文化講座
第7回 恋が実るお菓子 ~ティラミスとガトーショコラ~
前シリーズでは「日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~」と題し、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピと共にご紹介しました。今シリーズでは、お菓子の歴史やその名前の由来、誕生秘話などを取り入れながら、家庭で作りやすいスイーツレシピを毎月2点ずつご紹介しています。
第7回目の今月は、「恋が実るお菓子」ティラミスとガトーショコラです。
1.ティラミス
イタリア発祥のチーズケーキ・ティラミスをご紹介します。
<ティラミスとは>
エスプレッソコーヒーを浸みこませたビスケットやスポンジ生地の上に、マスカルポーネチーズが入ったクリームを流して冷やし固め、ココアパウダーをふりかけたケーキです。
マスカルポーネチーズとは、イタリア原産のクリームチーズのことです。
牛乳から作られ、乳脂肪分が80%前後の熟成させないフレッシュチーズで、まったりと濃厚な味わいが特徴です。
伊藤華づ枝作
ティラミス
<名前の由来>
直訳すると「私を上に引き上げて」という意味です。
「私を元気にして!」・「私を天国に連れて行って」と意訳されます。
ティラミスの発祥地には、3つの説があります。
- ヴェネト州トレヴィーゾにあるレストラン「ベッケリーエ」のオーナーの祖母と母が1960年代に考案し、スポンジではなくサヴォイアルディというフィンガービスケットで作ったとされる説
- マスカルポーネチーズの生産地・ロンバルディア地方はイタリアの北西部に位置し、ミラノなどがある地方です。
平原で育てた牛からとれた牛乳で、初めてマスカルポーネを作ったことから、この地を発祥とする説 - トスカーナ地方
リキュールに浸した薄切りのスポンジとカスタードを交互に重ねたお菓子「ズッパ・イングレーゼ」に由来するとされる説
※抹茶味のスポンジケーキに抹茶パウダーをふりかけ、和風に仕上げました
材料(6~8人分) | 分量 |
マスカルポーネチーズ | 200g |
グラニュー糖 | 60g |
レモン汁 | 大さじ1・1/2 |
コアントロー | 大さじ1/2 |
生クリーム | 100ml |
A | |
水 | 60ml |
グラニュー糖 | 10g |
抹茶 | 大さじ1 |
抹茶スポンジ生地 | 1/2枚(120g分) |
*抹茶スポンジ生地1枚分の分量 | (作りやすい分量) |
卵 | 3コ |
グラニュー糖 | 100g |
薄力粉 | 80g |
抹茶 | 大さじ1 |
牛乳 | 大さじ1 |
バター(溶かし) | 大さじ1 |
抹茶 | 適宜 |
金箔 | 適宜 |
作り方
- ボウルにマスカルポーネチーズとグラニュー糖を入れ、泡立て器で混ぜ、レモン汁とコアントローを加えます。
- 別のボウルに生クリームを入れ、7~8分立てにします。
- 2.を1.へ入れて、混ぜ合わせます。
- 鍋に(A)を入れて火にかけてシロップを作り、粗熱を取ります。分量の抹茶に少しずつ加えて混ぜます。
- スポンジ生地を一口サイズにちぎって敷き詰め、4.をスプーンでかけます。
- 5.の上に3.を流し入れ、平らにして冷蔵庫で休ませます。
- 上に抹茶を振りかけます(写真はハート形の紙型を置いて抹茶を振り、紙を取って仕上げました)。金箔を飾ります。
*抹茶スポンジ生地の作り方(市販品でも良い)
- ボウルに卵とグラニュー糖を入れ、湯せんで6~7分間を目安にハンドミキサーでしっかりと泡立てます。
- 1.に薄力粉と抹茶をふるいながらを加えて混ぜ、生地に粉が混ざってから牛乳とバターを加えてさっくりと混ぜます。
- オーブンペーパーを敷いた天板に2.を流し入れ、190度のオーブンで11分間程焼きます。
<マスカルポーネチーズの栄養素>
カルシウムを多く含むため、骨の強化などに役立ちます。
2.ガトーショコラ
フランス語で「チョコレートのお菓子」という意味です。
日本ではフランスの伝統的なチョコレートケーキの総称として使われていますが、本来フランスでは特定の種類のケーキを指す言葉ではありません。
ガトーショコラ(チョコレートケーキ)の代表例は以下のケーキです。
★ガトー オペラ
フランスの食品会社「ダロワイヨ」が初めて作った、チョコレートとコーヒーシロップを使ったケーキ。
ダロワイヨの
ガトーオペラ
★ザッハトルテ
チョコレート風味のスポンジにアプリコットジャムを塗り、チョコレートをコーティングしたオーストリア生まれのケーキで、「チョコレートケーキの王様」と称されています。
1832年に、イタリアの政治家であるメッテルニヒに仕えた料理人のフランツ・ザッハーが考案し、後に次男のエドゥアルトがホテル・ザッハーを開業すると、ザッハトルテはそのレストランとカフェで提供されるようになり、ウィーンの代表的な菓子になりました。
オーストリア・ウィーンのホテル・ザッハーの前で
ウィーンで有名なもう1店舗の「デメル」で、ザッハトルテを食べる筆者
★フォンダンショコラ
フォンダンとは「溶ける」という意味です。
中心まで完全に焼かないため、割ると中からチョコレートが溶け出します。
伊藤華づ枝作
フォンダンショコラ
※フランス語で「チョコレートケーキ」という意味
材料(ハート型2個分(縦10cm×横13cm)) | 分量 |
製菓用スイートチョコレート | 100g |
生クリーム | 50ml |
卵 | 3コ |
無塩バター(常温) | 70g |
グラニュー糖 | 90g |
薄力粉 | 25g |
ココア(無糖) | 30g |
粉糖 | 適量 |
作り方
- ハートの型2コにバター(分量外)をぬり、薄力粉(分量外)をはたいておきます。
- チョコレートを細かく刻み、生クリームとともに耐熱容器に入れてラップをし、500wの電子レンジで1分間加熱して溶かし、粗熱を取ります。
- 卵は卵白と卵黄に分けます。ボウルに卵白を入れてしっかりと泡立てます。
- 別のボウルにバターとグラニュー糖を入れて混ぜ、少しずつ卵黄を加えて混ぜます。
- 4.に2.を加え、チョコレート色が均一になるまで混ぜます。ふるった粉を加え、ゴムベラで底からすくい上げるようにして、粉っぽさがなくなるまで混ぜます。
- 5.に3.の1/2量を加えて混ぜます。メレンゲの白い部分がなくなったら、残りのメレンゲを加えて混ぜます。
- 1.の型に半量ずつ流し入れ、170℃のオーブンで30分間焼きます。粗熱がとれたら型からはずし、冷まします。冷めたら粉糖を茶こしでふるいます。
※写真には泡立てた生クリームといちご、ミントを添えました
<チョコレートの栄養素>
リラックス効果を促すテオブロミンやカフェインを多く含むため、緊張を緩和し、疲れを和らげる効果があります。
強い抗酸化作用のあるポリフェノールを豊富に含むため、高血圧や動脈硬化、ガン予防に役立つとされています。