愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

発酵食品の魅力にせまる

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第2回:各論(1)~漬け物~

 前シリーズでは「みんなの幸せレシピ」と題し、(1)初めての1人暮らしごはん、(2)パパッと2人ごはん、(3)一緒に作れる!KIDSごはんの3つのジャンルに分けて、みんなが幸せになれるレシピをご紹介しました。今シリーズでは、代表的な発酵食品を毎月順番に取り上げ、その特徴や健康効果、おすすめの料理をご紹介します。

 第2回目の今月は、「漬け物」

毎日の生活に根付いた発酵食品は数多くありますが、近年その健康効果が見直されているものが「漬け物」です。漬け物といえば、その塩分だけが注目され、敬遠された時期がありました。しかし、最近の漬け物は低塩化していますし、適度に食べる場合には、様々な健康効果が期待できることがわかっています。これから秋冬にかけて、漬け物にするとおいしい野菜が続々と収穫されます。これまで漬け物にあまり縁がなかった人も、この機会にぜひ一度食卓に登場させてみましょう。その深い味わいと心地よい歯触りで、漬け物の魅力が実感できます。そして、安心・安全でおいしい手作りの漬け物にも挑戦してみてください。自分で漬けた野菜は格別です。

★漬け物とは

名古屋名物・守口漬け

漬け物とは塩や酢、味噌、麹などに漬け込んだ貯蔵食品の総称をいいます。
その中でも、主に野菜を塩や糠床などに漬けた食品をさします。
別名、香の物、お新香などとも呼ばれています。


<漬け物の種類>

日本には古くから様々な漬け物があります。各地の気候風土や産物、習慣、家庭などで漬け方が異なり、その種類は800以上ともいわれています。漬ける材料や調味料の違い、漬ける方法の違いなどで分けられますが、ここでは発酵を伴うものと、そうでないものに分類します。

■発酵を伴う漬け物

材料に付着している乳酸菌が材料に含まれる糖類を分解して発酵し、保存性が高まり、風味も向上します。
<例>
ぬか漬け、守口漬け、べったら漬け、奈良漬け、たくあん、高菜漬け、野沢菜漬け、しば漬け、すぐき漬けなど

■発酵を伴わない漬け物

調味液が素材に浸透するだけで、発酵していないため、素材の風味は生かされますが、保存性は低くなります。
<例>
千枚漬け、一夜漬け、浅漬け、即席漬けなど

<漬け物の栄養価>

漬け物は、多くの健康効果が期待できます。発酵を伴う漬け物の栄養価は、特に優れています。

■漬け物の健康効果

  • ぬか漬けは、ぬかに含まれているビタミンB群やミネラル類が漬け物に移行するため、元の野菜よりもビタミンやミネラルが多くなります。
  • 発酵を伴う漬け物を食べると、乳酸菌や酵母菌などと共に菌のエサとなる食物繊維も一緒にとることができるため、善玉菌が増えて腸内環境が整い、免疫力アップや生活習慣病の予防が期待できます。また、乳酸菌は腸内でビタミンを生成することができるため、美肌作りにも役立ちます。
  • 脱水されてカサが減ったり、細胞が破壊されて柔らかくなるため、生では食べにくい野菜も食べやすくなります。
  • 栄養素の加熱による損失がなく、野菜に含まれるビタミン、ミネラル類や、食物繊維が効率よく摂取できます。
  • 漬け物をよく噛むことで、歯やあごの健康や脳の活性化、食欲増進、消化促進などの効果が期待できます。

<漬け物いろいろ>

発酵を伴う代表的な漬け物をご紹介します。

■守口漬け

日本一長い大根である守口大根を材料とし、酒粕と味淋粕にじっくり漬け込んで熟成させた名古屋名物の漬け物です。芳醇な香りと美しいべっこう色で、「漬け物の宝石」とも呼ばれています。


■べったら漬け

大根の麹漬けの一種で甘みがあり、東京の名産品です。毎年10月には日本橋でべったら市が催され、多くの人で賑わいます。


■たくあん

全国で食べられており、漬け物の代表とも言える大根のぬか漬けです。


■しば漬け

ナスとシソを塩で漬けた漬け物で、京都の名産品です。


■野沢菜漬け

かぶの変種である野沢菜を塩で漬けた酸味のある漬け物で、長野県の名産品です。


■高菜漬け

からし菜の一種の高菜を塩で漬けた程よい酸味と渋みのある漬け物で、九州の名産品です。


<全国で唯一の漬け物の神社・萱津(かやづ)神社>

愛知県あま市にある萱津神社は、漬け物の祖神を祀る神社で、境内には漬け物を納める「香物殿」があります。かつて、神前に付近でとれた野菜や塩をお供えしていましたが、供物が腐敗するのを惜しんだ人々が、カメに野菜と塩を一緒に入れておいたところ、おいしい漬け物になったことが、漬け物の発祥といわれています。毎年8月21日に催される「香の物祭」は、あま市無形文化財に指定されている祭礼で、全国から漬物関係者が集まります。これに基づき、漬物業界では毎月21日を「漬け物の日」と定めています。

<漬け物の活用術>

ご飯のおともや口取りだけでなく、漬け物をもっと料理に使いたい、少しだけ余ってしまった、という時におすすめの漬け物のアレンジ方法をご紹介しましょう。漬け物は風味豊かで、味もしっかりついていますので、少し料理に加えると旨味とコクが増します。漬け物を加えた場合は、塩味を加減しましょう。

★チャーハンや炊き込みご飯の味付けに

「高菜のかやくご飯」のレシピは、2011年8月号「みんなの幸せレシピ」第1回:初めての一人暮らしご飯でご紹介しています。
参考になさってください。


★冷や奴や納豆の薬味として

★スープなどに加えると風味アップ


★タルタルソースなどに

★白身魚などのカルパッチョやサラダのドレッシングに


<簡単ぬか漬けの作り方>

旬の野菜を使って、ぬか漬けを作りましょう。
ぬか漬けは、2003年9月号「手作り食品のすすめ」第2回:ぬか漬けでもご紹介しています。参考になさってください。


■材料

ぬか1袋、水(袋の表示通り)、野菜適宜

*今回は写真右のぬかを使用しました。これは、ぬかに塩や唐辛子、昆布などがあらかじめ配合されており、捨て漬けも必要なく、すぐに漬けられます。最近は、このように手軽に漬けられるぬかが多く市販されていますので、生活スタイルに合わせて活用しましょう。

■作り方

(1)ボウルにぬかを入れ、分量の水(湯冷まし)を加えて混ぜます。

(2)野菜は洗ってニンジンは皮をむき、漬かりやすいように適当な大きさに切ります。


(3)密閉容器に(1)を移し、(2)を漬け込みます。野菜の大きさや種類にもよりますが、一晩から1日で食べ頃です。冷蔵庫で保存する場合は、少し長めに漬けましょう。1日に1~2回よくかき混ぜると、ぬかがなじんでおいしくなります。


<もっと簡単なぬか漬けの作り方>

袋を開けて、野菜を入れるだけのお手軽ぬか床もあります。
これなら手間も場所もとらずに、家庭でぬか漬けが楽しめますね。

発酵食品の魅力にせまる
このページの一番上へ