文化講座
第9回 タイ王国
前シリーズでは、気軽に作れておしゃれなもてなしレシピ、盛り付けのコツ、器の選び方、テーブルセッティングなどをご紹介しました。
シリーズ19回目の今シリーズでは、「世界のとっておきグルメ」というテーマで、世界各国を食べ歩いて料理研究に余念のない伊藤華づ枝が、食べて感動した料理や店をご紹介しております。
家庭で作れる現地レシピも併せてご紹介します。
第9回目の今月は、「タイ」です。
タイ王国
タイは東南アジアに位置する、立憲君主制国家です。
国土はインドシナ半島中央部と、マレー半島の北部を占めています。
<基本情報>
■首都:バンコク
■人口:6,572万人(2015年)
■面積:51万4,000km2(日本の約1.4倍)
■宗教:仏教・イスラム教など
■言語:タイ語
■時差:マイナス2時間 タイが正午のとき、日本は同じ日付の14時(サマータイムはありません)
■通貨:バーツ(THB) THB1=約¥3.39(2017年9月現在)
バンコクの中央部を流れる、チャオプラヤ川
水上マーケットや交通手段として、タイの人々の生活には欠かせない川です。
1995年4月
タイの古都「アユタヤ遺跡」は1991年、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。
アユタヤは、14世紀から400年以上も続いたアユタヤ王朝の都です。
1995年4月
タイの食事情
タイ料理は、中国やカンボジア、マレーシア、ラオス、ミャンマーなどの周辺諸国の影響を受け、香辛料や香味野菜、ハーブなどを使った料理です。
特に辛味・酸味・甘味などの様々な調味料や香辛料が絡み合って、独特な味と香りが特徴的です。
南北に長い国土のため、地域によって様々な料理があります。
中部:バンコク・アユタヤなど
アユタヤ朝から現在まで600年以上にわたり、政治と経済の中心地です。
平地で水が豊かなため農業が盛んで、タイ湾に面しているため漁業も出来、食材が豊富です。
砂糖やココナッツミルクを使った、甘い味付けが特徴です。
中国料理の影響を受けており、麺類や炒め物も食べられています。
代表料理:トムヤムクン・ゲーン(汁物・カレー)・ヤム(和え物・サラダ)など
伊藤華づ枝作・トムヤムクン
トム=煮る、ヤム=混ぜる、クン=エビを意味し、エビの辛くて酸っぱいスープのことです。
レモングラスを使った、酸味のある味が特徴です。
伊藤華づ枝作・グリーンカレー
タイ料理の「ゲーン」と呼ばれる汁物で、正確にはカレーではありません。タイ語で「ゲーン・キャオ・ワーン」と言い、「汁物・緑・甘い」を意味します。
グリーンカレーとは?
数多くの香辛料やハーブをすり潰したペーストを炒め、ココナッツミルクやナンプラー、砂糖で調味し、野菜や肉又は魚介をさっと煮込んで作ります。
コリアンダー(パクチー)や緑色のハーブ、青唐辛子を使用しているので、緑色に仕上がります。
グリーンカレーペーストを活用すると、手軽に作ることが出来ます。
東北部(イーサーンと呼ばれる地域):チャイヤプーム・マハーサーラカームなど
生活文化圏がラオスに入り、独特の食文化を持っています。
唐辛子をふんだんに使い、塩辛い味付けが特徴です。
主食はもち米で、蒸して、丸めて、その他の料理と一緒に食べます。
代表料理:ソムタム・ガイヤーン(地鶏の炭火焼き)など
伊藤華づ枝作・ソムタム
未熟な青パパイヤを使ったタイのサラダで、ソムは=酸っぱい、タム=突くを意味します
北部:チェンマイなど
「カントーク」という丸いお膳で出てくる郷土料理が有名です。
数種類の料理を並べた宮廷料理を、民族舞踊を鑑賞しながら楽しみます。
カントーク
チェンマイではこれでお客様をもてなします。
代表料理:ナム プリック オーン(ミートソース風辛味みそ)・ケープムー(揚げた豚の皮)
サイワオ(スパイシーなソーセージ)・カオソーイ(揚げ麺のせカレーラーメン)など
南部:プーケットなど
マレー半島は、古代からインドや中国と海を通じて交流がなされていました。
そのため、タイ料理をベースに、インド・中国・マレーの影響を多く受けています。
特にインドの影響で、味付けにはターメリックや胡椒が多く使われます。
イスラム教徒が多いため、豚肉はあまり食べられず、主に鶏肉を食べます。
代表料理:サテ(肉の串焼き)・ナシゴレン(炒飯)など
伊藤華づ枝作・ナシゴレン
マレー語で、ナシ=飯、ゴレン=揚げる(炒める)を意味します。
ナンプラーや唐辛子などで味付けするのが特徴のチャーハンです。
唐辛子が効いた料理
プリックと呼ばれ、小さくなるほど辛味は強くなります。
暑い国なので、唐辛子を食べて体温を高め、発汗作用を促します。
辛い料理は食欲を増進させます。
シーフード料理
タイは熱帯の豊かな海からの恵みと、水量豊富な川と至る所にある池からも魚介類の水揚げがあります。
そのため、タイのシーフードの料理はとてもお手ごろ価格で楽しむことが出来ます。
川エビ
美味しくて驚きでした。
1995年4月
ロブスターのロースト
タイのシーフード料理は、おおむね大味です。
1993年5月
南国フルーツが豊富
特に「果物の王様」と呼ばれるドリアンが有名です。
