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且坐喫茶:日本文化のグローカル性

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

日本語と英語・・3

医療の領域でも「cost-benefit」「コスト--ベネフィット」が問題だと話題となる。
日本語で「対費用利益性」と訳すべきなのに何故か「対費用便益性」と言う。
「benefit」は、通常「利益」と訳される。
旺文社の国語辞典で「利益」を見ると次のようだ。

  1. もうけ、利益、収益、利潤。
  2. 役に立つこと、ためになること。

次に、研究社の新英和中辞典で「benefit」を調べると以下の如く書かれている。
まず、「利益」、「ためになる」とあって、注釈がついている。

benefit:個人または集団の幸福(福祉)につながる利益
profit:物質的または金銭上の利益
advantage:他より有利な立場、地位にあることによって生ずる利益

日本語で「利益」と表現される場合、英語では「benefit」、「profit」、「advantage」と別々の言葉の意見を含んでいることになる。

逆に、英語で「利益」を表現する時、「benefit」、「profit」、「advantage」とそれぞれの意味を区別して訳す必要があるのだ。
「cost−benefit」は用いた「コスト」に対して得られる「利益」を考えることになる。
しかし、「benefit」が、わざわざ「便益性」と訳されるのは「利益性」と言うには何か抵抗感、違和感があることを思わせる。

今日、我が国で「利益」といった場合、「profit」の意味として用いられているのが普通だからではないか。
しかし、「benefit」が日本語で「便益性」と訳された時に、本来意味するはずの「個人または集団の幸福(福祉)につながる利益」が明確に意識されているか、はなはだあやしい。
逆に、「advantage」の意味になっている危険性も現実だ。
「利益」が、通常、国語辞典の 2) ではなく 1) の意味となると、英語で言う「profit」、「advantage」に近いことになるのだ。

このことから、「利益」は、例え言う側が「benefit」を意味して発言しても、相手が「profit」、「advantage」と受けとっている「すれ違い」となってしまう。
そこに、日本語の「曖昧さ」、「繕い」、「誤解」、「偽善」を生む原因がある。

お互いの助け合いの精神に基づく「共済」は「mutual aid」とか「benefit」と訳される。
つまり、「ライフ共済」は、「Life」をかけて見知らぬ人達との助け合いによる「benefit」「日常茶飯」に考える素晴らしい命名と組織だと肝に銘じている必要があるのだと判る。

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