文化講座
第5回 家庭で作りたいお菓子・その(2)~ビュッシュ・ド・ノエルと杏仁豆腐~
前シリーズでは「日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~」と題し、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピと共にご紹介しました。今シリーズでは、お菓子の歴史やその名前の由来、誕生秘話などを取り入れながら、家庭で作りやすいスイーツレシピを毎月2点ずつご紹介しています。
第5回目の今月は、クリスマスの定番ケーキ「ビュッシュ・ド・ノエル」と、中国料理の定番デザート「杏仁豆腐」をご紹介します。
1.ビュッシュ・ド・ノエル
薪の形をしたクリスマスの定番ロールケーキである、ビュッシュ・ド・ノエルをご紹介します。
<ビュッシュ・ド・ノエルとは>
薪の形をした、フランスの代表的なクリスマスケーキです。
ビュッシュは「木・丸太」、ノエルは「クリスマス」という意味があり、直訳すると「クリスマスの木」です。
ロールケーキの表面をココアクリームで覆い、そこにフォークでひっかくようにして波型の筋をつけて、樹皮をかたどります。
なぜ薪の形をしているのかは、諸説あります。
(1)イブの夜に薪を暖炉で燃やすと、1年間無病息災で暮らせるという説
(2)キリストの誕生を祝い、夜通し薪を燃やしたという説
(3)貧しい青年が恋人へ贈るクリスマスプレゼントを買うお金がないため、薪をプレゼントしたという説
日本でクリスマスケーキと言えば、丸型のクリスマスケーキやチョコレートケーキにサンタクロースやクリスマスツリーの飾りをのせたものが主流でしたが、近年ではビュッシュ・ド・ノエルやシュトーレン(ドライフルーツの入ったドイツの菓子パン)など、世界各国のクリスマス向きお菓子を目にするようになりました。

伊藤華づ枝作
クリスマスケーキ

伊藤華づ枝作
クリスマスのデザートビュッフェの様子(いちごに泡立てた生クリームを挟んで、サンタクロースのように仕立てました)

お菓子の家
伊藤華づ枝の娘(アメリカ在住)
のクリスマスパーティーの様子

※お好みのフルーツを巻き込むと一層美味しいでしょう
材料(1本分) | 分量 |
卵 | 3コ |
グラニュー糖 | 100g |
A | |
薄力粉 | 80g |
ベーキングパウダー | 小さじ1/2 |
B | |
牛乳 | 大さじ1 |
溶かしバター | 大さじ1 |
C | |
生クリーム | 300ml |
グラニュー糖 | 大さじ2 |
洋梨(完熟・小) | 1コ(150g) |
ココア | 大さじ1 |
水 | 大さじ1 |
チョコペン(茶色) | 1本 |
D | |
サンタクロースのお菓子 | 1コ |
クリスマスツリーのお菓子 | 1コ |
雪だるまのお菓子 | 1コ |
チョコレートの棒 | 2本 |
メッセージ入り板チョコレート | 1枚 |
ひいらぎ | 1枚 |
作り方
- 卵とグラニュー糖をボウルに入れ、湯せんで4~5分間位しっかりと泡立てます。
- 充分に泡立ったら、ふるった(A)を加え、粉が見えなくなるまで手早く混ぜます。
- 2.に(B)を手早く合わせ、天板に紙を敷いて生地を流し入れます。
- 3.の天板を二重にし、190℃のオーブンで約11分間焼きます。
- (C)を固く泡立て、半量を冷めた4.に塗り、細かく刻んだ洋梨をのせ、ペーパータオルで巻きます。
- 5.を冷蔵庫で休ませ、1/4 のところで切り、短い方を斜めに半分に切ります。
- 分量のココアと水をかき混ぜ、残りの生クリームに加えて混ぜ合わせます。
- 6.を器にのせて7.の生クリームを塗り、残りの生クリームを絞り袋に詰めて絞ります。
- 8.の上にチョコペンで切り株のように模様を描き、(D)を飾ります。
※お好みで5.の生クリームを塗る前に、スポンジにシロップをはたいても良いでしょう
<ココアの栄養素>
ココアに含まれるポリフェノールは、ガンや生活習慣病予防に効果的です。
血行促進効果もあるので、冷え症の予防にも有効です。
ビタミンやミネラルも豊富で、骨を丈夫にするカルシウムやその他の栄養素もバランスよく含みます。
2.杏仁豆腐(あんにんどうふ)
つるんとしたのど越しが楽しい、中国料理のデザートです。
口にすると、杏仁の甘い香りが口いっぱいに広がります。
<杏仁豆腐とは>
杏仁を粉にして牛乳や生クリームに溶き、寒天やゼラチンで固めて、ひし形に切り、シロップをかけて食べるデザートです。
現在では、杏仁霜の代用としてアーモンドエッセンスなどを用いて作ることもあります。

伊藤華づ枝作
大鉢に入れて作った杏仁豆腐
<杏仁霜(きょうにんそう)とは>
アンズの種の一種「仁(じん・さね)」を杏仁と呼びます。
これを粉末に加工し、砂糖、ブドウ糖、コーンスターチ、全粉乳などを添加したものが「杏仁霜」です。
もともと、杏仁は薬膳食材の一種で喘息・空咳の治療薬です。
杏仁には、薬品用の苦みの強い苦杏仁と食品用の苦みの弱い甜杏仁があり、杏仁霜に使用されるのは苦みの弱い甜杏仁です。

市場(台北)で杏仁の粉をひいて
もらっているところ

※寒天とゼラチンを入れ、もっちりとした食感を出しました
材料(6~8人分) | 分量 |
水 | 大さじ2 |
粉ゼラチン | 1袋(5g) |
A | |
牛乳 | 400ml |
水 | 200ml |
粉寒天 | 1袋(4g) |
グラニュー糖 | 40g |
B | |
杏仁霜(杏仁パウダー) | 大さじ4(24g) |
生クリーム | 200ml |
C | |
水 | 200ml |
グラニュー糖 | 50g |
レモン汁(生) | 大さじ1~2 |
季節のフルーツ | 適宜 |
ミント | 4枝 |
作り方
- 分量の水に粉ゼラチンをふり入れ、ふやかします。
- 鍋に(A)を入れて煮立て、1.を入れて再沸騰させ、粗熱をとります。
- ボウルに(B)を混ぜ合わせ、2.を加えて手早く混ぜ、器に流し入れます。
- 3.を氷水で冷やします。
- (C)を煮立ててシロップを作り、冷めてからレモン汁を加えます。
- 4.をひし形に切って器に盛り、5.のシロップをかけて食べやすい大きさに切ったフルーツとミントを添えます。
<牛乳の栄養素>
一般的にカルシウムは吸収されにくい栄養素ですが、牛乳のカルシウムは乳糖などを含むため、効率よく体にカルシウムを吸収することが出来ます。
カルシウムは、骨の成長や骨粗鬆症の予防のみではなく、イライラや不眠症の改善にも有効です。
良質のたんぱく質、ビタミンA・B・E・Dもバランスよく含んでいるため、体全体の調子を整えて体力向上に役立ちます。