ドリアンの生産量世界一で、全体の約85%はタイで生産されています。
ドリアンを割ったところ
強烈なニオイで有名ですが、果肉は非常にクリーミーで甘く、カスタードクリームのようです。
市場のドリアン売り場
ドリアンが山積みされています。
1993年5月
水上マーケットでドリアンを買って、船上で食べました。
1995年4月
タイダンスを見ながら、ディナーを楽しむ
タイで一番、アジアでも一番といわれる格式を誇るオリエンタルホテル。
世界中からVIPが訪れるこのホテルでは、タイダンスを見ながら、ディナーが楽しめます。
タイの民族舞踊を見ながらタイ料理をコースでいただく、なんとも贅沢な時を過ごさせてくれます。
オリエンタルホテルで、タイの民族舞踊を見ながらタイ料理を食べました。
1995年4月
近年、人気のタイ料理
タイ料理は甘くて、酸っぱくて、辛いと美味しいイメージがありませんでしたが、近年人気が出ており、タイ料理専門店などが注目されるようになりました。
人気の理由は、以下などが挙げられます。
- 野菜がたくさん食べられるので、ヘルシー
- スパイスやハーブが多用されており、味付けが複雑で、印象に残る味付け
- ライムやレモンなどの柑橘類が爽やかで、香り高い
伊藤華づ枝作・ガパオライス
タイの定番料理「ガパオ」とは、肉類や野菜をナンプラー(魚醤)で調味し、シソ科のホーリーバジルを混ぜた料理です。
ガパオライスは、ご飯の上にガパオをのせたもので、半熟の目玉焼きものせられることが多いでしょう。
伊藤華づ枝作・トート・マンプラー(タイ風さつま揚げ)
トートは揚げる、マンは練る、プラーは魚を意味し、直訳は「魚の練りもの揚げ」になります。コブミカンの葉や香辛料などが入って、香りの良いさつま揚げです。

※ヤム=和える、ウンセン=春雨を意味します。
材料 | 4~6人分 |
中国春雨(乾) | 90g |
きくらげ(乾) | 10g(水で戻して60g) |
エビ | 10尾(150g) |
セロリ(細軸) | 10cm(40g) |
豚ひき肉 | 200g |
ナンプラー | 大さじ1・1/2 |
サラダ油 | 適宜 |
干しエビ | 大さじ1(10g) |
紫玉ねぎ | 1/4コ(80g) |
レタス | 70g |
A | |
ライム汁 | 大さじ2 |
ナンプラー | 大さじ4 |
純米酢 | 大さじ3 |
砂糖 | 小さじ1 |
赤唐辛子(種を取って粗みじん切り) | 2本 |
にんにく(すりおろし) | 少々 |
パクチー | 3~4本(4g) |
ピーナッツ(無塩・皮なし) | 30g |
作り方
- 春雨は熱湯の中に入れ、フタをして白くなるまで蒸らします。きくらげは水で戻して熱湯で茹でます。春雨は適当な大きさに、きくらげはせん切りにします。
- エビは背ワタを取り、塩と酒(分量外)でもみ洗いをし、熱湯で茹で、殻をむいて横半分のそぎ切りにします。セロリは皮をむき、せん切りにします。
- 豚ひき肉はナンプラーで下味をつけ、サラダ油で炒め、水で洗って粗みじん切りにした干しエビを加えて炒めます。
- 紫玉ねぎは短めの薄切りにして氷水に晒します。レタスはきれいに洗って小角切りにします。
- ボウルに(A)を混ぜ合わせ(パクチーは葉の部分は手で小さくちぎり、茎の部分はみじん切りにします)、1.~4.の具材を入れて和えます。お好みで粗みじん切りのピーナッツを散らします。
※写真にはパクチーを添えました

※グリーンカレーペーストを使うことで、手軽に本格的な味を楽しめます
材料 | 4人分 |
普通米 | 2・1/2カップ(500ml分) |
雑穀米 | 大さじ2 |
水 | 640ml~ |
たけのこ(茹で) | 120g |
なす | 1本(150g) |
赤パプリカ | 1/2コ(80g) |
黄パプリカ | 1/2コ(80g) |
ピーマン | 2コ(60g) |
生しいたけ | 4枚(100g) |
鶏むね肉(皮なし) | 1枚(200g) |
レモングラス(生) | 1/3本(12g) |
こぶみかんの葉(生) | 3枚 |
サラダ油 | 大さじ3 |
グリーンカレーペースト | 1袋(50g) |
ココナッツミルク | 1缶(400ml) |
水 | 200ml |
A | |
ナンプラー | 大さじ1 |
塩 | 小さじ1/2 |
砂糖 | 小さじ2 |
サワークリーム | 40g |
作り方
- 米と雑穀米を洗って分量の水で1時間程浸水し、普通に炊きます。
- たけのこは細切りにし、なすは縞状に皮をむき、1cm幅の半月切りにします。パプリカとピーマンは種を取って1cm幅のせん切りにします。しいたけは軸を取って1cm幅の薄切りにします。
- 鶏肉は一口大のそぎ切りにします。レモングラスは斜め薄切りにし、こぶみかんの葉はせん切りにします。
- フライパンにサラダ油を入れ、グリーンカレーペーストを入れて炒め、よい香りがしてきたらココナッツミルクと分量の水を入れます。
- 4.が沸騰してきたら2.と3.を入れ、鶏肉がやわらかくなるまで煮ます。
- 5.に(A)を加えます。仕上げにサワークリームで酸味を付けます。
- 器に1.を盛り、6.をかけます。
※写真にはご飯にワイルドライスを混ぜ、ミントを添えました