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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所/高等研究院 講師・中日文化センター
講師 伊藤パディジャ綾香

第27回 肝腎要・肝臓の役割と病気

「非常に重要である」という意味で使われる「肝腎要」。肝臓と腎臓が私たちの体にとって重要であることが語源となっています。前回は、腎臓が私たちの体の司令塔ともいえる重要な役割を果たすことについて解説しました(第26回「肝腎要・わたしたちの健康を支える腎臓」参照)。今回は、「肝腎要」のもう一方、肝臓について解説します。

【肝臓とは】

肝臓は、私たちの体重の1/50を占める、体の中で最も重い臓器であり、成人で1~1.5kgの重さがあります。驚異の再生能力を持ち、肝臓の1/3を除いても1~2ヶ月で元の大きさに戻るほどです。しかし一方で、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、痛みや体の不調などの症状を感じないまま、知らないうちに病気が進行するのが特徴であり、肝臓の病気が進行してしまうと再生能力も低くなってしまいます。

肝臓の主な働きは、栄養の代謝と解毒、そして消化を助ける胆汁の生成と分泌です。

①栄養の代謝
食事でとった栄養素は、私たちが活動するためのエネルギーや、体を構成する要素として変換される必要があります。食べたものは食道から胃、腸にかけて消化され、栄養素として腸から吸収されると肝臓に運ばれます。肝臓では、栄養素を使いやすい形に分解あるいは合成して全身に運び出します。例えば、糖質はエネルギーとして使われますが、余剰の糖質はグリコーゲンという形に変えて肝臓や筋肉に貯蔵します。脂質からコレステロールが合成されるのも肝臓ですし、体の中で重要な働きをするアルブミンや、出血を止める凝固因子などのタンパク質も肝臓で作られて、血液中に放出されています。

②解毒作用
肝臓には食事中の栄養素だけでなく、アルコールや食品添加物、薬、細菌など、様々なものが流れ込んできます。肝臓には、体に害を及ぼすこれらの物質を、毒性の低い物質に変えて尿中に排泄するという解毒作用があります。アルコールや薬を必要以上に摂取すると、肝臓での解毒が追いつかず、肝臓に大きな負担をかけてしまうことになります。

③胆汁の生成と分泌
胆汁は、脂肪の消化や吸収を助けるための消化液です。肝臓で作られて胆のうに貯められていますが、脂肪の多い食事をとった時など、必要に応じて十二指腸に分泌されて消化を助けます。

【肝臓の病気】

前述のように、肝臓病はほとんど症状がなく、知らないうちに進行してしまうのが特徴です。何らかの原因で肝臓に炎症が起こり(肝炎)、慢性化して慢性肝炎の状態になっても、症状はほとんど出ないので病気に気付きにくいです。肝臓の細胞は修復と再生を繰り返しますが、やがて追いつかなくなり、本来は柔らかい肝臓が、硬く萎縮していき、肝硬変になります(図1)。
また、肝炎や肝硬変があると、肝がんを発症するリスクが高くなります。しかし肝がんもまた、発症しても自覚症状がないことが多いため、症状が出て肝がんが発見されたときには既に末期であることもあります。肝がんは、もともと肝臓の状態が良い人に発症することはほとんどないので、定期健康診断などで肝臓に異常がないかをチェックすることが大切です。

【肝臓病の原因】

肝臓病の原因は様々ですが、最も多いのが肝臓に炎症を起こす肝炎ウイルスの感染です。ウイルス性肝炎には、主にA型、B型、C型、E型の4種類がありますが、特に慢性化しやすいのはB型ウイルスとC型ウイルスによるものです。

