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ステップアップ 続・誰でもわかるイタリア語

石黒 秀嗣

第11回【仮定文】その2 仮定文過去

このシリーズでは、イタリア語の基礎を学習した方を対象に、イタリア語の理解をさらにステップアップするためのシリーズです。初めてイタリア語を学習されたい方は、先ず、シリーズ「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」(2011年9月~2015年1月)から始め、続けてシリーズ「続・誰でもわかるイタリア語」と「旅に役立つ会話フレーズ集」(2015年2月~2016年6月)を参考にして学習されることをお勧めします。


イラスト 樋口佳代

【仮定文】その2 仮定文過去

C. 仮定分過去:過去の事実に反する事実を表す場合

I. その結果が過去で終わっている場合

「もし~だったら、...したのに(だったろうに)」:

作り方:Se+接続法大過去(条件節)、条件法過去(帰結節)

[例文]

  1. Se fosse andato più piano, non avrebbe avuto quell'incidente.
    (もしもっとゆっくり行っていたら、あの事故に遭うことはなかったのに)
  2. Se avessi avuto i soldi, avrei comprato subito quella borsa italiana.
    (もしお金を持っていれば、あのイタリアのバッグを買ったのに)
  3. Se aveste preso il rapido, sareste arrivati molto prima.
    (もし君たちが特急に乗っていたら、もっと早く着いていたのに)
  4. Se avessi avuto più pazienza, ci saresti riuscito.
    (もし君がもっと忍耐力があれば、成し遂げることが出来たのに)
  5. Se avessi conosciuto Maria, l'avrei sposata.
    (もし君がマリアを知っていたら、結婚していたのに)
  6. Se io non avessi avuto problemi di soldi, avrei fatto un viaggio in Italia anche l'anno scorso.
    (もしお金の問題がなかったら、去年もイタリアへ旅行したのに)
  7. Se ieri sera non avessero bevuto troppo, non si sarebbero sentiti male.
    (もし昨夜飲み過ぎなかったら、具合が悪くなかったのに)
  8. Scusami del ritardo! Se non avessi perduto l'autobus, sarei arrivato in tempo.
    (遅れて申し訳ありません!バスに乗り遅れなければ、間に合ったのに)
  9. Quel vino è eccellente! Io ne avrei bevuto di più, se loro me ne avessero offerto.
    (あのワインは本当に美味しいね!もし彼らが私に奢ってくれたら、もっと飲んだのに)
  10. Se foste venuti alla festa, avreste potuto sentire Maria cantare.
    (君たちがパーティーに来ていたら、マリアが歌うのを聞けたのに)

II. その結果が現在まで続いている場合

「もし~だったら、...だろうに(するのに)」:

作り方:Se+接続法大過去(条件節)、条件法現在(帰結節)

[例文]

  1. Se avessi vinto al totocalcio, potrei offrire una bella cena.
    (もしトトカルチョに勝っていれば、美味しいディナーをおごってあげられるのに)
  2. Se aveste studiato di più, parlereste meglio italiano.
    (もし君たちがもっと勉強していたら、もっとうまくイタリア語を話せるだろうに)
  3. Se non avessi studiato l'italiano, non saprei ancora come godere la vita.
    (もしイタリア語を勉強していなかったら、人生を楽しむことを知らないままだったかも)
  4. Se non avessi perduto quel treno di questa mattina, arriveresti a casa mia a quest'ora.
    (もし今朝あの列車に乗り損ねなければ、君は今頃私の家に着いているだろうにね)
  5. Se avessi preso questa medicina, saresti guarito presto e adesso potresti viaggiare con noi.
    (もしこの薬をのんでいたら、君は早く治ったでしょう。そして今頃わたしたちと一緒に旅行出来るのに)

D. その他の仮定文の用法について

(1)文意によって接続法半過去と条件法現在、または接続法半過去と条件法過去が混じり合っている場合。また主語が比較するものとの関係が不可能である場合。例えば、iote、またはiouccelloとの関係は実現不可能であるので、条件節では常に接続法半過去(fossi)が用いられます。

