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家族で楽しむ里山術

里山研究家 吉澤 守(ヨシザワマモル)

歩くという基本

スポーツを通して健康な国づくりを目指してきたドイツでは、あらゆるスポーツ・ジャンルの中で「ウォーキング」、つまり歩くことが最も多くの愛好者を集めています。歩くという運動は、特別な用具も専用のフィールドも、チームを組む必要もなく、時間さえあれば、いつでも誰でも気軽に取り組むことができます。 しかも、走るより体への負担が少なく、足の裏から伝わる感覚が全身を刺激して、体を調整するマッサージのような効果もあるとされています。

ウォーキングが健康維持に役立っているもう一つの理由に、"五感の刺激"があるとされています。歩くというスローな行為により、歩きながら目にするさまざまな光景の変化を感じることができます。
脳の中でその光景について思いをめぐらせることによって、日常生活の中で蓄積したストレスが洗い流されます。これを"脳感の刺激"と呼んでいます。
ストレスの多い現代人にとって、ウォーキングによる体のマッサージ効果と脳感の刺激は、まさに特効薬ではないでしょうか。

ドイツをはじめ、ヨーロッパの各地では、ウォーキングが盛んに行われていて、ちょっとした暇をみつけてはいろんな所を歩く人たちが多いのですが、ただ単に歩くのではなく、できるだけ美しい光景や自然の移り変わりを目に入れやすい場所を求めながら歩こうとします。
森の中、河のほとり、湖の周辺、山あい、谷あい、小動物に出会える場所が、絶好のウォーキング・ポイントになります。都会に住む人たちは、そうした自然性の高い場所でウォーキングをするために、車などを利用して郊外に出掛けます。休日には、さらに遠くのカントリーエリアに出掛けて、家族でピクニッキングを楽しみます。

そうした、家族で歩きながら自然を楽しむということが基本となって、クライン・ガルデン(市民農園のようなもの)という方向に発展していきます。家族で共感して見つけた郊外の田園で週末を過ごしながら、農作物を収穫するクライン・ガルデン。
日本でも、この10年程の間にドイツのクライン・ガルデンを実践する施設があちらこちらに出現してきています。クライン・ガルデンという言葉が持つ雰囲気を日本語に置き換える時、『里山』という言葉がピッタリだと私は感じています。

里山の楽しみは、家族が一緒に里山を歩いて、共感して見つけた場所から始まるのです。

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