文化講座
第11回 お茶を使ったお菓子 ~抹茶のシフォンケーキと紅茶のパンナコッタ~
前シリーズでは「日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~」と題し、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピと共にご紹介しました。
今シリーズでは、お菓子の歴史やその名前の由来、誕生秘話などを取り入れながら、家庭で作りやすいスイーツレシピを毎月2点ずつご紹介しています。
第11回目の今月は、「お茶を使ったお菓子」抹茶のシフォンケーキと紅茶のパンナコッタです。
1.抹茶のシフォンケーキ
<名前の由来>
シフォンとは、英語で「絹の織物(布)」という意味です。そして絹のように柔らかいスポンジケーキを"シフォンケーキ"と呼びます。
シフォン型を使い、中心に穴が空いたように焼き上げるのが特徴です。
メレンゲ(しっかり泡立てた卵白)が膨張材となり、独特の食感が生まれます。
刻んだフルーツやナッツ類を生地に混ぜたり、抹茶や紅茶、コーヒー、ジュースを入れることで、味のバリエーションがつけられます。

シフォンケーキの型
※シフォンケーキ誕生秘話
シフォンケーキは、1927年アメリカのロサンゼルスでハリー・ベーカーが考案しました。
ベーカーは20年間シフォンケーキのレシピを一切公表せず、アパートの一室で1日40台以上のシフォンケーキを焼いていました。そのシフォンケーキはレストランや数多くの有名人が購入するなど、大人気となりました。
ハリーは1947年にゼネラルミルズ社に、この秘密のレシピを売却します。そしてこの時はじめて、生地がしっとりとする秘訣として、植物油(サラダ油)が使われていることが明らかになりました。
レシピがアメリカの雑誌などで紹介されたことで、シフォンケーキブームが起こりました。
シフォンケーキの原型は、「エンゼルフードケーキ」と呼ばれる、アメリカ発祥の卵白のみで作るふわふわのケーキだったと言われています。
エンゼルフードケーキのふわふわとした食感は好評でしたが、油脂を使用しないので、コクが足りないという欠点があったため、植物油を入れたシフォンケーキが人気となったのでしょう。

伊藤華づ枝作
紅茶のシフォンケーキ
※手作りいちごアイスクリームやチョコレート菓子などを添え、デザートプレート仕立てにしました。
<日本のシフォンケーキ>
日本にシフォンケーキを広めたのは、株式会社フレイバーユージの岩田有司代表取締役で、愛知県一宮市の出身です。
岩田氏はカリフォルニアへ留学していた折に、シフォンケーキをはじめとする、アメリカのホームメイドケーキの美味しさに感動し、研究を重ねて1976年にオリジナルレシピを開発しました。
同氏が日本で出店した「フレイバー」により、日本にシフォンケーキが普及しました。
やわらかいものを好む日本人の間で人気になり、今では抹茶やきなこ、甘納豆などの和風素材を混ぜたシフォンケーキも作られています。

