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家族で楽しむ里山術

里山研究家 吉澤 守(ヨシザワマモル)

再び家族、再び自然

日本が高度成長をはじめた昭和40年代から不況といわれるようになった現在まで、約40年という長い間、ずーっと続いてきてしまった傾向があります。それは、大人から子供までが何がしかの忙しさに追われ、家族がじっくりと顔を合わせて過ごす時間があまりにも少なくなってしまっていること、生活の周りから自然を味わうということが少なくなってきていることの二つの点です。都会に生活する人たちのみならず、里に住む人たちにとっても同じようなことがいえます。
皆が、都会的な洗練された生活をめざし、大人たちは仕事と社会的な付き合いを重要視し、子供たちも同じように学校と習い事がスケジュール化されています。
子供たちが陽の暮れるまで近所の友達と外で遊んでいる光景は、記憶の中の出来事となりつつあります。

先進国といわれる国は、どこもそんな傾向があるものですが、欧米の社会にはバカンスという長期休暇の習慣があって、普段は仕事のために家を留守がちにする親も、バカンスシーズンには家族一緒に過ごすことがごく当り前になっているために、その時には集中して家族の絆を深めることができます。
特に、成長期の子供さんを抱える家庭では、なるべく自然性の高い場所をバカンス地として選んで、家族一緒に自然の中で過ごそうとします。
自然の中で過ごすといっても、毎日バーベキューをして花火をあげて開放気分だけを味わっているのではありません。かつての狩猟民族の伝統を持つ欧米の親たちは、長期休暇がとれるバカンスを利用して、子供たちに自然の中で生活するための極意を直接伝授していきます。伝授することは、自然の見方、自然の中での過ごし方、シンプルな生活の中で物事を工夫して生きる知恵、公共の自然の場で公徳心を養うこと、民族が歩んできた歴史、家のルーツなどです。親子がじっくり膝を突き合わせて過ごせる時間に、親は親として、子は子としてするべきことを自然の中で行います。
学校や社会といったみんなが平等に受けられる機会ではない時間に、親が子へ責任を持って伝授することに意義があります。そういう経験を持つことのできた子供たちは、やがて社会人になった時に、自信を持って世界中に生きる場所を求めることができ、自立した人生をおくる基礎を身につけることができます。
自然の場所は、都会のように、お金さえ出せば何でも便利な物が手に入る所ではありませんから、子供たちの情緒を養うためには適しているのです。

2002(平成14)年度からスタートする完全学校週5日制は、バカンスという長期休暇とは異なりますが、再び、家族が自然の中で、家族の意義を取り戻すチャンスです。

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