文化講座
第5回 フランス・ベルギー
前シリーズでは、気軽に作れておしゃれなもてなしレシピ、盛り付けのコツ、器の選び方、テーブルセッティングなどをご紹介しました。
シリーズ19回目の今シリーズでは、「世界のとっておきグルメ」というテーマで、世界各国を食べ歩いて料理研究に余念のない伊藤華づ枝が、食べて感動した料理や店をご紹介しております。
家庭で作れる現地レシピも併せてご紹介します。
第5回目の今月は、「フランス共和国とベルギー王国」です。
フランス共和国
フランスは、西ヨーロッパに位置する単一主権国家です。
複数の海外領土を持っています。
フランス料理は、16世紀にトスカーナ地方の料理の影響を受け、フランス王国の宮廷料理として発達しました。
ソースを使った料理が多いのが特徴です。
各国で外交儀礼時の正餐は、フランス料理とされることが多く、格式高い料理です。
正餐の際の厳格な作法にのっとった料理は、「オートキュイジーヌ」と呼ばれています。
フランスの「美食術」は、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。
<基本情報>
■首都:パリ
■人口:6,699万人(2017年)
■面積:55.1万km2(日本の約1.3倍)
■宗教:カトリック、イスラム教、ユダヤ教
■言語:フランス語
■時差:マイナス8時間 フランスが正午のとき、日本は翌日の20時
(11~3月まではマイナス7時間、フランスの方が遅れています)
■通貨:ユーロ 1€=約¥130.9(2017年9月現在)
フランスの食事情
フランスの食事文化は、中世ヨーロッパの王族・貴族間における外交宴席の食事文化から生まれました。
それらの人々に仕えた調理人は、ヨーロッパ間を行き来し、名声を競い合いました。
そのため宴席に使用される食材、調理法、技術は日々高められ、フランス料理が確立され、発展していきました。
16~17世紀
16世紀半ば、ルネッサンスのなかで開花したイタリアの食事文化がフランスに紹介されました。
※フランス料理はイタリアの影響を大きく受けています
その後、ヴェルサイユの宮廷料理として洗練され、ルイ15世の時代に最高レベルに到達します。
1789年フランス革命後、王族・貴族の使用人であった調理人が街に出てレストランを開きました。
これによって美食が大衆化し、美食家の時代を迎えます。各料理に合うワインが示唆されたのもこの時代です。
18世紀
料理人による料理書が出版されました。
そして家庭の主婦に新しい技術が豊富に伝えられました。
家庭料理が発展し、家庭に客人を迎えてディナーが楽しまれるようになりました。
19世紀~現代
それまで肥満は高い地位を示すものでしたが、社会が豊かになるとバランスのとれた体型が誇りになるように変化していきました。
安全な材料による食事制限、自然との調和など精神的背景とする新しい料理革命が起こりました。
現代のフランスでは、3つの要素を取り込んで新しい食事文化を作っています。
新しい食事文化とは、「ヌーベル・キュイジーヌ」
伝統的なフランス料理を、より軽く仕上げていこうとする傾向を指します。
ヌーベル=新しい感覚の、キュイジーヌ=台所を意味します。
世界三大料理のひとつ
フランス料理は世界三大料理のひとつ(他の2つは中国料理・トルコ料理)で、世界中で高く評価され、フォーマルな場の食事として選ばれてきました。
アミューズ・前菜・スープ・メイン・チーズ・デザートが、順に一皿ずつサービスされます。
ビストロ料理
小さなカフェ、小さなレストランを指し、「定食屋」「居酒屋」などと訳されます。
元々はワインを出すバーのことを、「ビストロ」と呼んでいました。
ロシア語の「速く(料理を出せ)」が由来という説もあります。
農業国のフランス
地方によって名物料理や名産品があります。
イルドフランス地方(フランスの中心):パリ
フランスの中心地のため、全土の料理が集結しています。
森が多いため、秋から冬にかけてはジビエを楽しむことが出来ます。
8月にパリへ行った際には、すでにフランスは秋でした
2017年8月
ジビエ料理(ウサギのハーブ詰めグリル)を習いました
2017年8月 アランデュカス氏の料理教室で
北東地方:ブルゴーニュ・アルザス
ワインが有名な地方のため、ワインを使った料理が食べられます。
