文化講座
第2回 メキシコ合衆国
前シリーズでは、気軽に作れておしゃれなもてなしレシピ、盛り付けのコツ、器の選び方、テーブルセッティングなどをご紹介しました。
シリーズ19回目の今シリーズでは、「世界のとっておきグルメ」というテーマで、世界各国を食べ歩いて料理研究に余念のない伊藤華づ枝が、食べて感動した料理や店をご紹介しております。
家庭で作れる現地レシピも併せてご紹介します。
第2回目の今月は、「メキシコ合衆国」です。
メキシコ合衆国
メキシコは、北アメリカ大陸の南部に位置する連邦共和制国家です。
スペインの植民地時代が約300年あったため、スペイン語を事実上の公用語として使用しています。
1つの連邦区(首都のメキシコシティ)と31の州に分かれています。
メキシコ料理は、先住民のアステカ族やマヤ族の料理を母体としながら、スペイン料理の影響を受けています。
とうもろこしや豆、唐辛子を使った辛味のある料理で知られています。
メキシコ料理はメキシコに限らず、隣の国・アメリカ合衆国でも食べられています。
<基本情報>
■首都:メキシコシティ
■人口:1億2,863万人(2016年)
■面積:197万km²(日本の約5倍)
■宗教:カトリック(国民の約9割)
■言語:事実上の公用語はスペイン語
■時差:マイナス14時間 メキシコが正午のとき、日本は翌日の午前2時
(3~11月まではマイナス15時間、メキシコの方が遅れています)
■通貨:ペソ(M$) 1M$=約¥6.3(2017年7月現在)
メキシコの食事情
栽培種のトマト(食用)の発祥地
南米ペルーのアンデス高原が原産のトマトが、人間や鳥によってメキシコに渡り、メキシコで栽培種のトマト(食用)が発祥したとされています。
そしてトマトは、メキシコを征服したスペイン人によってヨーロッパに伝わり、世界に広まりました。
トマトの語源は、メキシコ湾をのぞむベラクルス地方のアステカ人が「トマトゥル」(=「膨らむ果実」)と呼んでいた事から、「トマト」という呼び名となりました。
「トマトゥル」は、本来「ホオズキ」を指し、メキシコではホオズキを煮込んで料理に使っており、形の似ているトマトも同じ名前で呼ばれていたとされています。
メキシコシティの市場にて
メキシコでは、ホオズキの形をした青いトマトが一般的です
2011年3月
メキシコの伝統食「タコス」
「タコス」とは、メキシコの伝統食で「国民食」とも言えるものです。
トウモロコシの粉から作られた皮(トルティーヤ)に、肉などの具をのせ、サルサソースをかけ、二つに折って食べる軽食です。
タコスの具としてよく知られている「チリミート」は、実はメキシコ料理ではないのです。
メキシコのタコスは、テキサス州に移り住んだメキシコ人によって、「テックス・メックス(テキサス・メキシコ)料理」という「チリミート」をタコスの具とするアメリカ風メキシコ料理にアレンジされました。
メキシコの市場でタコスを焼いています
約35年前に訪れた時の写真
メキシコシティのレストランで食べたタコス。目の前で作ってくれます
2011年3月
伊藤華づ枝作 タコス
マサ(トルティーヤ専用の粉)を練ってトルティーヤプレスで丸く伸ばし、トルティーヤを作り、豆入りチリミートをのせました
そして、アメリカから日本へ「タコス」が伝わりました。
第二次世界大戦後の沖縄米軍基地は、メキシコ人系米軍人が多く、その人達からタコスが広がり、日本風にご飯の上にのせられ、沖縄の「タコライス」が生まれました。
伊藤華づ枝作 タコライス
レストラン「ラ・カサ・デ・トーニョ」
「ポソレ」という、豚の頭でとった濃厚なスープにとうもろこしを入れた料理が有名です。
タコスには、サルサ(野菜と唐辛子から作る辛い調味料)をお好みでかけて食べました
2011年3月
マルガリータ
テキーラベースの甘酸っぱいカクテル
「マルガリータ」とは、女性の名前で、ギリシャ語では"真珠"を意味します
伊藤華づ枝作 ブルーマルガリータ
グラスの縁をレモンやライムで湿らせ、塩をつけたスノースタイルが特徴です