伊藤華づ枝作
きなこと甘納豆のシフォンケーキ

※緑色が清々しく、なめらかな食感のシフォンケーキ
材料(直径18cmのシフォン型1台・6~8切れ分) | 分量 |
卵白 | 5コ(Mサイズ) |
卵黄 | 4コ(Mサイズ) |
グラニュー糖 | 110g |
塩 | ひとつまみ |
サラダ油 | 60ml |
A | |
抹茶 | 大さじ1・1/2 |
湯 | ~80ml~ |
B | |
薄力粉 | 100g |
ベーキングパウダー | 小さじ2/3 |
C | |
生クリーム | 100ml |
グラニュー糖 | 小さじ1 |
D | |
抹茶 | 小さじ1/2 |
湯 | 小さじ1~2 |
粉砂糖 | 適宜 |
作り方
- 2つのボウルに卵黄と卵白をそれぞれ入れます。卵白を泡立てます(メレンゲを作ります)。細かい泡が立ち、白っぽくなったらグラニュー糖の1/2量を加え、勢いよく泡立てます。角が立つくらいの堅いメレンゲにします。
- 卵黄を泡だて器で溶きほぐし、残りのグラニュー糖と塩を加えて混ぜ、更にサラダ油も少しずつ入れ、全体を混ぜ合わせます。
- 2.に(A)を少しずつ加えよく混ぜます。
- 3.に(B)をふるいながら加え、泡だて器を底に立てるようにして全体をぐるぐる混ぜます。
- 4.に1.の1/3量を加え混ぜます。メレンゲの白い部分がなくなったら4.の残りを加え、混ぜます。
- 型に5.を流し入れます。型を台の上にトントンとたたいて気泡を抜きます。170度のオーブンで35~40分間焼きます。
- ボウルに(C)を入れ8分立て(すくうとぽったり落ちるくらい)に泡立て、(D)を加えます。切り分けた6.に適宜添え、粉砂糖をふります。
<抹茶の栄養素>
抹茶は葉を蒸して乾燥させ、葉脈を取り除いて粉状にしたものです。
ビタミンEが豊富で、茶葉を丸ごと摂取するため、栄養分を無駄なく取り込むことが出来ます。
2.紅茶のパンナコッタ
<名前の由来>
パンナコッタとは、イタリア語で「パンナ(生クリーム)」を「コッタ(煮た)」という意味の名前で、生クリームと牛乳、砂糖を煮立ててゼラチンで冷やし固めるお菓子です。
酪農の盛んな北イタリア発祥の洋菓子の一種です。
20世紀のはじめ、ハンガリー出身のバレリーナが恋人のために作ったことから生まれたという、素敵な逸話があります。

伊藤華づ枝作
パンナコッタ~フルーツ添え~
エンゼル型で固めたもの

伊藤華づ枝作
パンナコッタ~フルーツ添え~
バラのシリコン型で固めたもの
型を変えるだけで、イメージがガラリと変わります。
<日本のパンナコッタ>
日本ではティラミスブームの後に、パンナコッタが流行るようになりました。
1992年にサントリーがパンナコッタの粉末を発売、1993年に森永乳業がカップ入りのパンナコッタを販売し、家庭でも手作りされるようになりました。
現在は紅茶や抹茶、フルーツ、野菜などを加えたパンナコッタも作られています。

伊藤華づ枝作
パンナコッタ
紅茶入り

伊藤華づ枝作
パンナコッタ
みかん入り

伊藤華づ枝作
パンナコッタ
枝豆入り
<パンナコッタに似た洋菓子>
パンナコッタのように乳製品に砂糖を加え、ゼラチンで固めた洋菓子に「ババロア」や「ブラン・マンジェ」があります。
★ババロア
牛乳と卵、砂糖に泡立てた生クリームと洋酒などのエッセンスを加え、ゼラチンで固めたお菓子。
現在、家庭では生卵を使用するお菓子は衛生面での不安が残ることから、卵を抜いた作り方で、「ムース」と呼ぶこともあります。

伊藤華づ枝作
いちごミルクのババロア
★ブラン・マンジェ
牛乳と生クリームにゼラチンを加え、アーモンドで風味をつけた、「ブラン(白い)」「マンジェ(食べ物)」という意味の冷たいお菓子。

※コクがあり、紅茶の風味豊かなパンナコッタ
材料(90mlのシリコン型で5コ分) | 分量 |
A | |
生クリーム | 200ml |
牛乳 | 200ml |
紅茶葉(アールグレイ) | 大さじ2強 |
砂糖 | 30g |
粉ゼラチン | 2袋(10g) |
水 | 50ml |
作り方
- (A)を鍋に入れて火にかけ、あたたまったら紅茶葉を入れてフタをして2~3分間程蒸らします。
- 1.をペーパータオルで漉して別鍋に入れ、砂糖と水でふやかしたゼラチンを加えて煮溶かします。
- 粗熱を取って型に流し入れ、氷水に浮かべて冷やし固めます。
- 器に3.を盛り、お好みで青味やフルーツなどを添えます。
※写真はマーガレットのシリコン型を使用しました
※写真にはいちごソースと青味、シュガーアートを添えました
<紅茶の栄養素>
茶葉を発酵させて作る紅茶は、緑茶よりも多くのタンニンやカフェインを含みます。
タンニンに含まれる紅茶フラボノイドには強い抗酸化作用があり、免疫力をアップさせます。
カフェインには大脳を刺激する作用があるため、集中力を高めます。