名物料理のひとつがエスカルゴで、エスカルゴバターと呼ばれるバターにパセリとにんにくなどを混ぜたもので味付けします。
ドイツとの国境が近いため、キャベツの酢漬けやじゃがいも料理もあります。
「Allard(アラール)」(アランデュカス氏がプロデュースするビストロ)でエスカルゴを食べました
伊藤華づ枝作 エスカルゴ
エスカルゴはフランス語で「カタツムリ」を意味します
南東地方:リヨン・コートダジュール・プロヴァンス地方
リヨンは星つきレストランが多く集まる、食の都で肉料理が盛んです。
地中海に接するコートダジュール・プロヴァンス地方は、オリーブ油を使った地中海料理も人気です。
リヨンの市場で
リヨンのオイスターバーで、白ワインとカキをオーダー
南西地方:ボルドー・バスク地方
「黒いダイヤ」と呼ばれるトリュフや、フォアグラの高級食材の名産地です。
世界三大珍味のうちの2つが、この地の名産なのです。
トリュフ(写真右手前)
トリュフがたっぷりのったピザ
北西地方:ブルターニュ地方
そば粉を使ったクレープ「ガレット」と、りんごの発泡酒「シードル」が人気です。
パリのクレープリーにてガレットを食べました
2017年8月
伊藤華づ枝作 ガレット
ミシュラン星つきレストラン
ミシュランとはフランスのタイヤメーカーのことで、ミシュランガイドはミシュランが発行する赤い表紙のホテル・レストランのガイドブックです。
ホテルは5段階、レストランは3つ星・2つ星・1つ星・星なしの4段階で評価されます。
ミシュランの顧問として、ミシュランガイドの初代責任者を務めたのは、フランスの料理研究家・キュルノンスキー氏です。
フランスのアンジェに生まれたキュルノンスキー氏は、「食べ歩きの元祖」と言われる人物で、"食通の王"としても呼ばれています。
キュルノンスキー氏は、フランスの各地方の郷土料理を発掘し、著書「美食の国フランス」を書きました。
レ・ザミ・ドゥ・キュルノンスキーの会員
レ・ザミ・ドゥ・キュルノンスキーとは、生涯を通じてフランスの食文化や、日本とフランスの文化発展に寄与することを目的とする団体です
ミシュランの3つ星は「どんな遠くても行く価値のあるレストラン」と定義しています。
星によって輝いた店やシェフたちの人生を変えるミシュランの星、それだけミシュランの影響力は大きいといえるのでしょう。
トゥール・ダルジャン
店名は、フランス語で「銀の塔」を意味します。店の名物は、鴨料理です
ポールボキューズ
3つ星を50年以上も維持しているフランス料理界の巨匠が経営するレストラン
ホテル・ムーリス
5つ星ホテルに宿泊。ホテル内のレストランは豪華絢爛でした
エコール・ド・キュイジーヌ(料理学校)・アラン・デュカス氏の料理教室に入りました
2017年8月
スイーツの都
フランスには、街中にお菓子屋さんがたくさんあります。
エクレア
フランス語で「稲妻」を意味し、フランス人が日常的に食べる代表的なお菓子のひとつ。
伊藤華づ枝作 エクレア
エクレアは19世紀初めにアントナン・カレームが考えたという説が有力です。
アントナン・カレームは、フランス料理史上で、天才料理人・天才製菓人として名を残す人物です。
サン・ト・ノーレ
円盤状のパイ生地の土台にカラメルを塗ったシューとクリームを盛ったケーキで、フランスでは特別な日に食べられています。
パリに「サントノーレ通り」という通りがあり、サントノーレ通りに店を開いたシブースト氏が考案したので、名づけられました(シブーストの弟子・オーギュスト・ジュリアンが考案し、師匠の店のある通りの名をつけたという説もあります)。
パリで食べたサントノーレ
2017年8月
モンブラン
栗をふんだんに使ったケーキで、フランス語で「白い山」を意味します。
フランスとイタリアの国境に位置する、アルプス山脈の最高峰モンブランから名づけられました。
カップ状のスポンジ生地やタルト生地の上に、マロングラッセ(栗の砂糖漬け)をつぶしてペーストにしたものを、細い口金でらせん状に絞り出して作ります。
モンブランの有名店「アンジェリーナ」のモンブラン
パリで初めてモンブランを出した店と言われています
2017年8月
チョコレート
パリで活躍する日本人パティシエのサダハル・アオキさんのラボを見学させてもらいました
2017年8月
チョコレート専門店「パトリック・ロジェ」