Se io fossi te, non farei così.
(私が君なら、そうはしないのだが)
Se io fossi te, non avrei fatto così.
(私が君なら、そうはしなかったのに)
Se io fossi uccello, volerei da te.
(私が小鳥なら、君のところに飛んで行くのに)
Se io fossi uccello, avrei volato da te.
(私が小鳥なら、君のところに飛んでいったのに)

(2)come se「たとえ...であろうとも」「まるで...かのように」、quasi se「あたかも...のように」は、仮定文のように接続法を用い、条件節(譲歩節)を導く。

Oggi fa mite come se fossimo in primavera.
(今日はまるで春のように暖かい!)
È diventato livido quasi che avesse visto un fantasma.
(彼はまるで幽霊を見たかのように真っ青になった)
La casa era silenziosa come se non ci fosse nessuno.
(その家はまるでだれもいなかったように静まりかえっていた)
Lui si comporta come se fosse il padrone.
(彼はまるで主人のように振る舞う)
Si mostravano indiffereenti come se non mi avessero sentito.
(彼らはあたかも私の言うことが聞こえなかったかのように知らぬ顔をしていた)

(3)ジェルンディオには、譲歩や条件を表す用法があります。例文のようにジェルンディオに隠されている条件節を補って意味をとります。

Facendo (= Se facessero) qualche sport, i ragazzi crescerebbero più sani.
(なにかスポーツをすれば、子供たちは健やかに育つでしょうに)
Avendo avuto (= Se avesse avuto) più cura dei denti, ora Lei avrebbe una bocca sana.
(もっと歯を大切にしていれば、今頃はあなたの歯は健康なのに)
Ricevuta (= Se avessi avuto) la tua lettera, sarei andato a prenderti all'aeroporto.
(君の便りを受け取っていたら、空港まで迎えに行ったのに)

(4)seはありませんが、動詞が接続法半過去なので、文意を考えても仮定文です。

Io fossi giovane come voi!
(私が君たちのように若ければなあ!)
Se io avessi lavorato più sodo!
(私がもっとしっかり働いていたらなあ!)
Fosse realizzato il mio sogno!
(私の夢が実現したらなあ!)

(5)動詞siaが接続法ですが、現在時制なので仮定文ではありません。このようにcheで始まり、動詞が接続法現在の時、主観を表す動詞desiderare, sperareなどを補って意味をとります。

Che tu sia felice!
(君が幸せになるように!)

イラスト:セバスティアーノ・デル・ピオンボ(Sebasdtiano del Piombo 1485 - 1547):「ヴィットリア・コロンナの肖像」(Ritratto di Vittoria Colonna, 1520)ヴィットリア・コロンナ(1490 - 1547)は、中世ローマの有力貴族の一族で、16世紀イタリアの詩人、ペスカーラ侯爵夫人である。晩年ミケランジェロと芸術的な親交を深める。豊かな教養と知性を持ち、おだやかな人柄で大変人気のあった彼女には、夫の早死後たくさんの求婚話があったが、その生涯を詩作に捧げた。この肖像画を描いたのは、ヴェネツィア派のセバスティアーノ・デル・ピオンボであり、始め音楽家であったが、画家へと転身した異色の人物。ローマで活躍、ヴェネツィア派の配色を持ち、ローマ派の堂々とした構図で有名である。ミケランジェロは、ヴィットリアと長く友情を育んだが、ピオンボとも友人であった。彼に絵の上達のため、幾つか図案を提供したと言われている。後の二人はミケランジェロ作の最後の審判を巡り、油絵とフレスコ画についての激しい口論を交わし、最後まで冷えた関係となってしまった。「誠実な心には、この世の春とは別のとこしえの春がある」ヴィットリアの一節が二人の心を慰めてくれますように。(樋口佳代)

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