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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所/高等研究院 講師・中日文化センター
講師 伊藤パディジャ綾香

第29回 冷えと食事

秋が終わり、冬らしく寒くなってまいりました。冷え性でお悩みの方には辛い季節です。体が冷えると、思うように体が動かないだけでなく、消化不良を起こすことや、風邪のような感染症にかかりやすいなど、さまざまな不調が現れます。冷えのタイプや原因、対処法を知って、冬が本格化する前に早めに取り組みましょう。

【冷え性とは】

冬の寒い時期に手足が冷えるのはしかたのないことですが、「冷え性」は、周囲の人が寒さを感じない温度でも特に手や足の先、二の腕や太ももからお尻にかけての部分が温まらず、冷えているような感覚がある体質のことをいいます。必ずしも実際に体温が下がっているわけではなく、触ると冷たいというわけでもなく、低体温(深部体温が35℃以下になること)とは異なります。

冷え性といえば、女性特有だと思う方も多いかもしれません。確かに男性に比べると女性に多い症状ですが、男女問わず、中年以降になると冷えを感じる人が増えてくるようです。

冷えが続くと、以下のようにさまざまな症状がもたらされることがあるため、「冷えは万病の元」とも言われます。

<冷えが続くことによってもたらされる症状>

  • 肌荒れ,かさつき,くすみ
  • 腰痛,頭痛,肩こりなどの痛み
  • じんましん,アトピーなどの皮膚疾患
  • トイレが近い,膀胱炎
  • 便秘,下痢,おなかの張り
  • 風邪などの感染症

【冷え性の原因】

冷え性の原因は、年齢や生活習慣によってさまざまですが、主に以下のようなことが考えられます。

(エネルギー不足)
特に若い女性の冷えに多い原因として、食事制限をしている場合、あるいは運動量の多さに比べて食べる量が少ない場合、十分にエネルギー(熱)を作り出すことができずに冷えを招くことがあります。

(基礎代謝の低下)
エネルギー不足によって冷え性になる一方、中年以降の男女に多い原因として、運動不足による筋肉の低下が考えられます。筋肉量の低下によって基礎代謝が低下し、熱を作り出しにくくなり、冷えにつながります。

(ストレス、睡眠不足)
温度の変化に応じて熱をどれだけ作り出すかは、自律神経によって制御されています。職場や社会の中でストレスを感じていたり、睡眠不足になっていたりすると、自律神経のバランスが崩れて熱産生がうまくいかなくなります。このため、冬に限らず、夏でも冷えを感じることがあります。

(病気)
手足の冷えは血行不良も大きく関係します。このため、低血圧や貧血、あるいは手足の動脈が詰まって血行障害を起こす、閉塞性動脈硬化症などの病気があると、冷えを感じます。また、甲状腺機能低下症や、膠原病などの自己免疫疾患でも冷えに似た症状があらわれます。

【冷え性のタイプ】

上記のように、冷え性の原因が異なることによって、あらわれる症状も異なり、大きく4つのタイプに分けられます。

(四肢末端型冷え性)
手足の末端が冷え、汗をほとんどかきません。肩こりや頭痛を感じやすいかもしれません。このタイプは、食事制限をしている人や、やせ型の人に多く見られます。食事を十分にとって、熱を作る体にすることがポイントです。食事制限による減量を止めて、タンパク質を中心にしっかり食べることが大切です。

(全身型冷え性)
手足だけでなく、体全体が冷えます。汗はほとんどかかず、年中冷えを感じることが多いため、慢性的な疲れを感じることがあるかもしれません。この場合、筋肉量の減少や基礎代謝の低下が原因として考えられます。食事はタンパク質を意識して十分に食べ、運動もしっかりと取り入れましょう。

疲れがたまって自律神経バランスが崩れると、冷えはますます悪化します。ストレスをためない、睡眠をしっかりとるなど、気をつけると良いでしょう。

(内臓型冷え性)
内臓型の場合、手足を触ると温かく、汗をかきやすいため、冷え症だと自覚できない場合が多いです。食欲はあり、どちらかというと肥満気味の人に多い症状です。また、腹部手術による血行不良によっても起こります。

おなかの張り(ガスがたまる)、腹痛、便秘、下痢などを起こしやすいなどの特徴があるため、冷たい飲み物を控え、体が温まるような食事をすることが大切です。40~50℃くらいの白湯をこまめに飲むことで内臓を温めて、全身の血流改善につながると期待できます。