レストラン「カフェ・デ・タクバ」
画家のフリーダ・カーロが結婚披露宴をしたレストラン
豆のスープやタマレス(とうもろこしの葉で巻いたちまき)、ワカモレ(アボカドのペースト)など、メキシコらしい料理を楽しむことが出来ます
2011年3月
伊藤華づ枝作 ワカモレ~トルティーヤチップスを添えて~
レストラン「アカプルコ」(アメリカ・ロサンゼルス)
ロサンゼルスはメキシコと近いため、メキシコ料理店も多くあり、本格的な味が楽しめます
サルサ・メヒカーナ(メキシコのソースという意味)とタコスを食べました
2008年12月
伊藤華づ枝作 サルサ・メヒカーナ
※「タコ」は軽食を意味し、とうもろこしで作ったトルティーヤに様々な具を包んで食べる、メキシコ代表の料理
材料 | 4人分・8枚分 |
鶏ささ身 | 4本(200g) |
塩 | 少々 |
白こしょう | 少々 |
玉ねぎ | 160g |
赤パプリカ | 1/2コ(100g) |
オリーブ油 | 大さじ2 |
塩 | 小さじ2/3 |
白こしょう | 少々 |
トルティーヤ | 8枚 |
ピザ用チーズ | 1カップ(80g) |
サルサ・メヒカーナ | 適宜 |
レモン(くし切り) | 1/2コ |
作り方
- ささ身は塩とこしょうをふって茹で、水に取り、冷めたら手で細く裂きます。
- 玉ねぎとパプリカは細く切ります。
- フライパンに油を入れ、2.の玉ねぎを炒めてからパプリカを炒め、塩とこしょうを振ります。
- トルティーヤに1.と3.、チーズ、サルサ・メヒカーナをのせ、オーブントースターで焼きます。
- 器に4.を盛り、上にサルサ・メヒカーナをかけてレモンを添えます。
<トルティーヤ・8枚分の作り方>
- ボウルにマサの粉100g、小麦粉100g、塩小さじ1/4を入れ、手で混ぜます。
- 1.に水を少しずつ加えて手でよく練り、耳たぶくらいの柔らかさの生地にします。
- 2.を8等分にして丸め、ラップをして20分間ほど寝かせます。
- 3.をトルティーヤプレスを使ってのばす(写真1.2.3.)か、丈夫なビニール袋の間にはさみ、まな板使って上からプレスします(写真4.)。直径13~14cmになるまで、ビニールの上からめん棒でのばします(写真5.)。
- フライパンを熱し、4.をのせて焼き色が付くまで両面を焼き(写真6.)、キッチンペーパーと布巾の間にはさみ、保温しながら蒸らします。
<サルサ・メヒカーナの作り方>
- トマト(完熟)1コ(100g)は粗くみじん切り、ピーマン1/4コ(7g)はみじん切りにします。玉ねぎ10gはみじん切りにして水に晒します。
- ボウルに(1)とオリーブ油大さじ1/2、ライムの搾り汁小さじ1/3、塩小さじ2/3、白こしょう少々、にんにくのすりおろし小さじ1/4、ハラペーニョのみじん切り5g、香草のみじん切り1軸(3g)を入れ、混ぜ合わせます。
※作ってから1日寝かせると、味がなじんで美味しくなります
※急いでいる時でも、最低5~6時間は置くようにします
※アボカドのディップで、メキシコ料理のサルサの一種
材料 | 4人分 |
アボカド | 1コ(230g) |
トマト(完熟) | 1/2コ(正味70g) |
玉ねぎ(みじん切り) | 15g |
A | |
青唐辛子(みじん切り)(又はハラペーニョ) | 1/2本分(2g) |
にんにく(みじん切り) | 小さじ1/8 |
香草(みじん切り) | 1軸分(2g) |
ライムのしぼり汁 | 小さじ1/3 |
塩 | 小さじ1/4 |
トルティーヤチップス | 24枚(50g) |
作り方
- アボカドは皮と種を取ってボウルに入れ、フォークなどでつぶします。(この時に、種を一緒にボウルへ入れておくとアボカドが変色しません)
- トマトは種を取ってみじん切りにします。玉ねぎは水に晒し、キッチンペーパーでよく水気を切ります。
- 1.に2.と(A)を入れて混ぜ合わせます。
- 器に3.を盛り、トルティーヤチップスを添えます。
※写真にはワカモレの上にライムを添えました