加物を摂取しすぎると健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。添加物を含む加工品に頼りすぎることなく、手作りできるものは手作りすることによって、添加物の過剰摂取を避け、日々の食生活を楽しみましょう。

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