(下半身型冷え症)
腰から下が冷えるのが特徴の下半身型冷え症。男女ともに中高年に多いタイプです。デスクワークを長時間にわたってする方や、運動不足の方は下半身の血流が悪くなることによって起こります。一方、上半身の血流は良いため、顔がほてりやすいという特徴があります。

この場合、足の付け根からおしり付近の筋肉をほぐすようなストレッチ、ウォーキングなどの全身を使う運動、スクワットなどの下半身を鍛える筋トレなどをすると効果が高いでしょう。

【入浴方法】

熱すぎる湯につかることや、長時間の半身浴で汗をかくのはかえって体を冷やすこともあります。実際、42℃のお湯に10分間つかったときよりも、38℃のお湯に10分間つかったときの方が入浴後の体温が高く維持されるというデータもあります。お風呂は40℃ほどの湯に10分ほどつかったあと、シャワーを浴び、再度2分ほどつかるのが良いでしょう。

【冷え症対策の食事の仕方】

東洋医学には、体を温める性質か、冷やす性質かによって食材を5つに分類する考え方があり、「食材の五性」と呼ばれます(図1)。「熱」や「温」に属する食材には、内臓の動きを活発にしたり、血行をよくしたり、代謝を高めたりする効果があるとされ、冷え性対策に有効であると考えられます。一方、「涼」や「寒」の食材は、余分な熱をとり、体を冷やす効果があるとされます。

(熱・温の食材)
体を温める食材には、根菜類や冬に食べる食材が多く含まれます(図2)。唐辛子やにんにく、しょうがなどの香味は、料理に合わせて取り入れると代謝が高まって良いでしょう。また、発酵食品は全般的に体を温める食材に含まれますので、味噌やみりん、納豆など、積極的に食べたいものです。お茶も、発酵茶である紅茶や、半発酵の中国茶(烏龍茶)などを飲むと良いでしょう。飲み物は、冷たいものでなく、温かいものを少しずつこまめにとりましょう。

(涼・寒の食材)
体を冷やす食材には、主に夏の食材や、暑い地域で食べられる食材が含まれます(図3)。別の特徴として、水分を多く含む食材であるということです。例えば、秋の食材である柿は、体を冷やす効果がありますが、干し柿にして水分を除去すると、体を温める食材に変化するとされます。飲み物は、発酵しない緑茶や、夏のお茶として飲まれる麦茶は体を冷やすとされますので、普段飲むお茶も季節によって、体質によって変えてみるのも良いでしょう。

【冷え性改善のための献立例】

今回、冷え性改善のための献立としてご紹介するのは、石焼ビビンバ。どの料理にも共通して、辛過ぎる料理は、発汗を促してかえって体を冷やしてしまいます。体がポカポカと温まる程度の辛さに調節して食べることがポイントです。

石焼ビビンバ(写真・左)

たっぷりの野菜を使ってナムルを作ります。ニラ、豆もやし、にんじんなどの野菜を塩茹でして、すりごま、しょうゆ、塩、ごま油で和え、ナムルにします。しょうゆ、砂糖、にんにく、しょうがで炒りつけた牛薄切り肉と、野菜のナムル、キムチ、温泉卵をご飯に盛り合わせて、お好みでコチュジャンを添えます。

(栄養のポイント)
野菜をたっぷりと食べることができます。にんじんやニラは体を温める効果のある食材です。
キムチやコチュジャンは発酵食品なので、体を温める効果があります。
ポイントは辛過ぎるキムチの食べ過ぎや、コチュジャンののせ過ぎに気をつけること。適度に取り入れましょう。
かにのしょうが風味かき卵スープ(写真・右)

チキンスープにかにの身としょうがを入れて、片栗粉でとろみをつけたスープです。チキンスープは、大きめの鍋にたっぷりの水を入れ、鶏手羽元4本、しょうがとねぎのぶつ切りを入れて20分ほど煮出して作るとおいしいでしょう。

(栄養のポイント)
しょうがをたっぷり入れるので、体が温かくなります。
寒い時期には片栗粉でとろみをつけると、料理自体が冷めにくく、温かい状態で食べることができて良いでしょう。
マグロの薬味ソースがけ(写真・奥)

薄切りにした刺身用のマグロに、みじん切りにした白ネギとしょうがをのせ、しょうゆ、砂糖、ごま油と黒酢(または酢)で作ったソースをかけます。

(栄養のポイント)
魚に含まれる油(EPA/エイコサペンタエン酸)には、血液をサラサラにして血の巡りを良くする効果があります。EPAによって血行が良くなり、冷え対策にも良いでしょう。
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