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インターネット公開文化講座

文化講座

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且坐喫茶:日本文化のグローカル性

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

アラカウアー(イナバウアー)

第20回冬季五輪トリノ大会フィギュアスケート女子シングルスで荒川静香選手がゴールドメダルに輝いた。
私は、彼女は日本的プロフェッショナルと精神を感じさせる選手だと思う。

大リーガーのイチロー選手、プロゴルファーの宮里藍選手と共通するグローカル文化としての日本人的なプレイヤーを感じさせる。
歴史上の人物としては、私は、剣豪・宮本武蔵、日本画家・長谷川等伯に日本的プロフェッショナルのイメージを持っている。

荒川選手の日本的精神は、まず、アラカウアー(イナバウアー)に真髄、真骨頂があると思う。
アラカウアーは競技としてはポイントに結びつかない。
にもかかわらず、彼女はそこに最大の魅せる演技と競技者としての喜びを感じ、表現していたのだ。
「秘すれば花」の極意なのだ。

彼女の発言を聞いているとアラカウアーは他の点数評価となる技とは異なって、プレーしながらカウントする必要はなく、自由に自己表現が出来ると言う。
審判や観客に印象付ける見せる演技としているのだ。

自己の競技者としての状況に対応する演技力となる自由な表現、余裕と喜びを味わえる精神状況にあることになる。
そこに、最高の場で、最高の競技者足り得ている心があるのだ。
まさに、世阿弥の秘伝たる「秘すれば花」に求められる「離見の見」の心だと私は思う。

彼女が、競技中に付けていたピアスは親から贈られた「ラザールダイヤモンド」の三つのダイヤが連なるスリーストーンダイヤモンドと呼ばれるものだったそうだ。
金メダルに輝いた2月24日からその商品に注文が集まって品不足になっていると日本経済新聞に載っていた。
私は、ピエモンテ州などから贈られたリボンの意味だと言う「ディアデマ」と名付けられたティアラ(髪飾り)に注目だ。

欧州デザイン学院トリノ校の女子学生がデザインしたホワイトゴールドのティアラで、フィギュア女子金メダリストに贈呈するために若い人の能力を掘り出せるコンテストで選んだと言うのが楽しい。

多くの日本人が忘れてしまっているように思う「離見の見」による心の余裕を秘めたアラカウアーに「秘すれば花」を演ずる荒川静香選手が金メダルに輝いたことが嬉しい。
ペニンシュラの紅茶にディボウヴェガレのチョコレートを味わいながら余情残心だ。

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