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ステップアップ 続・誰でもわかるイタリア語

石黒 秀嗣

第4回【表現法(話法)】について

このシリーズでは、イタリア語の基礎を学習した方を対象に、イタリア語の理解をさらにステップアップするためのシリーズです。初めてイタリア語を学習されたい方は、先ず、シリーズ「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」(2011年9月~2015年1月)から始め、続けてシリーズ「続・誰でもわかるイタリア語」と「旅に役立つ会話フレーズ集」(2015年2月~2016年6月)を参考にして学習されることをお勧めします。


イラスト 樋口佳代

【表現法(話法)】について

1.直説法(modo indicativo)について

 今まで学習してきた動詞(現在形・近過去形・半過去形)の使い方は、「直説法」といって、「~です」とか「~でした」とか「~だった」と断定的に事実を語る表現法(modo di direesprimere)でした。客観的に事実を述べるには直説法で十分です。

Ha piovuto tutta la notte.
一晩中、雨が降りました。(直説法近過去)
È meglio portare l'ombrello.
傘を持って行く方がよい。(直説法現在)

2.条件法(modo condizionale)について

 客観的に事実を述べるには直説法で十分ですが、話し手の気持ち、考え、意見、推量などを表すときには、「~かしら」とか「できれば~したいのですが」などのように、気持ちなどをていねいに、または控え目に表現した方がよい場合があります。「もし~ならば」とか「できれば~したい」などの条件を前提にした表現法を「条件法」といいます。また意志を表す(volere 欲する、desiderare 望む)動詞や、判断や意見を示す(credere 信ずる、dire 言う)動詞である場合に、直説法で表現すると、余りにも露骨な要求になったりすることになります。そんな時に「~したいのですが」とか「~すべきなのですが」という条件法が使われると婉曲で丁寧な表現となり、特に日常会話などではよく使うのでしっかり覚えましょう。

Sarebbe meglio portare l'ombrello.
傘を持っていく方がよいでしょう!(条件法現在形)
Sarà meglio portare l'ombrello.
傘を持っていく方がよいでしょう!(直説法未来形)

 未来形にも推量を表す働きがあるので、条件法の場合とよく似ていますが、「条件法」を使うときには必ず、「雨が降るかもしれないので」という条件が前提となっています。尚、直説法未来形の用法と活用については、第22回(2013年7月号)、条件法の用法と活用については、第30-31回(2014年3月号・4月号)に詳しく書きましたので参考にして下さい。

また活用についても《-are》動詞だけは、《-a(re)》を《-e》に直してから変化する点も未来形と同じですので注意して下さい。
また語幹の取り方に特徴のある動詞の変化も未来形と同じです。

fare(する) farò(未来形) farei(条件法)
potere(出来る) potrò(未来形) potrei(条件法)
volere(望む) vorrò(未来形) vorrei(条件法)
mangiare(食べる) mangerò(未来形) mangerei(条件法)

未来形と条件法は、活用においても共通するところがあります。
未来形の活用が規則的な語尾変化(-, -rai, -, -remo, -rete, -ranno)でした。〈r〉から始まる語尾変化が特徴でした。条件法現在形も規則的な語尾変化(-rei, -resti, -rebbe, -remmo, -reste, -rebbero)をし、やはり〈r〉から始まる語尾変化をします。イタリア語では、この〈r〉はハッキリとした特徴のある 音ですので大変分かりやすいと思います。

 相手に何かをていねいにお願いするとき:「~してくれない?」(Potresti?)又は「~していただけませんでしょうか?」(Potrebbe?)
直説法を使ってPuoiPuò?と言っても十分に丁寧な表現となります。条件法を使った疑問文にすると「できたら~していただけませんか?」と、非常に丁寧に相手にお願いする形になります。

Potresti prestarmi la tua macchina?
私に車を貸してくれない?
Potrebbe chiamarmi un taxi?
タクシーを呼んで頂けませんでしょうか?

また相手の気持ちなどをたずねるとき:「~したいの?」(vorresti?)又は「~したいですか?」(Vorrebbe?)
同様に直説法を使ってVuoi?又は丁寧な三人称でVuole?と言っても同じような意味になりますが、条件法を使った方がよりていねいでやわらかな表現となります。また「よかったら~しませんか?」と相手を誘う表現になったり、「できたら~してもらえませんか?」と相手に依頼する表現にもなります。

Vorresti prendere un caffè?
よかったらコーヒーを飲みませんか?
Vorrebbe scrivermi il Suo numero di telefono?
よろしければあなたの電話番号を書いてもらえませんか?
Vorresti darmi una mano?
できたら私を手伝ってくれない?
Ti piacerebbe andare al cinema stasera?
今夜、(よかったら)映画を見に行きませんか?

3.命令法(modo imperativo)について

 会話の中で、「~しなさい、~して下さい」等と話し相手に頼んだり勧めたりすることがよくあります。「命令法(形)」と言い、相手は常に二人称(tu又はvoi)となります。自分自身に語りかける場合も、もうひとりの自分に対して話しかけるので二人称(tu)となります。

a) 1人称単数つまり「私」に対する命令法はありません。

b) 3人称単数・複数の命令法は、「あなた=Lei」と「あなた方=Loro」に対して頼むときに使う。特にLoroは丁重で「~して下さいませ」となりますので、普通は2人称複数voiの命令法を使います。

c) 1人称複数(noi)の命令法は、自分を含めて一緒に何かをする場合に使います。
例:Andiamo!(行きましょう!)・Mangiamo!(食べましょう!)

