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やきもののやさしい鑑定

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

唐津のやきものの魅力

今回はお茶の世界でも有名で、人気の高い「唐津」のやきものについて書いてみます。
お茶の世界では多くのやきものの中で「一楽、二萩、三唐津」などといわれ、唐津の評判は極めて高いものがあります。現在の陶磁器における学会の成果としては、唐津やきは1580年代に成立した朝鮮系のやきものと考えられています。1580年代といいますと日本史では激動の戦国時代の真最中です。信長が有名な長篠の戦いを経て、本能寺で死に、政権は秀吉に代わりつつある時代でした。その頃、茶道も利休によって大成され、武人や豪商達の間で大きな地位を築きつつありました。その時、茶人達の間で人気があったのが「侘び・寂び」の道具としての朝鮮陶磁器でした。そのえもいわれぬ枯れた感じは、明日をも知れぬ命の武将たちに、共感をもって迎えられたのです。そのような時期に唐津のやきものは成立したのです。
「一楽、二萩、三唐津」の楽は、当時、利休が最も愛した「長次郎」作の黒茶碗を製作した楽家のものであり、筆頭に位置しています。二番目の萩は、現在の山口県、かつての長州でできた焼き物で、やはり朝鮮の陶工によって成立したやきものです。このように二番目と三番目が朝鮮系のやきものということは、いかに当時の茶人達の間で朝鮮のやきものに人気が高かったかということを証明しています。
朝鮮の技術、魅力は萩や唐津にとどまらず、愛媛の砥部、薩摩、苗代川、上野、高取、後の伊万里に大きな足跡を残しています。それだけ朝鮮のやきものの技術が日本人に好まれたということでしょう。 唐津のやきものの魅力を以下に箇条書きにしてみます。

  • 朝鮮のやきものの魅力をそのまま伝えている。
  • 朝鮮の魅力を伝えつつ、そこに日本人の感覚、感性が芽生えはじめつつある。
  • くどくどしくない図柄。中国陶磁器とは違ったさっぱりした作風。
  • 自然の流れを愛した日本人の「四季」の感覚、無常観にピッタリの雰囲気となり、使っていると茶渋が貫入という細かいヒビからにじみ込み、天井の染みのような雨漏りと称する変化が出て、それが深い味わいである「侘び・寂び」として評価された。

などなどの魅力が考えられます。昔から朝鮮と日本は近しい関係でしたから、感性も似ていたということかもしれません。
そこで次に「唐津」の鑑定のポイントについて述べてみます。 唐津は全体的な味わいにすぐれたものがありますが、鑑定のポイントは高台にあります。そこで高台の3点の鑑定ポイントについて述べてみます。


  • 三日月高台(写真1)
    まず高台を上にして見ると、やや中心がずれて削られていて、一方の幅がふくらみ、あたかも三日月のように見えます。これを三日月高台といい、唐津や朝鮮陶磁器の鑑定の大きな特長になっています。
  • 竹節高台(写真2)
    横から高台を見ると、あたかも竹の節目を見るがごとく、真ん中が飛び出ています。これを「竹節高台」と呼んでいます。唐津や朝鮮陶磁器の鑑定のポイントです。
  • ちりめん皺と兜巾(ときん)(写真1共通)
    ちりめん(縮緬)皺は、唐津の土の独自性である、土の粘り気からきています。
    高台を削るときに、道具と土の間に生じる土のはじけ具合、めくれ具合による皺なのです。それに兜巾、これは高台の中央が飛び上がっていることをいいます。
    削ったときに中央が残ったものです。


(写真1)

(写真2)

これら3点のポイントをしっかり観ていただければ、唐津のやきものである可能性はきわめて高くなります。

唐津のやきもので人気の高いのが、斑唐津(まだらからつ)で、岸岳という最も古いとされる唐津の窯で焼かれた作品です。斑釉は藁灰の釉薬からできて、白く青白い斑紋が出ることから古来から大変珍重されています。特に「ぐい呑み」に人気があります。(写真3)ぜひ骨董市で「唐津」を探してみてください。


(写真3)
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