2000年に30歳という若さで、チョコレート職人にとって最高の名誉であるM.O.F(フランス国家最優秀職人賞)に輝きました。
ドーム型のチョコレートが特に有名です。
2017年8月
ダロワイヨはパリを本拠地とする食品会社です。
フランス菓子を代表するチョコレートケーキ「オペラ」はダロワイヨ発祥のスイーツです。オペラはチョコレートとコーヒーを使ったケーキで、外から一目ですべての層が見え、ひと口でケーキ全体の風味が分かる新しい形のケーキです。
オペラ座のバレリーナに対して賛辞の念を表すために、「オペラ」と名付けました。
2017年8月
オペラ座の前で
2017年8月
ベルギー王国
ベルギーは、西ヨーロッパに位置する連邦立憲君主制国家です。
首都のブリュッセルに、欧州連合の主要機関が多くあるため、「EUの首都」と言われています。
ベルギーはフランスの北部に近いため、食文化もフランス北部と似ています。
フランス北部同様にバターやクリームを大量に使い、グラタンが名物料理です。
<基本情報>
■首都:ブリュッセル
■人口:1,132万人(2017年)
■面積:30,528km2(日本の約12分の1)
■宗教:カトリック
■言語:オランダ語、フランス語、ドイツ語
■時差:マイナス8時間 ベルギーが正午のとき、日本は翌日の20時
(11~3月まではマイナス7時間、フランスの方が遅れています)
■通貨:ユーロ 1€=約¥130.9(2017年9月現在)
ブリュッセル市内の刺繍専門店で買い物をする筆者
ブルージュ市内のチョコレート専門店
ベルギーにはチョコレートの専門店が多くあります
星つきレストラン「デ・カルメリート」
ベルギーにはミシュランの3つ星を取得しているレストランが2軒しかなく、その内の1軒に訪れました
(ブルージュ市内)
3つ星レストラン「デ・カルメリート」バラが咲き誇る庭が見渡せるテーブルで、ティータイムを過ごしました
※もちもちの生地と、発酵バターの香ばしさが絶品!!
材料 | 8枚分 |
A | |
そば粉 | 100g |
薄力粉 | 20g |
粗塩 | 小さじ1/4~1/3 |
水 | 350~400ml |
卵 | 1/2コ |
エシレバター(発酵バター) | 80g |
卵 | 8コ |
パルメザンチーズ | 適宜 |
ロースハム | 8枚 |
ベビーリーフ | 1袋 |
クリームチーズ(又はサワークリーム) | 120~150ml |
作り方
- (A)を混ぜ合わせ、室温で4時間おきます。(最低1時間位)
- フライパンをよく熱し、5gのバターを入れ、1.をお玉1杯分入れてフライパンを回して薄く広げます。
- 2.の中央に卵の白身をのせて広げ、黄身を中央にのせます。生地のフチが茶色になってきたら、チーズを散らして四方を折ってフタをして蒸し焼きにします。
- 仕上げに残りのバターを入れ、溶かしてカリッとするまで焼きます。これを8枚分作ります。
- 器に5.を盛り、ベビーリーフとクリームチーズを添え、パルメザンチーズを再度ふりかけます。
※サクサクのメレンゲの食感と栗のペーストが贅沢な秋のデザートです
材料 | 8コ分 |
卵白 | 2コ分(75g) |
グラニュー糖 | 50g |
生栗 | 500g |
A | |
水 | 100ml |
グラニュー糖 | 75g |
生クリーム | 200ml |
コアントロー(洋酒) | 小さじ1 |
バニラアイスクリーム | 800ml |
くるみ | 8粒 |
作り方
- 卵白に少しずつグラニュー糖を加えながら、角が立つまで泡立てます。
- 1.をしぼり袋に入れ、直径10cm程度を8コしぼり出します。
- 2.を110℃で80分間焼きます。
- 栗はきれいに洗ってから鍋に入れ、たっぷりの水を入れて火にかけます。(蒸しても良い)
- 4.が煮立ったら40~50分間程度茹でます。
*半分に切って食べてみて、中心まで火が通っていれば良い。 - 5.を包丁で半分に切り、中身をスプーンですくい取ります。
- 6.の3/4量を裏ごし、残り1/4は粗く刻みます。
- (A)を煮立てて7.をすべて入れ、中火で練り上げます。
- 8.を波取りし、粗熱を取ります。
- 生クリームを泡立てます。
- 10.に9.とコアントローを加えて混ぜます。
- 3.のメレンゲに、バニラアイスクリームをのせ、11.のクリームを盛り付けます。
- 12.に粗く刻んだくるみをトッピングします。