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家族で楽しむ里山術

里山研究家 吉澤 守(ヨシザワマモル)

バカンス

欧米の人たちは、バカンスのような連続した休暇を利用した休養をとても大切にしています。日頃、大人たちは仕事や家事に、子どもたちは勉強や習い事に追われています。忙しさに追われる日常から開放されて、休養のための休日を過ごすことができるバカンスなどは、とても貴重な時間ととらえられているからです。

バカンス・シーズンに、長い人だと滞在先で60日以上過ごす人もいますが、その期間は、仕事のことや世間的なことから離れて、できるだけ休養に徹します。 そうする事によって、家族が家族であることを確認しあうと同時に、普段とは違う生活環境の中で人間性を取り戻します。再び職場や学校に復帰した時に、以前に増して活力を発揮することができるように、心身をリフレッシュすることを目的としています。
余暇を利用して心身の疲れをいやすことをリクリエーションといいますが、クリエート(つくり出すこと。創造すること。創作すること)は、人間だけに備わった能力を表わしています。その人間性を取り戻すための休養日利用をリクリエーションと呼んでいるのは、それが単なる遊戯や娯楽というニュアンスとは少し違ったものであるという深い意味が込められています。

欧米の各地には、国民が休養日を過ごすための休養地(バカンス村やリクリエーショナルエリア)が充実していますが、そのほとんどが自然の豊かな場所に存在しています。
都会と自然、日常生活の場と休養の場は、日常生活(クリエート)と休養(リクリエート)の過ごし方の違いの中で人間性のバランスを保つことの大切さを教えてくれています。
「仕事と休暇とどっちが大切?」と聞かれた時、欧米の人たちが迷うことなく「どちらも」と答える根底には、そんな意識があるのです。

勤勉な国民性で「働き蜂」とも形容される日本人は、日本を経済大国といわれるまでに成長させてきました。不況といわれる現在でも、経済大国であることは変わりません。しかしながら、この国の人たちは、どこか余裕がなく、経済大国に暮らしている自信というものが感じられません。これは、勤勉に働くという気質は世界に誇るものがあると誰もが確信している一方で、休暇の過ごし方はまだまだ身についていないことが原因とも考えられます。
日本人は、バカンスのような連続した休暇を楽しみながら次のチャンスに備えるという、バッテリー・チャージのような時間の使い方や、それに対する考え方がとても苦手です。私は、こんな時代だからこそ、バカンスのような自然の中で家族と過ごすゆったりとした時間を持つことを提案したいのです。

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