ウイルス性以外にも、飲酒や過食によるもの、薬剤によるもの、免疫が自分自身を攻撃する自己免疫疾患によるものなどがあります(図1)。このなかでも特に注意したいのが、飲酒や過食による脂肪肝。脂肪肝は、その名の通り、肝臓に脂肪がたまる状態です。深刻に考えない人も多いかもしれません。しかし脂肪肝もまた、肝炎や肝硬変、肝がんへと進行していくリスクを高めるとして、近年とても注目されていますので、次回詳しく解説したく思います。

【血液検査で肝臓の状態を知る】

肝臓の病気は自覚症状で気付くことが困難ですが、血液検査で肝臓の異常をチェックすることができます。一般の健康診断でもある程度の判断はできますので、定期的に受診して次のような項目を見てみましょう。数値の異常を指摘された場合には、病気かもしれないという意識を持って放置しないことが大切です。

ALT(GPT):基準範囲 30 IU/L 以下
肝細胞に含まれる酵素で、肝細胞が壊れると血液中に出てきます。値が高いと肝臓が障害されています。

AST(GOT):基準範囲 30 IU/L 以下
ALT同様、肝細胞に含まれる酵素で、肝細胞が壊れると血液中に出てきます。値が高いと肝臓が障害されています。

アルブミン:基準範囲 3.9 g/dl 以上
血液中のタンパク質の半分以上を占め、肝臓でのみ作られるタンパク質です。肝臓の機能が低下すると値が下がります。

γ-GTP:基準範囲 50 IU/L 以下
肝臓で作られて解毒を助ける酵素です。アルコール摂取量が多いときや脂肪肝があるときに値が高くなります。

総ビリルビン:基準範囲 0.4〜1.7mg/dl
古くなった赤血球(ヘモグロビン)が壊れてできる老廃物で、胆汁の主成分となる黄色い色素です。常胆汁とともに排泄されますが、肝臓の機能が低下すると値が上がります。

注)肝機能検査の基準値は、日本人間ドック学会より参照

【肝臓のために日々気をつけること】

①食事はバランスよく
かつて、肝臓の病気がある人には「高エネルギー、高タンパク食」が勧められてきましたが、現在は見直されており、「適量カロリー、適量タンパク質、脂肪控えめ」なバランスのとれた食事を1日3回、規則正しくとることが基本です。

②食品添加物はなるべく避けましょう
食品添加物を処理(解毒)するのも肝臓です。なるべく肝臓への負担をかけないためにも、食品添加物の少ない食事をすることが大切です。

③食べ過ぎないように気をつけましょう
一気に食べると肝臓への負担が大きくなります。腹八分目に食べましょう。肉類を減らして魚や大豆製品を増やすと良いでしょう。

④適度な運動と質の高い睡眠を
適度に運動を取り入れて肝臓に余剰の栄養を溜め込み過ぎないようにすること、十分な睡眠をとって肝臓を休ませることが大切です。また、寝ている間に分泌される成長ホルモンは傷ついた肝臓を修復します。

【肝臓にやさしい献立例】

ちらし寿司

まぐろや鯛、タコ、エビなどの魚介類をのせてちらし寿司にします。

(栄養のポイント)
魚介類をたくさん食べられて、良質のタンパク質と脂質を摂ることができます。
酢飯にはごまや、煮て細かく刻んだかんぴょうや椎茸など混ぜるとご飯の食べ過ぎを防ぎ、食物繊維をとることができます。
焼き豆腐

よく水に晒した後、水気を切った木綿豆腐に小麦粉をまぶして油で揚げ焼きし、かつお出汁をかけて食べます。

(栄養のポイント)
たっぷりの大根おろしをかけて食べることで、消化を助けます。
ししとうがらしなどの野菜を素焼きにして添えると、一緒に野菜を食べられて良いでしょう。
なめことねぎのかき玉汁

かつおだしになめことねぎを加えて、かき玉汁にします。

(栄養のポイント)
食物繊維が豊富ななめこは、満腹感を得やすく食べ過ぎ防止に効果的です。また、食物繊維は腸内環境を整え、体の老廃物を排泄することができます。
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