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且坐喫茶:日本文化のグローカル性

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

日本語と英語・・6

日本語として「サービス」という言葉が用いられる場合と英語で「service」と言う場合は、その意味が異なっていることが多い。
日本語で「サービス」という言葉が用いられるのは、"客や人あしらい"的な意味の場合が普通だ。
"あの店は"、"あのホテルは""あのレストランは"などの"サービス"が良いとかいった個人的な心地よさの表現だ。

一方、英語で「service、services」として用いられる場合、"専門的な職務につく"、"人や社会のために尽くすとか奉仕する"、"有用に役立つ"とかいった意味での公共性をもった役立ちを意味することが多い。
日本語の客あしらい的な意味で用いられることはあまり多くない。
私が20年位前に、カルホルニアにある有名なスタンフォード大学病院を訪れた時、日本では「外科外来」とされるところに「Surgical Service」と掲示されているのを見て、大変驚いた経験を今も鮮明に思い出す。

我が国の医療機関は、△△クリニック、××記念病院とか、英語的表現を速やかに導入している。
しかし、アメリカの△△Clinicとか、××Memorial Hospitalとかと名のる医療機関は、大規模な総合あるいは専門病院を意味するのが普通だ。
我が国ではそうした意味とは異にする。
ここで問題としたいのは、英語等の外国語を速やかに導入することの好きな我が国にあって、今だ、医療機関に例えば、「外科サービス、Surgical Service」と名付けた掲示を見たことがないことだ。
何故かと考えて見るに、専門的な職務についている人達が公共の役に立とうとの「service」精神に乏しいからだと思える。

まだまだ医療機関や医療人に「service」精神が乏しいか、「サービス」が"患者あしらい"的な意味に受け取られては困るとの気持ちからか。
しかし、そろそろ医療機関のみならず、公共性を持った高級専門職務者がいる職場で、日本語の「サービス」に表面的な客あしらいではない英語的な意味を込めての掲示や姿勢が求められていると思うのだが。

「市中の山居」で喫茶しながら、「離見の見」から職務とサービスについて考えて見よう。

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