命令法の活用

動詞の原形 parlare prendere partire essere avere
io(私は) ---------- ---------- ---------- ---------- ----------
tu(君は) parla prendi parti sii abbi
lui(彼は)・lei(彼女は) parli prenda parta sia abbia
Lei(あなたは)          
noi(私たちは) parliamo prendiamo partiamo siamo abbiamo
voi(君たちは)
(あなたたちは)
parlate prendete partite siate abbiate
loro(彼らは)
loro(彼女らは)
parlino prendano partano siano abbiano

a) -are動詞は、2人称単数と3人称単数の活用が直説法現在の活用と逆になるので注意する必要があります。

b) -ere動詞、-ire動詞の2人称単数、そしてほとんどすべての動詞について、命令法1人称・2人称複数は、直説法現在の活用形と同じです。

c) 文章では《!》を付ける(付けない場合もある)とか、会話では口調を強めたりして区別します。

4.接続法(modo congiuntivo)について

 接続法は、主に従属節の中で用いられます。主節の動詞が、意見、想像、願望、期待、不安、恐れなど主観的に表現するのが接続法です。

pensare che(思う、考える) temere che(心配する、恐れる)
credere che(信じる、考える) avere paura che(心配である)
immaginare che(想像する、思う) non essere sicuro che(se)(確実でない)
sembra che(~のようだ) sperare che(願う、望む)

また目的、条件、譲歩、様態などを表す特定の接続詞などがくる場合にも接続法が用いられます。

affinché(~するように、~するために) a condizione che(~という条件で)
a meno che non(~しない限り) a patto che(~するなら)
sebbene、benché
nonostante
(che)(~にもかかわらず)
non sapere(分からない)
come se(まるで~のように) senza che(することなしに)
chiunque(だれであろうと) qualunque(どんな~でも)

例文

  1. Non so se mia ragazza sia contenta di questo regalo.
    (彼女がこのプレゼントを喜ぶか分からない)
  2. Io desidero che tu venga al più presto possibile.
    (君が出来るだけ早く来ることを望みます)
  3. Usciremo domani sera a meno che piova.
    (雨が降らなければ、明日の夜出掛けましょう)
  4. Ti comprerò qualunque cosa voglia.
    (欲しいものは何でも買ってあげるよ!)
  5. Quei ragazzi fumano e bevono senza che i genitori lo sappiano.
    (あの子たちは両親が知らないところでタバコを吸ったりお酒を飲んだりしている)

接続法現在の活用

動詞の原形 parlare prendere partire essere avere
io(私は) parli prenda parta sia abbia
tu(君は) parli prendaa parta sia abbia
lui(彼は)・lei(彼女は) parli prendea parta sia abbia
Lei(あなたは)          
noi(私たちは) parliamo prendiamo partiamo siamo abbiamo
voi(君たちは)
(あなたたちは)
parliate prendiate partiate siate abbiate
loro(彼らは)
loro(彼女らは)
parlino prendano partano siano abbiano

a) 続法現在の活用は、命令法の活用と大変よく似ています。接続法では一人称から三人称の単数形は同じ活用になります。

b) 規則変化動詞の場合:
-ere, -ire動詞の直説法現在の一人称単数の語尾-oを-aにします。prendoprendapartopartaとなります。但し、-are動詞の場合は、二人称単数と同じとなります。
三人称複数は、さらに-noを加えます。例えばparli - parlino(parlare), paghi - pghino(pagare), canti - cantino(cantare), mangi - mangino(mangiare)のように変化します。

c) 人称複数(noi)は、直説法現在と同じ-iamoとなります。また二人称複数(voi)は、一人称複数の-iamoの-moを-teにします。つまり-iateとなります。

d) essereavereなどの不規則変化動詞についても、若干の違いがあるものの基本的には同じと考えてよいでしょう。よく使う不規則動詞を整理しましたのでまとめて覚えましょう。

andare vada(→io vado) - andiamo - andiate - vadano
venire venga(→io vengo) - veniamo - veniate - vengano
dovere deva(→io devo) - dobbiamo - dobbiate - devano
uscire esca(→io esco) - usciamo - usciate - escano
potere possa(→io posso) - possiamo - possiate - possano
stare stia(→io sto) - stiamo - stiate - stiano
sapere sappia(→io so) - sappiamo - sappiate - sappiano
dare dia(→io do) - diamo - diate - diano

イラスト:ティツィアーノTiziano(本名Tiziano Vecellio 1488-1576)の作品「フローラ(Flora)」:ローマ神話の花の女神フローラ。豊穣を司る女神にふさわしく、古来より奔放な祝祭が催され、そのイメージから高級娼婦をモデルとした数々の個性的な作品が残されている。アルプス山麓出身ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノの作風は、88年の長き生涯に渡り変化し続け、スペイン国王、教皇、名門貴族から終生寵愛を受けた華々しいものであった。描かれたフローラは、画家の気高く優雅な理想美を表しており、彼の描いた蜂蜜色の金髪は、当時からベネツィア女性の憧れであった。(樋口佳代)

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